子豚のワルツ

ビーバー父さん

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無意識と意識

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「ファング、ワイスさんが良いよって言ってくれたから、
 このお屋敷の中を案内してくれる?」

そう言うと僕の手を頭に乗せるように下から入って来た。
ベッドから向きを変えて足をおろすと、何だか力がうまく入らなかった。

ずっと歩いてなかったから、なんだかふわふわした感じで、体をうまく支えられない。
よろけて転びそうになった所を、体を張ってファングが支えてくれた。

「ありがとうファング。
 重かったでしょ?
 ゆっくり歩くようにするね。」

立ち上がってみると、ファングは本当に大きくて、僕の肩辺りに頭が来るくらいだった。

壁とファングに挟まれて廊下を進むと、大きな扉の前に出たみたいだった。
その扉を開けて良いのかためらっていると、ファングが僕の手を扉に導いてくれた。

「え、開けてもいいのかな?」

まるで良いと言ってるかのように、手の甲に鼻先を押し付けて、一緒に扉を開いた。

「こんにちはー
 あのー」

中に誰かいるかもしれないから声をかけながらおずおずと入ると、誰かが動いた気配がした。

「咲季ちゃん!!」

「どなたですか?」

「シャズだよ、一番上のお兄様だよ」

手を取ってくれて、椅子へ移動させてくれた。

「お仕事の邪魔をしてしまいましたか?」

「大丈夫だよ、代わりにやってくれる人が来たから」

心なしかシャズさんは嬉し気だった。

「あの、お腹の子の為にも、ちゃんとしようと思いまして
 泣いてももう、何も変わらないことが分かったので、
 それなら、生まれてくる子を愛して家族になりたいって考えたら、
 僕がちゃんとしないと、ちゃんと産んであげられないなぁって」

「咲季ちゃん、君って子は…
 君がトルクの伴侶になってくれて、本当に良かった」

それは、正直分からない。

「トルク様は分からないけど、このファングがいてくれるから、安心します。
 ファングは賢いですね。
 ここまで連れて来てくれました。
 ふふ、なんだか安心する匂いで懐かしいんです。
 動物を飼ったことはないんですけどね。
 何でかな?」

「ぶっ!!
 えと、その子、ファングって名前なの?」

「えぇ、ワイスさんも良いって言ってくださったので。
 ちゃんとした名前があるなら、教えて下さい。」

「いや、いや、ファングでいいよ、
 どんな意味なの?」

「牙って意味でカッコいいなぁって」

「そうか、うん、いい名だ。」

「それで、ワイスさんにもお願いしたんですけど、このお腹の子を産んであげるためにも、ちゃんと勉強したくて。」

「そうか、トルクには話した?」

頭を横に振った。

「なんで?」

「本当に僕を好きで伴侶にしたのか、
 神様の何かがあるから、そうしたのかもって思うと、怖くて。
 愛されない子を産むのかもしれないし。
 でも、それなら、僕だけの子で家族になれます!
 きっと、可愛いし一杯愛してあげるんです!」

「トルクはそんな奴じゃないよ!
 って、あれ?
 ねぇ、いつから耳聞こえてたの?」

「あれ、ほんとだ
 ワイスさんが来た時は聞こえてた。
 ん、その前から?」

頭を下げて傾げて、どうしてだっけ?と考えてみた。

「あー、そうだ
 この子の声がきけたらなぁって。
 心の声でも聞けないかなーって思ってたんです。
 話せたら、いっぱい好きって伝えてあげられるのにって」

シャズはトルクを見ると、サラサラと何かを書いて渡して来た。

ー咲季のスキルに意思疎通と解読がある、それが働いたかもしれないー、と。

咲季の意思で聞きたいと思い、見たいと思えば見えるようになるのかもしれないと、シャズもトルクも希望を持った。


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