子豚のワルツ

ビーバー父さん

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神の子

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「ですが!
 貴方の能力なら、命だってどうにかできるんじゃないですか?!」

こいつ、どこまでも自分本位だな。

「出来たとして、何故、僕が貴方の願いを叶えないといけないのですか?」

「貴方は神の子だ!」

「ええ、でも、神ではないですよ?
 神も神羅万象万物全ての願いを叶えて来ましたか?
 もし叶えて来たのであれば、真っ先に死が無くなると思いますが?」

ぐっと押し黙った後に、いよいよ恨み言を吐き出した。

「あ、貴方は!
 持ちたくても持ち得ない力を持っているのに傲慢だ!
 縋る者の気持ちを考えてくれないのか!!!」

傲慢とは、良く言えたものだ。

「では、貴方が”英雄”の力を持っていたから、
 皆の願いを叶えるために、魔王を封印した、と言うのですね?
 自分は、それで殺されても、皆の願いだから叶えたんですよね?
 随分と高潔な事だ。
 では、エスラも貴方の願いを一度は叶えたではないですか?
 貴方の理論で行くなら、叶えたのですよね?」

僕は薄ら笑いさえ浮かべていたと思う。

「それとこれとは違う!
 俺は罠に嵌められて家族を皆殺しにされて!」
「黙れ、糞が!」

低く地獄から響くような声を出したのは、シュリだった。

「貴様は本当に英雄か?
 ただのコソ泥ではないのか?
 もう、魔王は存在しない、それを認めないのは、その力が富を生むと思っているからか?」

シュリから立ち上る闘気が、辺りを凍り付かせるほどだった。

「お三方、その辺で。
 支配魔法を掛けましたので、洗いざらい思う存分腹の中にあることを吐いてもらいましょう」

自白魔法を展開していたのか!
改めて、支配魔法が怖いと言う事を知った。

「さぁ、”元英雄”エディオン、何故魔王エスラに執着するのか答えよ」

口を押さえて必死で喋らないようにしていたが、自白魔法にはどうにも抗えず、押さえる口とは裏腹にペラペラと喋り始めた。

聞いていて反吐が出そうだった。

途中狂ったように笑いだしたのも、醜悪だった。
そして一緒に来ていた宰相の従兄弟が、エディオンを唆していた。

掻い摘んで言うと、再生能力のある魔王を少しずつ切り売りして、回復薬や欠損などの再生を売り物にした事業展開を画策していた事。
そして、魔王がエディオンを愛していた事から、そこを突けば自由になると思っていた事。
既に魔石の交易では立ち行かなくなってる事を晒した。
元々が魔族だ。
そこに生産性のある努力を求めるのは違っていたのかもしれないけど、酷すぎた。
統治して規律や規則を守らせるには国が若すぎて、生産や労働を求めるには種族として古すぎた。

絶対的な力の象徴が無くなり、まとめることが出来なくなっていた。

まるでアトランティスの異世界版って感じだな。
アレは3日とも7日とも言われてるけど、こちらは1年ってとこか。

レオハルトが何やら動いてるらしいし、兎の王国でも作るんじゃないかね?とか想像して、一人で笑ってしまった。

「咲季、何を笑ってるんだ?」

トルクが内緒話をする様に聞いてきたので、レオハルトが国を追われてるから魔王国を兎の国にするためにそのうち乗っ取るかなって、と言うと、盛大にトルクが笑った。

「ぶっは!!!
 あはははははは!!!
 いや、失敬、失敬、ぶっ!!」

「トルクったら、駄目ですよ、ぷぷ!!」

突然バカ笑いをした僕たちに、皆が聞いてきたので、同じことを答えたら、大爆笑になった。

「なんか、夢の国みたいだな、ぶっはっはは!」

シャズは夢の国ネズミランドを知らなくても、発想的には同じなのか。

「バケモノから魔族になって最後は兎とか、なんの進化だよ」

フロウ、進化って、兎では進化してないよ。

「いや、いや、悪いですよ。
 もしかしたら、魔族と兎の仲良し王国が出来ちゃうかもしれないじゃないですか」

そう言いながらマナイも口を歪めて必死で笑いを堪えてた。

「ソレ止めだろ!
 仲良し王国って!!!
 ヒーヒー!!勘弁してくれ!
 想像したじゃねーか」

「平和な国が出来そう…」

トリシュ、なんて良い人だ。
ロゲルなんて想像して笑い転げてるし。

魔王国から来た者だけがポカンとしていた。
レオハルトの動向も気にしてないのか、終わってるわ。

「いや、貴殿らの思惑は十分理解した。
 即刻私の国から出て行って貰おうかの。
 そして、我が国と戦うなら準備をしなさい。
 こちらとしても、戦いを辞さぬよ」

国王として国の指針として、ダリューンが鷹揚に言葉を発し、魔王国の連中を追い返した。






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