子豚のワルツ

ビーバー父さん

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即位の条件

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まだまだ、レオハルトとの生活は慣れない。
溺愛されてるのは子豚の時と同じで、執務室まで連れて行かれるんだ。

しかも、抱っこで。

子豚になってる時ならそれも良いんだけど、人化してる姿で抱っこをしたがるから困る。
他の人の視線も気になるし、反対派の貴族たちやシェライラに加担した連中は処刑されたとはいえ、第二、第三のシェライラが出てこないとは限らないのに。
こんな風に目立って、神経を逆なでしたくないって言っても、レオハルトは、それで行動に移してくれるなら助かるって言うし。

レオハルトは大胆すぎて、僕はハラハラしどうしだった。






「さきちゃん、今日も可愛いねぇ
 私も子豚さんの時でも、幼児の時でも、今の大人でも綺麗で大好きですよ」

トルクが仕事そっちのけで、僕を構うからレオハルトが不機嫌になって困るんだ。

「トルクさま、僕に構うとレオハルトの機嫌が悪くなるので…」

「いーのいーの、殿下は勝手にお仕事してれば
 私とお散歩行きましょうか?
 こんな空気の悪いところにいると、さきちゃんの具合が悪くなったらたいへんですからね」

ダメキャラにシフトチェンジしてる。

「トルク、遊んでないで仕事しろ
 それに、すぐ即位式の準備にかからないとダメだろ」

「はぁ~、そうでしたね」

がっくりと肩を落として宰相は、宰相たる仕事を始めた。

「即位式ってレオハルトが国王になるの?」

「そうだ、伴侶を持つことが即位の条件で、
 今まで即位する気も、伴侶を持つ気もなかったから
 どうでも良かったんだが…
 さきをちゃんと守る為にも、即位しておく」

シェライラみたいなのはレオハルトが好きだったのか、即位することで手に入る国王の伴侶と言う地位だったのか今ではもう分からないけど。
出来れば、二度とあんな思いはしたくないな。

「殿下、即位しても世継ぎ問題がありますよ。
 すぐに側室を斡旋してきますが、どうなさいますか?」

「それを聞くか、お前」

「答えは分かり切ってますが、一応」

「なら聞くな」

「はいはい」

二人の会話の側室が気になって、伴侶以外に愛人?お妾さん?を持つのかと聞いてみた。

「殿下は持つ気はないのですが、貴族たちは少しでも自分の地位を強固なものにしようと、自分の子息をあてがいたいのですよ。
 その中でうまく世継ぎが出来れば、世継ぎの親族として高い地位も望めますから」

「え?伴侶がいるなら必要ないじゃん」

「昔、と言うか先々代までは側室ありきの王室でした。
 この国古い歴史の中で、世襲制ではないにしろ、強い血を残すために近親婚が繰り返され、まともな子が育たなくなったんです。
 今の国王になるまでそれを回避するための手段として、能力の高い者と番、その子を残して立て直したのです。
 それがこの国の根底にまだまだ、残っています。
 たかだか500年程前の話ですから、皆の記憶にも新しいのですよ。」

500年が記憶に新しいって…、ステータスには年齢は出なかったけど、皆長寿って事なんだろうか?

「レオハルトは何歳?」

「私は、まだ230歳だ」

それって、閣下みたいなんだけど。

「私は、241歳ですよ、さきちゃん
 大人の魅力があります」

「えっと寿命って?」

「大体800歳くらいか」

じゃぁ、まだその先々代が生きてるって事?

「国王様は側室は迎えなかったの?」

「父上は、母上だけを愛されていて、私も弟も可愛がられた。
 側室同士の争いの中で育った父上は、それが嫌で今でも母上だけを大事にされている」

「え。弟居たの?」

「あぁ、隣国へ婿養子に行ったぞ」

「まーじーか。
 そう言う家族構成くらい教えてくれよ
 僕だって、仲良くしなきゃって思うだろ!」

「さきは、ちゃんと周りの事も考えられる
 だから、言わなくても大丈夫だと思っていた。」

「そういう問題じゃないよ
 家族だろ?
 僕にとっても、家族になるんじゃんか」

そう言ったら、二人ともビックリしたような顔をした。

「な、なんだよ」

「さき、私はさきを選んで、さきに選んでもらえて良かった」

「殿下、本当にいい子ですね」

トルクはちょっとホロッとしてた。
嫁姑問題とかあるんかな?

「この国は種族や地位でしかものを見ない者が多いのです。
 まして、家族という単位を蔑ろにする貴族が殆どで、
 それを嘆いているのが今の国王です。」

「私も、そういった争いが嫌で伴侶を決めなかった
 だが、さきを見つけて私の中で感情が動いた。」

僕を見てレオハルトが笑う。

「家族って、色んなことを乗り越えていくための大事な人じゃん
 本当に辛くて、死にたくなるような時に、家族が支えてくれるから生きていけることもあるよ」

そう、僕の両親は優しかった。
優しくて、甘くて、甘えた。
甘えとワガママで太ったと言えばその通りだし、いじめられても仕方無いかもしれないけど、それを許してくれたのも両親だ。

もう、会う事も出来ない両親を思い出して、涙が出た。

「ど、どうしたの、さきちゃん?」

「アンタたち贅沢だ。
 お父さんも、お母さんも、友達なんかいなかったけど、
 それでも僕の世界にいた人には、もう誰も会えないのに
 寿命が長いと、そんなことも鈍感になるのか?!」

「どういう事?
 さきちゃんのご両親は死んじゃったの?」

トルクが聞いてくる。
そう言えば、誰も僕の素性を聞いたりしなかった。
僕も子豚だった時に、会話が成り立たないし、色々ありすぎて後回しになっていた。

「さき、お前のことを話してくれないか?」

僕は、泣きながらコクンと頷いた。


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