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第四話 祝勝会の演説
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王城に帰ってくると、祝勝会の準備がほとんど終わっていた。
正装を貸してくれるというので、オレたちも着替えることにした。
テキトーな黒のスーツを選び、待つこと30分。
……長い、と思っていたら、やっと三人が更衣室から出て来た。
三人とも顔は良いので、恐ろしいほど綺麗になっている。
サラは髪に合わせて、紅のドレス。ヒラヒラしていて、艶めかしさを醸し出している。
ウイはゴスロリ。赤と黒の毒々しさが、とても似合っている。
ただ一人だけおかしなのがいる。
ベルが、ウエディングドレスを着ていることだ。
金髪だから、よく似合ってはいるけど、場をわきまえろ。
「ベル、お前はどういう格好をしてるんだ?」
「あ、あたしだって非常識なのは分かってる。ああぁっ!」
グシャッ、とベルが盛大に転んだ。
「あらあら、大丈夫ですか?」
おお!サラが聖女っぽいこと言ってる。
「床が」
──と思ったら、違った。
「そ、そうだな。ヒビなど入っていないか?」
ベル、お前も心配するな。
もし割れてたら、それはそれでお前が心配だよ。
「サラ、どうしてこうなったんだ?」
「それがこの子、どうしても体を見せたくなかったようで──五百くらいに割れた腹筋を」
それはもう人間やめてるだろ。
そんな生物いんの?五百て。
「でも可愛いでしょう」
「まあな」
腹筋隠すにしても別の衣装あっただろ!とかいうツッコミはしない。
「それに、ウイちゃんは何着ても似合いますしね。何着てもダメなのは、貴方くらいですよ」
なんで今、オレ攻撃されたの?
ウイが似合うっていう情報しか要らなかったよね?
ちなみに、ウイはベルが上手く歩けるよう助けてあげていた。
もう、こっちが聖女で良くない?
「……というわけで、私たちの方は調いましたよ」
「ああ。お前も似合ってるしな」
「ひあう!」
褒めただけなのに、こっちを絶体に見ないよう俯いてしまった。
しかも上目遣いでプルプル震えながら睨んでくるし。
……?
* * *
姫様が着替えたオレたちを見て、満足げに言ってきた。
「勇者さんと仲間の方々には、集まった人たちに向けて演説してもらいます」
うん。
……え?
勇者さんと「仲間の方々」?
コイツらにもさせんの?
いや、オレも自信はないけど。
「ふふ。喜んで」
と猫を被る聖女。
「うむ!任せろ」
と息巻くバカ。
「……了承した」
と言う陰キャロリ。
……不安しかない。
しかもオレはコイツら三人の後に、喋るらしい。
ちなみにオレの演説原稿は、姫様が持ってきた。
魔王が倒れても引き続き団結を呼びかけてほしい、とのことだ。
* * *
サラが出て来て会場はザワついている。
大丈夫。
サラは根本的には賢いヤツなんだ。
言っていいことと悪いことの区別は──
〈静まりなさい、来賓ども。ここにいる勇者が魔王を倒しただけでしょう〉
何言ってんの!?
登場人物にゴミ多すぎじゃね!?
〈毎回、勇者の後始末をしてきた私の身にもなってほしいものです〉
オレの身にもなって。
暴言やめて!
〈ちなみに皆さんがここ数百年苦しんでた魔王ですが、討伐に5秒くらいかかりました〉
それ、オレにヘイト集まるヤツ!
確かに、旧オレはそんなチートだったけど!
〈倒せて良かったので、これからは税金で楽に暮らすようです〉
やめい!
そうしようかと思ってたけど!
〈私からは以上です〉
フォローしろ!
ブーイングすげえじゃん!!
演説が終わったのでオレは、その場から離れてサラに詰め寄っていた。
「お前なんで、あんなこと言ったの!?招待客の気持ちも考えようよ!」
「……私にとっては見知らぬ客の気分を良くするより、貴方の気分を悪くする方が優先だったので」
「いや、それは優先順位おかしいだろ!」
「ゴミは言い過ぎでしたか」
「お、おう。分かってるじゃないか」
「性犯罪者をゴミとは、褒めすぎですか」
「そういうことじゃないし、一昨日のことは誤解だ」
* * *
ブーイングが収まった所でベルだ。
コイツには期待してないけど。
ウェディングドレスな時点で、観客も訝しんでるし。
〈よし。皆まとめて掛かってこい〉
何言い始めた?ねえ?
