上 下
22 / 24

クーデターのその後

しおりを挟む

 僕が偽物の捜査員から聞いた情報は、全くの嘘っぱちだった。

「男爵令息は生かしておく必要もそろそろないし、処刑しちゃおうか」

 男爵が計画していた裏に、やはりピスカルソーダ国の元国王夫妻がいた。
 そっちはベルギアン卿が率いる王国騎士団が取り押さえ、逆賊として処刑が完了していた。
 というか、捕まえるつもりが力加減間違えちゃって、プチってなっちゃった、という報告を魔法具を通して聞かされた。

 アレだ、猫が獲物を玩具のごとくいじり倒しちゃって、千切れちゃったみたいな。

 極めつけが「人って脆いんだね」だった。

 ビランコ産の人は皆突き抜けてる。
 トルシエ王妃も実は強いんだろうか?

「男爵は既に処刑が完了してる、獣人化してる子供は保護下に入ってるが、子供達の両親が行方不明でベルギアンに捜索をしてもらっているどころだ。
 間違いなく、向こうの国へ行かされているだろう。
 厄介なのは、獣化した子供がいると言う事実を忘れてしまっているだろうって事だ」

「父上、それについては宰相様ご本人が出向いて、探されるそうですよ」

「え? 私はそんな事一言も」
「言ったじゃないですか。
 私や法務部署長を危険に晒してごり押しの捜査をさせた事のお詫びを何でもするって。
 海外旅行とでも思って、七泊八日くらいでお願いします」

 つまり、実質7日で探し出して来いよ、って事だ。

「あら良いわね。
 うちのイルちゃんを泣かせたんですもの、そのくらいのお仕置きは軽いもんですわ」
「イルお兄様をそんな風に陥れたんですか? ヴォーガン宰相。
 泣かせて楽しかったのかしら?」

 トルシエ王妃迄も、この悪だくみに加担し始めちゃったよ。

「きっと宰相様の事だから、そつなく子供たちの両親をみつけてくれるさ。
 なぁ?」

 公爵様も砕けた口調で言ってるけど、全く目が笑ってなかった。
 全員だ。

 最後に国王が「意地の悪い事をしたな、童貞じゃあるまいし」 と言うと反応は、童貞だったようだ。

「いまここで童貞は関係ないじゃないですか!」

「え?本当に童貞だったの?」
「童貞ですか?」
「どうていかぁ」

 男性陣はニヤニヤと言い、夫人と王妃はモゲレバイイノニ、と不穏な事を言っていた。

「ごめんなさい。ちゃんと謝罪してくださったのに」

 彼らの前ではどうにも出来なかった。

「いえ、確かにイリエラ殿には酷い事をしましたし、ここまで事が大きくなって危険に晒したのも事実ですから」

 宰相様は改めて、僕には謝罪した。

「お前ら覚えてろよ」

「忘れますよ~」

 公爵様も煽るの止めてあげてくださいよ~。

 そう言うと、数人の捜査員を連れて、さっそく出発してしまった。
 クーデターになった以上、獣化した子供たちの両親が生きてる保証はかなり低くいだろうから、一刻でも早く探し出してあげなくてはいけなかった。

「さて、改めてイルとデートしなくちゃね」
 
 あの時は興奮したのと、感情的にも感極まってしまって物凄く大胆な事をしたと、思い出してしまって凄く恥ずかしくなった。

「サイアス様、こちらを」

 何かを手渡していた。

「ボーナスを与える」

 ん? なんでボーナス?

「お兄様、一体何を?」
「サイアス、何を貰ったのよ?」

 女性二人に覗き込まれて、私が見たらね、と言っていた。

 ? 何だろ? 僕も後で見せて貰おうっと。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残念でした。悪役令嬢です【BL】

渡辺 佐倉
BL
転生ものBL この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。 主人公の蒼士もその一人だ。 日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。 だけど……。 同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。 エブリスタにも同じ内容で掲載中です。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

ヒロインの兄は悪役令嬢推し

西楓
BL
異世界転生し、ここは前世でやっていたゲームの世界だと知る。ヒロインの兄の俺は悪役令嬢推し。妹も可愛いが悪役令嬢と王子が幸せになるようにそっと見守ろうと思っていたのに…どうして?

裏切られた腹いせで自殺しようとしたのに隣国の王子に溺愛されてるの、なぁぜなぁぜ?

