子豚のワルツ

ビーバー父さん

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魔王国の国際会議

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神の災禍を発動して、レオハルト達の国を退けた事は、国外にまでその日のうちに駆け抜けた。

その魔王国を全面的に支援する僕達の意味を、フロウ達が暗部を使って発信した事で、理解を示してくれた国が多かった。

だが、中にはレオハルト側につく国も、中立として関わりを持たないと決めた国もあった。

魔王を封印と考えないなら、外交という手段がある。

生贄として魔王を封印するという国に対しては、あの事実を知ってまでまだ偶像化したように考えるのかと喉の奥に、この先なにがあっても払拭出来ない嫌な塊を残した。

「私達は、順序も何もかもをすっ飛ばして、
 建国しようとしたのだから、
 不審にも、嫌悪感も全て受け止めて流さなければいけない。
 先を見据えるなら、今の表明に対する批判はありがたく受け止めておけ。」

トルクがマナイに皆んなの表情を読んでアドバイスをした。

あの前哨戦から二ヶ月程が経ち、魔王国を本格的に外交相手と決めて、訪問してくる国が増えた。

魔王自身も外見は幼いけど、中身は何度も生をやり直した年寄りだから、多少は上手くやれても、世間知らずなのは変わらないから、エディオンが早く目覚めて隣に立って欲しいと周りも強く思っていた。

そう、エディオンは目を覚さない。

まだ、生きてはいるが、目を覚さなかった。









「レオハルトが、また動いているようだが、
 根回しは出来ているか?」

「はい、トルク兄上」

マナイが魔王国の宰相らしく答えた。

既に先進国で魔王国の建国に賛同し、外交を始めている国にはレオハルトの動向をすべて共有していた。

中には、レオハルトを公的に裁判にかけて決着をつけるべきと提言して来る国もあった。

確かにその通りだと思っていても、今の国際法ではレオハルトを裁くには今一つ足りなかった。
その為には、魔王国をしっかりと国として地盤を固めて、国際法を改定するべく動くことだった。

「マナイ、立派になった。
 国際法は各国の首脳陣を集めてからではないとどうにもならない
 その国際会議を開く準備ができているなら、もうどこへ出ても舐められない立派な宰相だ」

トルクがきいた根回しは、国際会議の開催と、魔王国に対する残虐非道な事を取り締まるための法律を制定するためだった。

「一週間後にこの魔王国で、開催いたします。」

「うむ、こちらはフロウが監視を、マロが結界を、護衛をシュリが務める。
 国の代表として父ダリューン国王、私が宰相として参加する。
 そして咲季を魔王エスラの介添えとして置くことになった。」

「はい、咲季ちゃんなら適任だと思います。」

僕に何が出来るか分からないけど、今はエディオンがいない。
もしかしたら今目覚めてくれるかもしれないけど、居ないという前提で動かなければいけなかった。

「エスラにとって、一番いい落としどころをお願いします。」

全てが受け入れられるわけではない、と言うのは十分理解できた。
それでも、彼ら魔族が安心して暮らせる国を、認めさせないといけない。

「ライハンの問題も併せて定義する。
 だから、これで一旦は、魔王の問題も解決するだろう」

トルクがこの国際会議で、目下の問題と思われる事を全てこの国際会議で解決しようという力技だった。

そりゃ僕も早く落ち着いて欲しいけどね。

「じゃないと、咲季が魔王国に行ったきりになって、私の隣で寝ないのだ。
 いい加減に私の咲季を返して欲しいものだ」

そう、僕はエディオンが目覚めない事でエスラが不安になったり、苦しい思いをしてほしくなくてしばらく傍にいる事を許可してもらっていた。
しばらくが、二カ月経ち、三カ月経ちしてとうとう、半年は過ぎていた。

「トルク、ごめん
 でもエスラの気持ちを考えると、事が解決してもエディオンが目覚めなければ…」

「咲季、私が暴れそうなくらいなのを放っておいても?」

それは、ずるいよ。

「トルク、僕だって、その、寂しいよ?」

あざといけど、御機嫌を直してもらわないといけないから、上目遣いでトルクを見つめた。

「分かった。
 会議開催までは私もこちらで準備をする。
 今夜から、咲季は私の部屋で寝るように、エスラ様にはご承諾頂いておいてくれ」

「へ?僕、エスラとは一緒の部屋じゃないよ?
 エディオンの部屋でエスラは毎日寝てるし」

その会話を聞いてたトリシュが分かってやれよって、顔を覆った。






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