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うさ耳
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ドラニスターへきて早一週間。
トルシエ嬢は毎日、王妃様教育に出向ていた。
「ねぇ、イル。
王が何か困ってるようなの」
「早く式を挙げたくて?」
からかうと、口を尖らせて違うわよ、と否定した。
「僕が教えるメイク、ちゃんと自分でもしてくださいね」
ちょっとキツ目な美人から、知的な可愛い子に変貌していたトルシエ嬢に、メイクを教えるのが僕の役目になっていた。
「う~ん、聞きだすならもうちょっと可愛く、ケモミミとか付けてみるか」
カチューシャに毛皮でうさ耳を作って、それで髪をまとめさせると可愛いウサギ人が出来あがっていた。
うん、これで可愛く聞かれたら、それなりに喋ってくれるんじゃないかな?
夜、寝る前の交流をする習慣があるらしく、ドラニスター王の執務室で一日の報告をし合うらしい。
「これで行っといで」
送り出すと、振り向きながらありがとう、と頬をちょっとだけ染めて残していった。
「陛下、トルシエです」
ドアをノックするとすぐに扉が開いた。
「トルシエ、嬢、……そ、その耳は」
「可愛いですか? 私の未来のお兄様が作って下さいました」
「そう、ですか。
そうなんですね」
まるで歓喜と言った風でトルシエを抱き上げると、その姿をヒグマに変えた。
「知っていたんですね、ビランコ家はやはり凄い」
「え、え? えぇ?」
当然トルシエは知るはずもなく、可愛いから作ったって言うだけカチューシャで、まさか国王がヒグマだとは思いもしなかった。
だが、ここで騒いではいけない。
公爵家令嬢として、トルシエはただ優しく微笑んで、国王にされるがまま、振り回されていた。
「へ、陛下、そろそろ、おやめに」
目を回したトルシエが制止してもらう様に言うと、やっと気づいたドラニスター王は謝罪をしながらそうっと下ろした。
「トルシエ嬢はご存知だったんですね、王族に近い者が獣の姿になれることを」
内心は心臓がバクバクしてるトルシエだったが、にっこり笑ってドラニスター王のモフモフな腕に寄りかかる様にした。
「陛下、私はそのようなこと存じ上げませんでしたわ。
でも、こうやってそのお姿を拝見すると、より、愛しさが生まれました」
「まさ、か、私の勘違いだった?」
「まぁ、そうですわね。ですが、それもまた楽しゅうございましたわ」
ヒグマの姿でしゅんと項垂れるドラニスター王が可愛く見えて仕方なかったトルシエは、姿形よりその人の心が大事だと告げると、私の前ではクマでも大丈夫ですよ、と囁いた。
「トルシエを王妃に迎えられるなんて、奇跡としか言いようがない。
だが、ビランコ家では……、子供は獣の姿で生まれて来る事がほとんどだ」
「まぁ、さすがに陛下の様な大きい子熊でしたらみんなビックリするでしょうけど、家の家族はそのあたりも軽く超えて来ますから心配いりませんわ」
特にお母様は溺愛されることでしょうね、と。
「黙っておくのは間違ってる気がするので、ビランコ家の家族には伝えようと思うのだ」
「そうですわね、きっとみんな喜びますわ」
え? という顔をしたドラニスター王に私の家族ですよ?と付け足した。
「では、明日、どこかで時間を貰えないだろうか?」
「そうですわねぇ、いっそ今からではいかがでしょう?
あとは寝るだけででしたし、それこそ丁度いいじゃありませんか」
珍しくトルシエがイタズラを思いついた子供の様な顔をした。
そしてドラニスター王に至っては、そんな表情をするトルシエに心臓を鷲掴みされていた。
なんと言っても、うさ耳付きだったので。
トルシエ嬢は毎日、王妃様教育に出向ていた。
「ねぇ、イル。
王が何か困ってるようなの」
「早く式を挙げたくて?」
からかうと、口を尖らせて違うわよ、と否定した。
「僕が教えるメイク、ちゃんと自分でもしてくださいね」
ちょっとキツ目な美人から、知的な可愛い子に変貌していたトルシエ嬢に、メイクを教えるのが僕の役目になっていた。
「う~ん、聞きだすならもうちょっと可愛く、ケモミミとか付けてみるか」
カチューシャに毛皮でうさ耳を作って、それで髪をまとめさせると可愛いウサギ人が出来あがっていた。
うん、これで可愛く聞かれたら、それなりに喋ってくれるんじゃないかな?
夜、寝る前の交流をする習慣があるらしく、ドラニスター王の執務室で一日の報告をし合うらしい。
「これで行っといで」
送り出すと、振り向きながらありがとう、と頬をちょっとだけ染めて残していった。
「陛下、トルシエです」
ドアをノックするとすぐに扉が開いた。
「トルシエ、嬢、……そ、その耳は」
「可愛いですか? 私の未来のお兄様が作って下さいました」
「そう、ですか。
そうなんですね」
まるで歓喜と言った風でトルシエを抱き上げると、その姿をヒグマに変えた。
「知っていたんですね、ビランコ家はやはり凄い」
「え、え? えぇ?」
当然トルシエは知るはずもなく、可愛いから作ったって言うだけカチューシャで、まさか国王がヒグマだとは思いもしなかった。
だが、ここで騒いではいけない。
公爵家令嬢として、トルシエはただ優しく微笑んで、国王にされるがまま、振り回されていた。
「へ、陛下、そろそろ、おやめに」
目を回したトルシエが制止してもらう様に言うと、やっと気づいたドラニスター王は謝罪をしながらそうっと下ろした。
「トルシエ嬢はご存知だったんですね、王族に近い者が獣の姿になれることを」
内心は心臓がバクバクしてるトルシエだったが、にっこり笑ってドラニスター王のモフモフな腕に寄りかかる様にした。
「陛下、私はそのようなこと存じ上げませんでしたわ。
でも、こうやってそのお姿を拝見すると、より、愛しさが生まれました」
「まさ、か、私の勘違いだった?」
「まぁ、そうですわね。ですが、それもまた楽しゅうございましたわ」
ヒグマの姿でしゅんと項垂れるドラニスター王が可愛く見えて仕方なかったトルシエは、姿形よりその人の心が大事だと告げると、私の前ではクマでも大丈夫ですよ、と囁いた。
「トルシエを王妃に迎えられるなんて、奇跡としか言いようがない。
だが、ビランコ家では……、子供は獣の姿で生まれて来る事がほとんどだ」
「まぁ、さすがに陛下の様な大きい子熊でしたらみんなビックリするでしょうけど、家の家族はそのあたりも軽く超えて来ますから心配いりませんわ」
特にお母様は溺愛されることでしょうね、と。
「黙っておくのは間違ってる気がするので、ビランコ家の家族には伝えようと思うのだ」
「そうですわね、きっとみんな喜びますわ」
え? という顔をしたドラニスター王に私の家族ですよ?と付け足した。
「では、明日、どこかで時間を貰えないだろうか?」
「そうですわねぇ、いっそ今からではいかがでしょう?
あとは寝るだけででしたし、それこそ丁度いいじゃありませんか」
珍しくトルシエがイタズラを思いついた子供の様な顔をした。
そしてドラニスター王に至っては、そんな表情をするトルシエに心臓を鷲掴みされていた。
なんと言っても、うさ耳付きだったので。
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