柴傘
BL
「俺の新しい婚約者は、フランシスだ」 輝かしい美貌を振りまきながら堂々と宣言する彼は、僕の恋人。その隣には、彼とはまた違う美しさを持つ青年が立っていた。 あぁやっぱり、僕は捨てられたんだ。分かってはいたけど、やっぱり心はずきりと痛む。 今でもやっぱり君が好き。だから、僕の所為で一生苦しんでね。 挨拶周りのとき、僕は彼の目の前で毒を飲み血を吐いた。薄れ行く意識の中で、彼の怯えた顔がはっきりと見える。 ざまぁみろ、君が僕を殺したんだ。ふふ、だぁいすきだよ。 「アレックス…!」 最後に聞こえてきた声は、見知らぬ誰かのものだった。 スパダリ溺愛攻め×死にたがり不憫受け 最初だけ暗めだけど中盤からただのラブコメ、シリアス要素ほぼ皆無。 誰でも妊娠できる世界、頭よわよわハピエン万歳。

浮気三昧の屑彼氏を捨てて後宮に入り、はや1ヶ月が経ちました

Q.➽
BL
浮気性の恋人(ベータ)の度重なる裏切りに愛想を尽かして別れを告げ、彼の手の届かない場所で就職したオメガのユウリン。 しかしそこは、この国の皇帝の後宮だった。 後宮は高給、などと呑気に3食昼寝付き+珍しいオヤツ付きという、楽しくダラケた日々を送るユウリンだったが…。 ◆ユウリン(夕凛)・男性オメガ 20歳 長めの黒髪 金茶の瞳 東洋系の美形 容姿は結構いい線いってる自覚あり ◆エリアス ・ユウリンの元彼・男性ベータ 22歳 赤っぽい金髪に緑の瞳 典型的イケメン 女好き ユウリンの熱心さとオメガへの物珍しさで付き合った。惚れた方が負けなんだから俺が何しても許されるだろ、と本気で思っている ※異世界ですがナーロッパではありません。 ※この作品は『爺ちゃん陛下の23番目の側室になった俺の話』のスピンオフです。 ですが、時代はもう少し後になります。

【完結】攻略は余所でやってくれ!

オレンジペコ
BL
※4/18『断罪劇は突然に』でこのシリーズを終わらせて頂こうと思います(´∀`*) 遊びに来てくださった皆様、本当に有難うございました♪ 俺の名前は有村 康太(ありむら こうた)。 あり得ないことに死んだら10年前に亡くなったはずの父さんの親友と再会? え?これでやっと転生できるって? どういうこと? 死神さん、100人集まってから転生させるって手抜きですか? え?まさかのものぐさ? まあチマチマやるより一気にやった方が確かにスカッとはするよね? でも10年だよ?サボりすぎじゃね? 父さんの親友は享年25才。 15で死んだ俺からしたら年上ではあるんだけど…好みドンピシャでした! 小1の時遊んでもらった記憶もあるんだけど、性格もいい人なんだよね。 お互い死んじゃったのは残念だけど、転生先が一緒ならいいな────なんて思ってたらきましたよ! 転生後、赤ちゃんからスタートしてすくすく成長したら彼は騎士団長の息子、俺は公爵家の息子として再会! やった~!今度も好みドンピシャ! え?俺が悪役令息? 妹と一緒に悪役として仕事しろ? そんなの知らねーよ! 俺は俺で騎士団長の息子攻略で忙しいんだよ! ヒロインさんよ。攻略は余所でやってくれ! これは美味しいお菓子を手に好きな人にアタックする、そんな俺の話。

ざまぁ!をされるつもりが… こんな展開、聞いてないっ

BL
そう、僕は姉上の戯言をいつものように聞き流していた。ここが乙女ゲームとやらの世界の中で自分は転生者なのだと。昔から、それはもう物心ついた頃には子守唄の代わりに毎日毎日、王太子がどうで、他の攻略者があーで、ヒロインがこんな子で、自分はそんな中でも王太子の婚約者でヒロインを苛め抜く悪役令嬢に転生したのだと、毎日飽くほど聞かされていた。 ───だから、僕はいつもと同じように気にも留めず聞き流していた。 それがまさか自分の身に降りかかる受難の始めになろうとは… このときはまだ思いもしなかった。 『…すまない、アラン。姉の代わりに殿下の… 王太子の婚約者を務めてほしい』 「は?」 呼び出された父の言葉に、一瞬 自分が何を言われたのか理解が出来なかった。 ───… これは王太子の婚約者だった姉上が平民と駆け落ちしたことにより、降りかかる僕の受難の物語である─。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

処理中です...