司会か何かの人が近づいてコソコソ言っている。
〈ん?そういうことではないのか〉
どういうことだと思ってたんだよ!
〈だが一度言ってしまった事を取り消すのは、騎士道に反する!掛かってこい──〉
いや、取り消せよ!
ライトが消えてベルが追い出された。
当然だ。
「……お前に言うことは何も無い」
「ふふん。だろう?完璧だったからな」
「……もうそれでいいよ」
* * *
ベルに呆気にとられていた招待客の前へ、ウイがやってくる。
お前だけは、頼むぞ。
〈ウイ、いっぱい斬った〉
それでいいのか、と思っていると──
〈てへへ☆〉
とはにかんだ。
どうやらこの攻撃は、オレの昔のスキルより遥かに恐ろしい。
招待客全員が範囲攻撃されたように、状態異常になりかけていた。
オレも含めて。
〈でもね、ウイ元々奴隷だった〉
よし奴隷商人を皆殺しにしよう、という声が客からあがる。
マジで出来る権力者もいるので、洒落にならない。
〈もっと良い世界に、して欲しい〉
「「「「イエス、ユアハイネス!!!」」」」
観客たちが一斉に立ち上がって敬礼した。
やべえよ、やべえよ。
幼女の笑みってギアスかなんかなの?
〈ウイ、大きいケーキが食べたい〉
「「「「イエス、ユアハイネス!」」」」
おい、なんかずれてきてんぞ。
〈ウイ、お城に住みたいなぁ〉
「イエス、ユアハイネス!」って王様が立ち上がり、鍵を渡そうとして姫様に止められていた。
おい、王様…………。
* * *
おかげさまで最後の勇者の演説は、殆ど誰も聞いてなかった。
後で観客の一人に
「オレの演説どうでしたか?」って聞いたら「幼女可愛い」って答えられた。
……死んでしまえ。
正装を貸してくれるというので、オレたちも着替えることにした。
テキトーな黒のスーツを選び、待つこと30分。
……長い、と思っていたら、やっと三人が更衣室から出て来た。
三人とも顔は良いので、恐ろしいほど綺麗になっている。
サラは髪に合わせて、紅のドレス。ヒラヒラしていて、艶めかしさを醸し出している。
ウイはゴスロリ。赤と黒の毒々しさが、とても似合っている。
ただ一人だけおかしなのがいる。
ベルが、ウエディングドレスを着ていることだ。
金髪だから、よく似合ってはいるけど、場をわきまえろ。
「ベル、お前はどういう格好をしてるんだ?」
「あ、あたしだって非常識なのは分かってる。ああぁっ!」
グシャッ、とベルが盛大に転んだ。
「あらあら、大丈夫ですか?」
おお!サラが聖女っぽいこと言ってる。
「床が」
──と思ったら、違った。
「そ、そうだな。ヒビなど入っていないか?」
ベル、お前も心配するな。
もし割れてたら、それはそれでお前が心配だよ。
「サラ、どうしてこうなったんだ?」
「それがこの子、どうしても体を見せたくなかったようで──五百くらいに割れた腹筋を」
それはもう人間やめてるだろ。
そんな生物いんの?五百て。
「でも可愛いでしょう」
「まあな」
腹筋隠すにしても別の衣装あっただろ!とかいうツッコミはしない。
「それに、ウイちゃんは何着ても似合いますしね。何着てもダメなのは、貴方くらいですよ」
なんで今、オレ攻撃されたの?
ウイが似合うっていう情報しか要らなかったよね?
ちなみに、ウイはベルが上手く歩けるよう助けてあげていた。
もう、こっちが聖女で良くない?
「……というわけで、私たちの方は調いましたよ」
「ああ。お前も似合ってるしな」
「ひあう!」
褒めただけなのに、こっちを絶体に見ないよう俯いてしまった。
しかも上目遣いでプルプル震えながら睨んでくるし。
……?
