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第一話 残念な仲間たち

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 チュンチュン

 魔王を倒した翌朝である。
 オレたちは、魔王城の近くの町に宿泊していた。
 
 定刻に起きるスキル『起床点决ザ・アラーム』を失っていたことを忘れていたため、寝坊してしまった。

 あれ、スキルなかったらオレ結構ヤバいんじゃないか?
 戦闘力→一般兵なみ
 生活力→一般人以下

 スキルを失ったことは、じっくり対策を練らなくては。
 皆には、言わない方が良いだろう。
 不安を与えてしまうかもしれないし……



 しかし、スキルを失っているとなると、戦うことはできないな。

 まあ、魔王がいなければわざわざ戦いになんて──

「おはよう、シュン。体が鈍るから、モンスター狩りに行こう!」

「うるせえ!この脳筋がぁ!」

「えええぇぇぇ!?なんで!?」

 なんか、仲間の金髪女騎士──ベルが涙目になってる。

「そ、そういう気分じゃないんだよ」

「えー?」

 納得いかなそうなベルに、オレは咄嗟に話を作る。

「魔王……ヤツとの戦いは熾烈を極めたが、終わってみれば……フッ。戦いなんて虚しいだけさ」

「そ、そうか……」

 コイツ、こういう熱い話が好きだからな。

「もうこれ以上、むやみに命を奪うこともないだろう?」

「確かに!そうだな!」

 イエイ!脳筋は楽勝だ!

「じゃあ、あたしは町のトレーニングルームにでも行ってくる!」

 『筋力増強マッスルアップ』も『体力増強パワーアップ』も無い状況で、コイツのトレーニングには付き合えない。

「おう!脳ミソまで鍛えて来いよ!」

「おう!」

 そういうと、ベルは嬉しそうに出て行った。
 ホントに頭を鍛えて来いよ……



 
 それで……スキル消失だが。
 王都には報告しておいた方が……?
 あの王様も食わせ者だから、用済みとなったら、ポイかもなぁ……

 やっぱり、誰にもバレないようにしないと。
 最悪、命の危機まである。



 そんなところまで考えたところで──

「おはようです、シュン君」

 仲間の赤髪聖女──サラが部屋に入ってくる。

 なんで君たち、オレの部屋に普通に入ってくるの?
 オレは独りで、スキル消失について考えたいんだけど。

「良かったら、一緒に魔道具店に行きませんか?」

 お、それなら今のオレでも行けそうだな!

「よし、行くか!」

「はい。では、いつものように『空間移転テレポート』を御一緒しても──」

「それは断る!」

「え?何でですか?」

「よく考えてみろ……テレポートの最中に、11次元に放り出されちまうかもしれねぇ!」
 
「ええ?これまで一万回くらい、使ってきたじゃないですか!なに、急に拗らせたこと言い始めたんですか?」

 くうっ!
 ベルなら「確かにそうだな!」ってなってるのに!

「ち、違う……そう!歩きたいんだ!」

「それは……私と、ということですか?下半身で生きてるんですか?」

 流れるように毒を吐くな。
 でも、乗るしかねえか。

「ああ!そうだ!お前と、二人できたいんだ!」

「ひゃっ!あ、あの……心の準備が……」

「さあ、行こうか!薄暗いけど雰囲気がある、あの場所(魔道具店)へ」

「ま、まだ!そういうのは、早いです!」

 ……よく分からんがサラも帰っていった。




 よし。
 今度こそ、じっくりと対策を練らねば──


「シュン!やっぱり町はつまらん!久々に試合でもしよう!」

 バタン

 ……何も見なかった。
 特に、汗だくで町のトレーニングを終えてきた、脳筋騎士ベルとか見なかった。

 ドンドン!

 ドンドン!

 ベキョッ!

 …………ベキョッ?

 ドアが外れて、しょんぼりしたベルが立っていた。
 
 ……お前さあ。
 
 ……お前さあ!

 マジモードで説教してやると、とぼとぼと帰っていった……

 ドア外れたままだけどね。
 どうせ、後で宿に謝るのオレなんだよね。




 ふう……これでもう、誰もいないな。
 説教して疲れたし、アイスでも食ってから、色々考えよう。

 そう、冷凍庫を開けると
──人間が出て来た。

「ぬわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!なに!?ねえ!」

「……むぅ。マスター、気付くの、遅かった」

「気付けるか!」

 冷凍庫から出て来たのは、仲間の暗殺者。
 元奴隷の鼬耳少女ロリ──ウイだ。
 イタチ!レアすぎ!

「なんで、冷凍庫に入ってんだよ!」

「……冷蔵庫の、気分じゃ無かった」

「そういう問題じゃねえ!冷やすな!」

「驚いて……くれた?」

「心臓止まるほどビックリしたわ!」

「そう……それなら、良かった」

「何が!?ねえ!」

「てへへ☆」

 チクショウ、可愛い!
 コイツ最近、これで何でも許されると思ってる!

「しょ、しょうがないなあ。今回だけだぞ」

「ん。次から冷蔵庫にする」

「いや、お前は全然分かってない!」

 そんなオレの言葉を無視して、ウイは帰っていった。

 ……明日、冷蔵庫に入ってるんだろうか?
 ……外からロープ巻いてやる。




 宿屋の主人に、ドアの事を誤りに行くと笑って許して貰えた。
「勇者様にはお世話になっておりますから」との事だ。

 壊したのは騎士だし、その勇者は力を失ってるけどね。



 そしてその時、姫様からの手紙を渡された。

「勇者様へ。明後日の夜、魔王討伐の祝賀会を開催致します。『空間移転テレポート』で帰ってこられますよう──』

 これは詰んだ。
 テレポート使えとか当たり前に書くな。
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