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担保は国
しおりを挟む廃嫡されたのに、公爵家を作って爵位を与えたのは国王の願いだった。
その代わり、王妃側の家系つまりベルギアンを立太子させて、余計な事はするなと言う脅しのようなものだった。
それなのに、この結婚式に勝手に乗り込んで来て、勝手な友好国扱いをしようとした。
元王太子と言う立場の者が、ドラニスター国の国王夫妻に言い放ったのだ。
「ドラニスター国王、その者はお好きに処分なさってください」
ピスカルソーダ国の国王夫妻ではなく、王太子のベルギアンが頭を下げた。
その後ろで、国王夫妻は真っ青になっていた。
「了承した」
トルシエ王妃もまた、にっこりと頷いた。
「な、なにをする!」
「いや、やめて! 触らないで!」
二人はその場で衛兵に連行され、見えなくなるまで何かを叫んでいた。
「さて、宰相補佐サイアス、この余興をもう少し楽しもうではないか」
獰猛な感情を乗せて、ドラニスター王は笑った。
トルシエ王妃が長年受けて来た屈辱はこんなものでは無かった。
国王夫妻にも責任がある。
「あの愚か者が我が国に害をなそうとした場合、もしくは侮辱侮蔑を行った場合、ピスカルソーダ国として国王夫妻は引退し、その権力を次代の王へと引き継ぐ事、でしたね」
次代の王とは弟のベルギアン。
「面白いではないか。
この国で王位継承とは」
「お、お許しください!
まさか、こんなことになるとは思わず、謝罪がしたいと申すものですから」
「ふふ、友好国にしてやるが謝罪ですか?
面白い思考ですわね。
まぁ、この親にしてこの子有りですわね」
では、とサイアスがピスカルソーダ国の形式に則って、ベルギアンの王位継承式を行った。
こんな時宰相補佐だったから、なんでも出来るよね。
ちゃんと形式に沿ってやってるんだし、場所が違っただけで、神官もいれば証人も大勢いる、そして何よりその当事者の国王陛下がいて承認するしかない状況なのだから。
「若き王の誕生に祝福を!」
参席した貴族や諸外国の王族に見守られて、ベルギアンは無事国王となった。
「これで終わりではない。
王位に就く時の約束として、ピスカルソーダ国をドラニスター国の従属国となり、ドラニスター国王とその王妃に主権を渡すことを宣誓する」
ベルギアン王が宣誓してしまった。
ドラニスター国は何もせず王妃の出身国であるピスカルソーダ国を手に入れてしまった事になる。
最初からそこまでが婚約破棄の代償だったんだと理解した。
廃嫡する事で一度はチャンスを与えたのに、あのバカを育てたバカ国王は国を担保にしたことも気づかずに、婚約破棄の件をうやむやにしたそうだ。
ベルギアンに王位を譲るつもりはなく、ほとぼりが冷めたらもう一度あのバカを立太子させるつもりでビランコ公爵家からの申し出を安易に了承したんだ。
トルシエ王妃がそばに来て、ね、数か月も無かったわね、と笑った。
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