子豚のワルツ

ビーバー父さん

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前哨戦

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「転移の魔法陣作ったから、そっちから行けるから!!
 暗部と軍隊をこっちに残して、僕たちが出るよ!」


マロが転移魔法で、ダリューン以外の王族を転送させた。
上位貴族は王族に連なる者たちなので、当然出陣した。

半獣化した状態で、彼の国エナグラに出ると、既に戦いは始まっていて、レオハルトが陣営にいるのが見えた。

「マロ、索敵して。
 うちのとこ以外は全部敵。
 マーカー付けて映像に出すから、合理的にやっちゃって。
 数じゃないって分からせてやる。」

フロウがバラけてる連中はなるべく一つに集める様に指示を出すと、マロが空気中に小さな機雷の様な物を破裂させて追い込んだ。

追い込み漁、か?

ひと所に集まると、上位貴族達が雑兵を討ち、それでも逃げて散ったのをまた、追い込むを繰り返した。

そして軍隊と言える騎士達が出ると、シャズにトルク、シュリが全面に出た。
ここからは、武力と魔法の合体した戦いが始まったが、大抵の魔法は魔法陣が出るので、小さな体を利用した僕が隙間を駆けて、魔法陣を壊して行った。

これだけは、うちの子達に遺伝しなかったんだよね。

魔法陣を壊せば、物理攻撃がメインになる。
そうなると、シュリが有利だった。
皆んなから、脳筋と呼ばれるだけあって、力だけで押していく。
剣を奮えば一振りで立っている者は全て、首から上がなくなっていた。
決して弱くない魔力を持っているのに、シュリは使いたがらない。
何故ここまで頑ななのかは、フロウとマロを守ると決めているらしいから。




あっという間に、レオハルトがいる陣営に辿り着くと、護衛騎士数人を従えたレオハルトと僕達六人になった。

「よう、やっぱお前らつえぇーなぁ
 でもな、魔王の首と引き換えに戦えるの?」

騎士達がその後ろを見せる。

エディオンが腹を貫かれて、木の幹にその槍で磔られていた。

「エディオン!!」

皆が声を揃えて、そして騎士の手には黒い角を持ち、そのまま吊り下げられた魔王エスラが苦しげな顔を見せていた。

「貴様、そこまで腐ったか!」

「何言ってんの。
 俺だって神に選ばれし者よ?
 魔王が対極の者なんだから、退治しちゃうでしょ?」

「そうか、スキルに!」

僕は前に見たレオハルトのステータスに、神に選ばれし者と言うのがあったのを思い出した。

「咲季、あいつはそんなスキルを持っていたのか?」

「持っているのは見たけど、どんなものか知らなかった。
 魔王を、どうにか出来る力なのかも。」

どうにかって何だ、どうにかって!

「レオハルト、エスラを放せ。
 魔王システムをお前知ってたんだな?」

トルクが静かにレオハルトを睨み据えた。

「咲季を渡すなら、
 来るならコイツを解放してやるよ
 トルク、お前の子はもういるだろ?
 次は俺だ。
 そういう約束だろ?
 さあ、どうする?」

「?は?
 何それ?」

また、こんな言葉に騙されたりはしない。

「咲季!」

「大丈夫、もしそれが本当でも
 僕はレオハルトの所へなんか行かないし、
 エスラを助ける事しか今は考えない」

エディオンの状態も気になるけど、エスラを助けるのが先だ。

「母様、コイツだよね?
 初めまして、息子のフロウです。
 俺ね、審議ってスキルがあってさ、
 アンタの言ってる事、やってる事を更に見極める真偽ってのもあるんだわ。
 でさ、アンタの言ってる事に真偽をかけるなら、嘘だからどうでもいい。
 アンタに、魔王を封印する力も無いしな。
 神に選ばれし者って、その容姿?
 それと捕食者を合わせて使うと、
 キラッキラのエフェクトが出るんだろ?
 そんで、引っ掛けた相手を片っ端から食ってくんだよな?」

え、キラッキラなのはエフェクトだったの?

「記憶を見せてもらいましたけど、
 ハリボテの王子様ですね。
 母様を騙して楽しかったみたいですけど、
 流石に、やり過ぎでしたね。
 シュリ、スキルでも何でも使って、さっさと終わらせて。」

「マロ、フロウに守ってもらって。
 一気に終わらすから。」

剣を構えると、レオハルトに来いと煽った。

「何だ、コイツら
 咲季の子供か? 
 こんなにデカくなってるなんておかしくないか?」

レオハルトが疑問に思うのも尤もだ。
半年で大人の体になり、精神力までも成長してた。

「神の子もまた、神の子だからですよ
 おっさん
 俺たちは皆神の子だ。
 だから、勝ち目は無い。
 でも、アンタは生かしておくと、碌なことは無いだろうしな。
 大体、本当の年は600歳超えてんじゃん。
 じーさん。
 神に選ばれし者は、容姿をキープできるみたいだしね。」

フロウが真偽で分かった事を暴露した。

「神の災禍」

シュリのスキルが発動した。

渦を巻く様な空気が、レオハルトを捕らえた。

押し流す様にレオハルトと騎士達の周りにだけ、土石流が発生した。
そして、その土石流は激しく大きくなり、リサマールまでたどり着き、その王都や城下を流し去った。
国としては致命的な災禍を喰らっていた。



ただ、フロウの監視で見る限り、レオハルトは死んでいなかった。

「チッ!
 腐っても世界の統治者か
 まぁ、やりようはあるけどね。」
 




倒れているエスラと、槍で気に磔られているエディオンを急いで、治癒魔法をかけるとエスラはすぐ目を覚ましたが、エディオンはダメージが深かったようで、目を覚さなかった。

「エディオン!!
 目を開けて!」

取り縋って泣くエスラを抱きしめて、傷は治ってるし、きっと目を開けるから待とう、と宥めた。

まずは国を作り、外交対策を急いで確立することを優先させた。

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