子豚のワルツ

ビーバー父さん

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招かざる客

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城門の辺りで騒ぎになっていた。

「さき!さき!
 迎えにきた!」

数人の騎士を引き連れて乗り込んで来たのだった。
 
このダイニングまで聞こえてきた。

「咲季ちゃん、あのな、もう、200年ほど前から、このトルクの事で喧嘩しとるのよ
 あそこの国と。
 アウリッツの奴めが腑抜けでの
 穏健派なのは構わぬが、その采配をうちのトルクにさせてんの。
 ワシは、留学はさせたが、人質にする為にトルクを行かせた訳じゃないからの。」

通りで、他国の人が宰相をしていたんだ。

「でも、トルクならいくらでも、帰国する事が出来たのでは?」

「咲季、ここの弟達の母がレオハルトの弟なのだ」

「どう言う事?」

「私が宰相を勤める事でこの子達の母親と叔父の罪を減刑してもらったんだ。」

「隣国に婿養子って、」

「本来はうちに来る予定ではなかったのだが、災害があってな。
 そこから逃れてきたのがレオハルトの弟だった。
 ほんのいっとき、身を寄せただけのはずじゃった。
 ところが、愚弟が手を出しての、その結果この三つ子を授かったのよ。
 子供に罪はない。
 だから、ワシの未子として公表したのじゃ。」

「アウリッツ様だけの考えではなく、先々代が一番関わっているんだ。
 強国に拘り、子を欲しがる。
 育ってくれば、今度はこの三つ子たちを寄越せと言ってきた。
 それが出来ないなら、レオハルトの弟は隣国へやると。
 子供らを道具にする訳にはいかない、だから、彼は隣国へ行くしかなかったんだ。
 ただの嫌がらせだ。
 だから、咲季がレオハルトの伴侶になった時にあの方は喜んだのさ。
 そして、レオハルトも、自分は遊びながら、咲季を手に入れる為に、だ。」

「じゃ、あ、アサルトの話題はわざと?僕に聞かせたの?
 疑問を持つように」

「そうだ。
 私は、咲季をあのまま飼い殺しなんかさせたくなかった!」

あの日、不自然とまではいかないけど、元カレの話題が出た。
微睡んでた僕に、トルクみたいな優秀な宰相が気づかない訳ないじゃん。

そして、態と僕とレオハルトを離すような仕事を入れて、警護にキリアスを付けた。

そっか、そっか。

「えっと、どこまでが、トルクの気持ちだったの?
 僕を利用する為に、言祝ぎの誓いなんかしちゃダメじゃん
 だからトアがあんなに驚いたんだね。
 いつから、この計画は動いてたのかな?
 驚くって事は、大分前からだよね。
 や、やだなぁ、また、やっちゃった?
 すぐ、人を信用しちゃうんだ、僕。」

「お兄様は悪くない!
 私たちを守る為にしてくれたんだ!
 だから、伴侶になっても、いいから、お兄様は自由にしてあげて」

トアが、涙ながらに訴えて来た。
僕が縛り付けたのかな?

「ね、とる、くさま、
 僕が、貴方を、貴方のために、彼らを殺せば、自由になって、好きな事が、できる?」

「違う、咲季!
 私は、本当に、愛して」
「お兄様!!
 だめ!もう、自由になれるんですから!!」

トルクに全身で抱きつくトアの姿を見て、レオハルトの時もこんな事あったな、って思った。

「咲季様、お願いです!
 お兄様を自由にさせてください!
 私たちが、本当の伴侶になるはずだったんです!!」

あ、そか。

「嘘をつくな、トア!!
 私が愛してるのは咲季、ただ一人だけだ!」

「咲季ちゃん、トルクを信じてやってくれ。
 頼む!
 このトアは愚弟にそっくりな性格をしておる、誰かを踏み台にして貶めることも簡単にする!
 ワシらがちゃんと、罰を下すから、トルクの事を信じてやってくれ!!」

「咲季、信じて!
 私は、君を愛してるんだ!」

トアはトルクに抱きつき、他の弟達は泣いて何も言わない。

何が真実?

トアの罪も家族だからと甘くなるの?
僕は?
僕の家族は?

「もう、一人は嫌だって言ったのに
 トルク様、おバカさんですね。」

泣きすぎたからなのか、涙が血の色をしていた。

「咲季!咲季!
 やめて、咲季、君はいつも犠牲になってる!」

「でも、それが貴方達ののぞみでしょう?
 おかしいよね、最後まで利用してくれて良かったのに」

「なら、すぐにアイツらを殺して来てよ!!
 豚なら、子供だってできる訳ない!」

「トア!!」

トルクがその体を振り解いて、殴りつけた。

「私の咲季だ、家族だからと甘くし過ぎた。
 お前は、」
「ダメだよ、トルク様
 貴方が傷つくだけです。
 僕が行きます。」

レオハルトと争っている二人の元へ歩き出した。
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