9 / 24
披露宴
しおりを挟む
トルシエ嬢に至っては朝からマッサージに湯あみ、そしてピーリングを繰り返してプルプルのお肌を作り上げさせられていた。
僕がメイクを担当してから、かなりお肌に関しては注意をしていたからそんなに心配してないけど、睡眠! いくら準備が多いからって、夜明けと同時に起こされていきなりマッサージとか、過酷すぎる。
何の修行だよ。
「トルシエ嬢、式までは大変でしょうから、流動食を用意してもらいました」
僕もコスプレするときは何日か前から体を作るし、着替えたらなるべく食べないようにしていたから、こんな時は流動食を少しずつ胃に入れて、ストレスに備えないといけない。
「ありがとう、イル兄様」
準備をしながらで緊張もあるだろうけど、それ以外に体力を持って行かれてるトルシエ嬢に、頑張れとしか言えない自分が情けなかった。
「イル兄様、今日は私の晴れ舞台ですもの、このくらい熟してみせますわ」
笑顔を向けらると、こっちまで頑張らなきゃって気持ちにさせられた。
「それにね、披露宴での余興を一番楽しみにしてますの」
「余興、ねぇ」
あれだ。 アリステリア公の事だろう。
どうやったら余興になるんだか。
「ふふ、イル兄様こそお兄様とどうなんですか?」
え、いまここでソコ聞いちゃう?
「え、あー、そうね。
一応、今度城下でデートする予定」
「まぁ! お兄様のポンコツな顔が見れますのね」
ポンコツって……。 いつ覚えたんだ。
「その時を楽しみにしておりますわ」
メイクも仕上げの段階で、トルシエ嬢の笑顔がより綺麗に見えるように、パールが入った仕上げの粉を振る。
ウエディングドレスはドラニスター王が、トルシエ嬢がまだアレと婚約してるときにオーダーしてあったそうで、なかなか凝った作りになっていた。
背中をコルセットのようなデザインでキュっと搾り上げ、胸はレースが幾重にも重なってボリュームを出すと、ウェストの細さを強調した。
スカートは骨盤あたりまでピッタリとした作りにしてシンプルに、そして切り返して流れるようなドレープを作った裾にレースとオーガンジーを組み合わせたオーバースカートを纏わせていた。
後ろは長く、裾を持つ者が何人いるんだってくらい。
「これ、着るのも大変だけど、重さ何キロだろう?」
「それこそ、一番の力持ちは私ではないかしら?」
こんな重量のドレスを数時間着るって、物凄いことだった。
「うん、鎧だね」
「えぇ、この国を守る王妃の鎧ですわ」
しっかりと前を向くトルシエ嬢の準備が整った。
扉の前でドラニスター王が待ち構えていて、普段のヒグマからは想像できないほど優雅に、そして大きな岩のような体にトルシエ嬢を寄り添わせた。
王妃の王冠をその頭上に戴いて、結婚式は無事に終了した。
式には正式に招待された諸外国の王族や要人や貴族のみが参列でき、別枠の連中は締め出された。
本来別枠って無いんだから当然だろう。
披露宴会場は王宮の大広間で舞踏会と同じように開かれた。
少し違うのは、普段の会場の続き間も解放して着席出来る晩餐テーブルもあると言う部分だった。
国王陛下と王妃が入場し披露宴がスタートすると、それぞれの国を代表する人物たちが二人の前へ行って祝辞を述べてそれぞれの席へ下がる、と言う流れが始まった。
「ピルカスソーダ国王、王妃がご挨拶いたします。
この度は親族となれた事、嬉しく思います」
どの面下げてと思わなくはないけど、これが政略と言うやつなんだろうって飲み込んだ。
王族関係が終わると貴族の挨拶が始まり、遅れてくるような貴族がいない限りアリステリア公とその婚約者が最後に挨拶を許された。
「ドラニスター国王、並びに、トルシエ妃殿下のご成婚、心よりお慶び申し上げます」
続いて自分の名前と隣に並ぶ婚約者の名前を告げようとして、国王夫妻のすぐ脇で控えていた宰相とアス様が二人の言葉を遮った。
「名前は必要ないでしょう。
一平民の名前を名乗られても、国王も王妃も困るだけですから」
「へ、平民だと? 私は元王太子アリステリアだぞ!
