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6国境

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 カリオスが宣言した通り、山を越えて隣国の国境を超える時にも何も咎められたりも無ければ、身分証などの提示も求められなかった。

「カリオス、これってどうして?」

「その刻印が見る者たちから認識阻害をさせている。
 其方の姿はこの国では平凡な髪色に顔立ちとして見えているし、彼らの中では身分証明書を提出した事になっておる」

 便利だな。

「気づく人はいないの?」

「いや、意識して其方を見たいと思う者や、魔力量が私たちに近い者なら気づくだろうな。
 感覚が誤作動していることに」

 隣を歩くカリオスの姿も認識阻害をされているのだろうか?

「ん? 私も周りからは認識されてないぞ? だからやきもちを妬く必要もない」

 そう言われて、かッと顔が火照るのが分かった。
 
「そ、そんな事、思ってもいませんでした!」

「配偶者なのだから、其方にはその権利がある」

 シラッと配偶者だのやきもちだの言ってるけど、勝手に刻印されたんだった!

「僕、配偶者って認めてませんからね!?」

「可愛いの。
 そうやって元気ならそれでいい。
 あの国の連中はバカしかおらん。
 シャリオのこの愛くるしい顔立ち、それに素晴らしい魔力、そして慈愛、全てに於いてこれほどの人間はおるまい」

「カリオスが僕を配偶者にしたのは、魔力量が豊富だったから?
 それしか価値が無かった?」

 ふと、好きだとか愛してるとかそんな言葉を聞いてなかった事に気づいた。
 そして、カリオスから発せられる僕への言葉が、概ね魔力の話だと言うとこにも違和感を覚えた。

「魔力の話はたまたまだな。
 私は其方がウィノニダから離れてあの土地へ来た時に必死で毒を浄化してる姿を見て、人が起こした災いを全くの他人が責任を取ろうとしてるのを見て惚れた。
 献身的な姿が美しくて見惚れていたら、あの有様よ。
 まさか、こちらから縁を結ぼうとしていた所へ、其方から来てくれるとは思わなんだ」

 あの時かなりの重賞だったのは、時間が経っていたからなのか。

「ご自分で治療くらい出来たのではないですか?」

「神と言えども獣だ。
 獣たちの為に力を使う事は何でも無いが、自らに使うにはかなりの負荷と規制がある。
 それが神々の掟だ」

 そう、か。
 神が自分勝手に力を使えば、世界は滅茶苦茶になるよね。

「聞いていたか? シャリオ。
 私は其方に一目惚れをして、見惚れていたら兵士たちから刺されたのだ」

「え、あ!」

 獣神とかそういうのは別にして、あの山小屋で一緒に過ごした時間は、本当に幸せだった。
 そうか、僕、愛されても良いんだ。

「ふふ、そっか。
 ね、カリオス、手を繋いでも良い?」

 尋ねた僕の腰を思いっきり引き寄せて、こめかみに口づけをしてくれた。
 街中を歩きながら、恥ずかしくて嬉しくて、僕もその太くて力強い腕に支えられるのが幸せだった。

「納得したか?」

「えぇ、まぁ、はい」

 照れ隠しをしてみても、顔は真っ赤でカリオスにはバレてるだろうけど、ちょろい自分がまだどこかで許せなかった。
 
「シャリオ、医術師組合が見えて来たぞ」

「うまく登録できると良いけど……」

 どうか厄介なことになりませんように。

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