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デブから子豚へ
しおりを挟む目が覚めたところは、森の中。
此処が森の中って分かる。
神様に、もう一度生を与えられたけど、勇者候補召喚の巻き込まれたやつで、流行りのざまぁ系のキャラかと思ったけど、そうでもないらしい。
うーん、孫悟空的な猪八戒の位置って言うか、そんなサブキャラだった。
こんな事になるなんて、車に轢かれて普通に死にたかったよ。
デブって虐められて、異世界に来てまで豚とかないわ。
巻き込まれ系ならそれなりにチートな何かがあればよかったのに。
どう見ても、子豚だった。
「おい、デブ!
一人で何倍もスペースとってんじゃねーよ
よくそんな姿で生きていけるよな」
クラスに一人はいる、人気者な奴にイジられたら、周りも同じようにイジり始め、最終的にはイジメに変化していった。
痩せようって思って、運動しようとしても喘息が邪魔をする。
水泳ならと思っても、アレルギーと喘息は切り離せないから鼻水とプールの水で滲出性中耳炎を繰り返していたから、なかなか通えないし、ジムはお金が続かない。
ご飯の量を減らして頑張っても、ある程度減るとそこから頑張れなくて、リバウンドした。
電車で座ってれば、後から乗ってきたおじさんに、「あんたな、狭いだろ肘やら肩やらもっと気を遣えよ!」と。
その時は「太ってるんですみません」と答えた。
でも、最初からデブの隣に来たおじさんが悪く無い?広いとこ行きなよ、とか内心は思ってた。
別な日にそのおじさんが、かなり肩やら体を小さくして座ってて、何で僕に言ったみたいに言わないんだろうとか、結局、言いやすいとか女性や弱いとこにしか言わない奴なんだと理解した。
デブなんていい事何一つないとか思っても、デブを止める魔法もなかった。
イジメられて気持ちいい奴なんていない。
学生の時間なんて、友達とかクラスとか学校だけが自分の世界で、そこに独りイジメられるのは、死にそうなほど辛かった。
自分の意思が弱いから、わかってても出来ない事もあった。
その日は普通にいつもの道、いつもの交差点、いつもの時間帯だった。
「よう!デブち!
何だよ、交差点でもお前がいると狭いなあ」
クラスの一番煩いグループで、オシャレっぽい子達がいる、その中でも読者モデルとか言うのをやってる、山際 瑠偉が絡んできた。
「やめてよ、交差点は危ないから」
背中をバンバン叩く奴もいた。
膝裏を蹴る奴もいた。
「痛い、痛いから!」
「うっせー!
デブなんだから脂肪で感じねーだろ!」
脂肪があっても、痛覚は表面にあるんだよ。
「生物で習ったじゃん
脂肪が」
言いかけた所で、山際が僕のお尻を蹴り飛ばして、勢いで交差点に出てしまった。
そして、その時運悪くダンプが交差点に入ってきたんだ。
僕の運動神経のどこにそんな俊敏性があったのか、咄嗟に山際の腕を掴んでた。
巻き込まれて、巻き込んだ。
そして、ありがちな所で神様から言われたのは、勇者になりそうな強い奴を招び込もうとしたら、それにくっついて僕が来ちゃったんだって。
勇者候補って、山際?
聞いてみたらそうだった。
強い意志をもってるのが条件だとか。
何それ、強い意志じゃなくて非道さじゃないのかよ、と。
巻き込まれて来たけど、僕にも、まあ、なんかあるかもしれないって言われて異世界で生きる事を許された。
許されるってなんだよ、僕は山際に殺されたようなもんじゃないか。
そして、最初に戻るんだ。
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