子豚のワルツ

ビーバー父さん

文字の大きさ
上 下
28 / 122

白豹

しおりを挟む


森へついて二日が経った。
まだ、たった二日だ。

たくさんの木の実や果物が、なぜかすぐ見つかった。
そう言えば、初めて森で目覚めた日も、美味しい実があったっけ。

「ふふ、すごく美味しい。
 レオはちゃんと、アサルト様とうまくやってるかな?
 僕が浮気相手とか、笑っちゃう
 本命じゃなかったなんてさ。
 即位の時に伴侶の誓いしたんだけどなぁ
 負けちゃったよ。」
  
声に出してみると、不思議と整理がついた。
先にお付き合いしてる人がいたのに、知らずに僕が本命とか思ってたから、アサルト様には悪いことしちゃったなぁ。

神様、勝手に頼って、勝手に怒ってごめんなさい。
これも運命だ。
いつか、僕が先で僕だけを見てくれる人がいたらいいなぁ。

うん、僕が悩んでも、何も変わらない。
愛された事を思い出にしよう、そして、明日は別な国に行こう。
 人に紛れて生きていたら、きっと余計な事は考えなくて済むさ、と言い聞かせた。 

赤ちゃんがいたら、違ったかなぁ。
称号も貰ったのに。
ん、そうだ、称号!


種族 特殊属豚科人〔成体〕
称号 獅子王の伴侶
   世界を穿つ者
   王母
   比翼連理 

Lv.  102

HP  15000
MP  29000
スキル 暴食 愛玩 蹄の渾身一撃 痛覚耐性 衝撃耐性 水耐性 嗅覚 言語理解 苦痛耐性、心理耐性 格闘 怒りの鉄槌 風牙 愛を貫く者〔愛に殉ずる者〕意思疎通 解読
特殊スキル 羽化 ゆびきりげんまん 擬態


まだある。
擬態?
こんなスキル聞いてないなぁ。
いつもなら、アナウンスされるのに。
擬態って事は、どんな姿にもなれるって事かな?
じゃあ、狼とかどうだろう?

いつもの人化とは違って皮一枚被ったような感じだった。

うーん、鏡ないけど豚が狼の着ぐるみ着たみたいな感触だ。

でも皆んな獣人だから、匂いでバレちゃうかな?

人化した時に人化で取れたスキルがあるように、擬態すれば擬態したスキルが取れるのだろうか?と。
とにかく、狼の動きを練習してみた。

残念ながら、何も起きなかった。
着ぐるみを脱ぐ様に擬態を解いた。

うん、なんか食べよう。

森の実を感謝して、また食べた。
あ、太っちゃう。

うとうとと微睡んで、最初の時の様に木にもたれ、足を投げ出して座り込んで寝ていた。
だってこの姿勢が楽なんだもん。
本当なら仰向けになって寝たいけど、それは難しいから諦めた結果がこれだったんだ。

今は疲れた頭と心を休ませる為に、眠ろうと決めた。










あったかい。
ふわふわした、上質なホカペのカバーみたい。
お母さんから、おこたやホカペで寝ると風邪をひくってよく言われたなぁ。
起きた時、びっしょり汗かいてたりしてさ。

揺れも気持ちいい。

ん、揺れ?
え!?
ハッとして、目が覚めた。

ふかふかの白銀の毛皮に埋もれる様に包まれていた。
いい匂いだ。

「起きた?さきちゃん」

「えー、この声ってトルク様?」

「そうだよ。 
 私ね、あの国の宰相も辞めて、さきちゃんを幸せにする為に追いかけてきたんだ。」

「トルク様!ダメですよ!
 僕はどこか遠い国で、人か魔獣として生きて行きますから、帰ってレオハルトを助けてあげて下さい!」

「もう、無理
 さきちゃんを泣かせたから。」

「そんな、大した事ないですよ、豚なんだし。
 ね?トルク様、帰ってあげて」

「私はさきちゃんを幸せにする以外、考えてません!
 もう貴族でもない私は、いらない?」

ずるい。

「むー、そんな訳ないでしょ!」

「なら良いじゃない」

「どこに向かってるんですか?」

「二人だけで暮らせるとこ」

「なんで、なんで?
 僕なんか」

「さきちゃんを好きだからさ」

涙が出た。
本当は一人で心細かったから。

「うっ、えっ、えっ」

トルクは立ち止まると僕を背中から下ろして、人化して抱きしめてくれた。

「涙を止めるのが、私の役目になると良いな」

「トルク様、」

「トルク、ね
 もう、様はいらない。
 さきちゃんと同じただの人だからね」

「と、るく?」

鼻をズビズビしながら呼んでみた。

「はい」

レオハルトと同じくらい高い背を屈めて、僕の頬にキスをした。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

巨人族の1/3の花嫁〜王様を一妃様と二妃様と転生小人族の僕の三妃で幸せにします〜〈完結〉

クリム
BL
一回めは処刑された老臣、二回めは鬼教官、三回めは教師、そして四回めの転生は異世界で小人族ですか。身長一メート僕タークは、御信託で巨人族にお嫁入りです。王様はどう見ても三メートルはあります。妖精族のソニン様、獣人族のロキと一緒に王様になりたてのガリウス様を幸せにします。まず、王様のイチモツ、入りますかね? 三人分の前世の記憶と、豆知識、そして貪欲な知識欲を満たすため、異世界王宮改革をしていく三妃タークの物語。 ※はご高覧注意です。 『小説家になろう』にも同時連載。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった

佐伯亜美
BL
 この世界は獣人と人間が共生している。  それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。  その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。  その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。 「なんで……嘘つくんですか?」  今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。

婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》

クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。 そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。 アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。 その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。 サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。 一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。 R18は多分なるからつけました。 2020年10月18日、題名を変更しました。 『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。 前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

処理中です...