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隠し通路
しおりを挟む暗く狭い通路には同じ足跡が何度も行き来した証拠に、くっきりとついてる所もあれば何重にも重なった跡で見えなくなってる部分もあった。
足のサイズだけで見れば、女性か子供みたいだけど、こんな場所を通るなんてかなりの強者だと思われた。
第一王子の部屋は皇宮の最上階のビルで言うと五階にあたる場所で、陛下達も使っているペントハウスみたいなものだった。
「シアン、随分下へ行くな」
「ここから外に出るのに、一番下まで下りるのか、途中で建物内に出るのか分からないけど、今のところ二階分くらい下ったね」
通路の壁のところどころに、明かり取りの松明かランプを置いておける場所があったけど、それらを回収するわけにはいかないだろうと思える距離で、ずっと使われた形跡も無かった。
「多分、ランプか魔法具の明かりで動いてるんだと思うよ。
この紐の動きは魔力を追うものだから、魔道具を追ってるのかもしれません。
だから室内では明かりが使えなくて、壁沿いに動いたのかも」
いくらなんでも明かりが近くにあったら、首を絞めてきた犯人が見られる確率が高くなるから。
「あ、また壁の向こうに行きましたよ!」
騎士が追います! と言って通路に入って行った。
「三階のどこかに出るはずだ、他の者は三階から下の階を隈なく探せ!」
僕の紐が写す先には廊下が続いているだけで、これが何階なのかは分からなかった。
「階が分かったらそこへ行ってもう一度」
「いや、やらなくていい
兄上、部屋を変えるのはやめましょう。
シアン、この隠し通路の扉を繋げてくれる?」
「あ! うん、分かった!」
騎士達は光の紐が二階の廊下に出ていた事を教えてくれた。
騎士達によると、二階部分は使用人たちのまとめ役である侍女長、侍従長、執事長、料理長、縫製長、宝飾長、そう言った各職の長が使用する部屋が並んでいて、騎士団長も使用していると言う事だった。
見回りが当然あるはずなのに、一度も見つからず咎められず、当たり前に存在する人は、執事か騎士だった。
侍女や侍従は何か特別な許可がない限り二階には上がれず、警邏している騎士に取り次ぎを頼みそれぞれの用向きがある長達が判断をして呼びつけるか、下りていくかだと言う事だった。
誰かが手引きをしなければ侵入できない場所に、何度も何度も訪れ第一王子の顔色が体調が悪くなる程に害を及ぼせる人物とは。
「出来たよ、グラン。
行き先は地下牢で良いよね?
一方通行にしといたから、入ったら最後出られないから」
この場にいた騎士達は今夜から地下牢での勤務になった。
囮になってくれたので、地下牢に来たら捕まえるそうだ。
「今夜来てくれたら早いけど、テオドア兄様が回復した事は秘密で、僕の魔法でもダメだった、と執事長には伝えておいて下さい。
テオドア兄様は見た目だけ枯れ木みたいにしときましょう」
幻覚魔法を使ったけど、本人は何だか楽しげだし、ま、いっか。
あれ、なんか大事な事忘れてない?
うーん、うーん、あ!!
僕らはいつになったら初夜を迎えられるんだろう。
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