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真相の裏側

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「執事長は彼に様子を見るように言われただけで、何も起きてない事を確認したかったんじゃないかな?」

 ただ、裏側にあったラグランジュの縫取りは気になるけど……。
 皇太后様にも会って話を聞かないといけないけど、執事長の話と行動に違和感があったからだ。

「どの王子でも良いから、と執事長は言ったのに、君は第一王子にしたのは何故?」

「第一王子の部屋が一番近いと、言われました」

「皇太后様は微笑んでいただけで、何も言ってないんだよね?」

「はい、お嬢様は王子様のどなたでも良いので、親しくなるように言われていました」

 今日の令嬢か。

「グラン、テオドア兄様の具合が悪くなったのはいつからなの?」

「シアンに叙爵してすぐだった」

「五か月くらい前ってことだね」

「枕カバーを換えたのは二か月ほど前です!」

 う~ん? 具合が悪くなったのは太陽アレルギーが出たからだけど。
 一緒に考えてしまっていたから、首を絞められるようになった事も同じだと考えていた。
 もしかして僕が魔法で解呪したのは、守護術も呪術としての認識で解呪してしまったとしたら枕カバーが裂けたって不思議じゃない。
 それなら首を今でも絞める何か、もしくは誰かがいるはずだ。

「先代の皇帝陛下ってどうして亡くなったの?」

「私が聞かされているのは、父上が母上と結婚してすぐの事で眠ったまま息を引き取ったと聞いている」

「心筋梗塞とか?」

 まって待って、本当にこれって、怖い話なんじゃないの?

「グラン、みんなも聞いてくれる?
 僕が立てた推理になっちゃうんだけど、皇太后様は先代陛下の死因が分かっていて、それが呪術的な何かかは分からないけど、首を締めてるのは先代陛下が幽霊になって出てるんじゃないかって思うんだ。
 執事長は皇太后様以上に恨む気持ちが強い気がするんだ。
 だからそれを利用したんじゃないかなって考えると、なんとなく見えてきた気がするんだ。
 元々あったテオドア兄様のアレルギーと、心霊的な先代陛下の霊障に苦しんでる姿をみかねて、守護の呪文が刺繍で作られてる枕カバーを掛けるように誘導した。
 そして魔法で僕が解呪したのは守護呪文が縫われていた枕カバーで、解呪と共に霊障がぶつかって裂けた」

「では、お嬢さまは?」

「純粋に王子と結婚させたかったんじゃないかな?
 ただのお嬢様だと、何かあった時に皇族を守れないし、敢えて暗部から選り抜いて来たんとしか思えないんだ」

「私の名前が呪詛の様に縫い取られていたのは?」

「守護呪文を刺繍したのは皇太后様だと思うから、聞いてみないと分からないけど皇太后様はあの布じゃなきゃいけない理由があったのかも、
 そしてグランが下げ渡した侍従から皇太后様の手に渡ってるからその間に誰かが刺繍した、としか思えないけど」

 あくまで仮説を立てただけで、何も証拠はない。
 寧ろ、執事長の言葉通りなら黒幕は皇太后と言う事になる。

「皇太后様にお話しを聞きに行くしかないな」

 グランも同意してくれて、従者と執事長は牢屋の中で騎士たちがちゃんと監視しておくと言う事で、僕らは皇太后の部屋へと向かった。


 
 

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