* * *
姫様が着替えたオレたちを見て、満足げに言ってきた。
「勇者さんと仲間の方々には、集まった人たちに向けて演説してもらいます」
うん。
……え?
勇者さんと「仲間の方々」?
コイツらにもさせんの?
いや、オレも自信はないけど。
「ふふ。喜んで」
と猫を被る聖女。
「うむ!任せろ」
と息巻くバカ。
「……了承した」
と言う陰キャロリ。
……不安しかない。
しかもオレはコイツら三人の後に、喋るらしい。
ちなみにオレの演説原稿は、姫様が持ってきた。
魔王が倒れても引き続き団結を呼びかけてほしい、とのことだ。
* * *
サラが出て来て会場はザワついている。
大丈夫。
サラは根本的には賢いヤツなんだ。
言っていいことと悪いことの区別は──
〈静まりなさい、来賓ども。ここにいる勇者が魔王を倒しただけでしょう〉
何言ってんの!?
登場人物にゴミ多すぎじゃね!?
〈毎回、勇者の後始末をしてきた私の身にもなってほしいものです〉
オレの身にもなって。
暴言やめて!
〈ちなみに皆さんがここ数百年苦しんでた魔王ですが、討伐に5秒くらいかかりました〉
それ、オレにヘイト集まるヤツ!
確かに、旧オレはそんなチートだったけど!
〈倒せて良かったので、これからは税金で楽に暮らすようです〉
やめい!
そうしようかと思ってたけど!
〈私からは以上です〉
フォローしろ!
ブーイングすげえじゃん!!
演説が終わったのでオレは、その場から離れてサラに詰め寄っていた。
「お前なんで、あんなこと言ったの!?招待客の気持ちも考えようよ!」
「……私にとっては見知らぬ客の気分を良くするより、貴方の気分を悪くする方が優先だったので」
「いや、それは優先順位おかしいだろ!」
「ゴミは言い過ぎでしたか」
「お、おう。分かってるじゃないか」
「性犯罪者をゴミとは、褒めすぎですか」
「そういうことじゃないし、一昨日のことは誤解だ」
* * *
ブーイングが収まった所でベルだ。
コイツには期待してないけど。
ウェディングドレスな時点で、観客も訝しんでるし。
〈よし。皆まとめて掛かってこい〉
何言い始めた?ねえ?
司会か何かの人が近づいてコソコソ言っている。
〈ん?そういうことではないのか〉
どういうことだと思ってたんだよ!
〈だが一度言ってしまった事を取り消すのは、騎士道に反する!掛かってこい──〉
いや、取り消せよ!
ライトが消えてベルが追い出された。
当然だ。
「……お前に言うことは何も無い」
「ふふん。だろう?完璧だったからな」
「……もうそれでいいよ」
* * *
ベルに呆気にとられていた招待客の前へ、ウイがやってくる。
お前だけは、頼むぞ。
〈ウイ、いっぱい斬った〉
それでいいのか、と思っていると──
〈てへへ☆〉
とはにかんだ。
どうやらこの攻撃は、オレの昔のスキルより遥かに恐ろしい。
招待客全員が範囲攻撃されたように、状態異常になりかけていた。
オレも含めて。
〈でもね、ウイ元々奴隷だった〉
よし奴隷商人を皆殺しにしよう、という声が客からあがる。
マジで出来る権力者もいるので、洒落にならない。
〈もっと良い世界に、して欲しい〉
「「「「イエス、ユアハイネス!!!」」」」
観客たちが一斉に立ち上がって敬礼した。
やべえよ、やべえよ。
幼女の笑みってギアスかなんかなの?
〈ウイ、大きいケーキが食べたい〉
「「「「イエス、ユアハイネス!」」」」
おい、なんかずれてきてんぞ。
〈ウイ、お城に住みたいなぁ〉
「イエス、ユアハイネス!」って王様が立ち上がり、鍵を渡そうとして姫様に止められていた。
おい、王様…………。
* * *
おかげさまで最後の勇者の演説は、殆ど誰も聞いてなかった。
後で観客の一人に
「オレの演説どうでしたか?」って聞いたら「幼女可愛い」って答えられた。
……死んでしまえ。
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