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雪、ユキ、ゆき!
しおりを挟むこの船を普通の旅客船として、何箇所か港を経由して入国する手筈になっていた。
初めての船旅は二人にはいい経験になったみたいだった。
夜の海が怖いと言うエリュは、まだまだこどもだなぁ、なんてちょっと安心したりもした。
「さぁ、気を引き締めてな。
チビッ子ども」
うちのデカくなった息子たちをチビッ子と言うのは、うちの家族だけだ。
特にロゲルは身体も大きいから、言っても違和感が無いし、シュリも強いとはいえ戦術とかならロゲルやシャズが確実に勝っていた。
経験値の差だと、よく一笑されては悔しいらしく、何度も挑戦しているのを見て来た。
最近は大分戦術を考えるようになったと、マナイから聞いた。
「今回、俺は父親だ。
お父様でも父上でも、パパでもいいぞ~」
凄く嬉しそうだ。
「ロゲル父様?」
エリュがこてん、と首を傾げた。
「うおっ、可愛い!
シュリもほら、どうぞ」
「ん、ロゲル父上」
言いにくそうに、何とか呼ぶとため息をついて、あまり呼ばない様にすると付け加えた。
「ふふ、二人とも可愛い」
「咲季ちゃん、笑い事じゃないよ?
君もだよ、ホラ」
「え?父上ですか?」
「はあ?
何でよー、それは無いよー」
「あ、えと、ロゲル様、ですかね?」
「もっと、こう、伴侶っぽく!」
「伴侶っぽいって言われても…
旦那様、とか?」
「惜しい!
アナタ、がいいなぁ」
無かったわ、その選択肢。
「あ、アナタ、ですか。」
「そうそう、にっこり笑って、アナタ、で」
あー、はいはい、分かりましたよ。
「アナタ」
「くーっ!!」
いよっしゃ!と気合が入った掛け声を上げていた。
「母様、僕から離れないでね」
エリュは何を察したのか、僕を守るように少し前に出ていた。
「さあ、そろそろ到着だ。
準備はいいかい?」
其々が、返事を返して、下船の準備を始めた。
僕は、擬態をする為にプラチナに近い金髪にして、瞳も金色にした。
レイシンの人が少しだけ興味を惹く様にするのが目的だった。
言われていた様に、寒い!
凍る!
「咲季、大丈夫かい?
もうすぐ宿だから、頑張れ。」
違和感が無いとは言わないけど、これは仕事だし、こんな事で照れてる場合じゃない、って言い聞かせた。
エリュは外套を着ていても、寒いらしくシュリが抱っこして歩いていた。
僕も、ロゲルに腰を抱かれて歩くと、確かにあったかくて助かった。
「こんなに雪深いとは思いませんでした。
レイシンの空調に魔力や魔石が足りないと言うのは納得です。」
「だからこそ、奴隷を欲しがるんだろうな」
街の中はまだマシだった。
街道は雪掻きがされていて、排水設備があるようで、雪をそこに落としていく。
「ふぅ~っ、やっと歩きやすい道に出ましたね。
エリュはやっぱり赤ちゃんだしね」
ふふって笑ったら急に、赤ちゃんじゃ無いって言い出してシュリから降りようと暴れた。
「おりーるー!
僕、赤ちゃんじゃないもん!」
「それが赤ちゃんだよ。」
シュリが付け加えて、がーん!って顔をしたから、笑ってしまった。
「エリュ、抱っこしてもらえるなんて今のうちだけだよ。」
宥める様にロゲルがエリュにだっこされとけ、と言った。
「そ、そっかなぁ」
今のうちって言葉にエリュは反応して、抱っこしてもらえる事に感謝をした。
素直で可愛いと、三人とも思ったのがその表情で分かった。
「あ、あれだ
これからしばらく泊まる宿だ。」
街の中で、広場に面した一等地と言える場所に構えた、高級な宿と言うよりホテルだった。
「わぁ、ロゲル父様
今日からここに住むの?」
「住むって、ふふ
そうだね、しばらくお父様のお仕事が終わるまではここに住むよ」
「母様!僕、シュリ兄様と寝る!」
「え?」
いや、そうするとロゲルと一緒の部屋になっちゃうじゃん!!
「いいよね?
シュリ兄様?」
「あぁ、いいぞ」
「やったぁ!」
喜び合ってる二人に水を差す訳にもいかなくて、はぁ、どうしよ?と言う気持ちしかなかった。
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