ピスカルソーダ国との友好をしめしてやろうと言うのに、無礼だぞ!」
平民と言う言葉を聞いて、元王太子は激高した。
廃嫡されたじゃん。
僕がメイクを担当してから、かなりお肌に関しては注意をしていたからそんなに心配してないけど、睡眠! いくら準備が多いからって、夜明けと同時に起こされていきなりマッサージとか、過酷すぎる。
何の修行だよ。
「トルシエ嬢、式までは大変でしょうから、流動食を用意してもらいました」
僕もコスプレするときは何日か前から体を作るし、着替えたらなるべく食べないようにしていたから、こんな時は流動食を少しずつ胃に入れて、ストレスに備えないといけない。
「ありがとう、イル兄様」
準備をしながらで緊張もあるだろうけど、それ以外に体力を持って行かれてるトルシエ嬢に、頑張れとしか言えない自分が情けなかった。
「イル兄様、今日は私の晴れ舞台ですもの、このくらい熟してみせますわ」
笑顔を向けらると、こっちまで頑張らなきゃって気持ちにさせられた。
「それにね、披露宴での余興を一番楽しみにしてますの」
「余興、ねぇ」
あれだ。 アリステリア公の事だろう。
どうやったら余興になるんだか。
「ふふ、イル兄様こそお兄様とどうなんですか?」
え、いまここでソコ聞いちゃう?
「え、あー、そうね。
一応、今度城下でデートする予定」
「まぁ! お兄様のポンコツな顔が見れますのね」
ポンコツって……。 いつ覚えたんだ。
「その時を楽しみにしておりますわ」
メイクも仕上げの段階で、トルシエ嬢の笑顔がより綺麗に見えるように、パールが入った仕上げの粉を振る。
ウエディングドレスはドラニスター王が、トルシエ嬢がまだアレと婚約してるときにオーダーしてあったそうで、なかなか凝った作りになっていた。
背中をコルセットのようなデザインでキュっと搾り上げ、胸はレースが幾重にも重なってボリュームを出すと、ウェストの細さを強調した。
スカートは骨盤あたりまでピッタリとした作りにしてシンプルに、そして切り返して流れるようなドレープを作った裾にレースとオーガンジーを組み合わせたオーバースカートを纏わせていた。
後ろは長く、裾を持つ者が何人いるんだってくらい。
「これ、着るのも大変だけど、重さ何キロだろう?」
「それこそ、一番の力持ちは私ではないかしら?」
こんな重量のドレスを数時間着るって、物凄いことだった。
「うん、鎧だね」
「えぇ、この国を守る王妃の鎧ですわ」
しっかりと前を向くトルシエ嬢の準備が整った。
扉の前でドラニスター王が待ち構えていて、普段のヒグマからは想像できないほど優雅に、そして大きな岩のような体にトルシエ嬢を寄り添わせた。
王妃の王冠をその頭上に戴いて、結婚式は無事に終了した。
式には正式に招待された諸外国の王族や要人や貴族のみが参列でき、別枠の連中は締め出された。
本来別枠って無いんだから当然だろう。
披露宴会場は王宮の大広間で舞踏会と同じように開かれた。
少し違うのは、普段の会場の続き間も解放して着席出来る晩餐テーブルもあると言う部分だった。
国王陛下と王妃が入場し披露宴がスタートすると、それぞれの国を代表する人物たちが二人の前へ行って祝辞を述べてそれぞれの席へ下がる、と言う流れが始まった。
「ピルカスソーダ国王、王妃がご挨拶いたします。
この度は親族となれた事、嬉しく思います」
どの面下げてと思わなくはないけど、これが政略と言うやつなんだろうって飲み込んだ。
王族関係が終わると貴族の挨拶が始まり、遅れてくるような貴族がいない限りアリステリア公とその婚約者が最後に挨拶を許された。
「ドラニスター国王、並びに、トルシエ妃殿下のご成婚、心よりお慶び申し上げます」
続いて自分の名前と隣に並ぶ婚約者の名前を告げようとして、国王夫妻のすぐ脇で控えていた宰相とアス様が二人の言葉を遮った。
「名前は必要ないでしょう。
一平民の名前を名乗られても、国王も王妃も困るだけですから」
「へ、平民だと? 私は元王太子アリステリアだぞ!
ピスカルソーダ国との友好をしめしてやろうと言うのに、無礼だぞ!」
平民と言う言葉を聞いて、元王太子は激高した。
廃嫡されたじゃん。
13
お気に入りに追加
1,001
あなたにおすすめの小説
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
壁の花令嬢の最高の結婚
晴 菜葉
恋愛
壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。
社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。
ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。
アメリアは自棄になって家出を決行する。
行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。
そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。
助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。
乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。
「俺が出来ることなら何だってする」
そこでアメリアは考える。
暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。
「では、私と契約結婚してください」
R18には※をしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる