84 / 116
天界革命
カップリング
しおりを挟む勤めだして半年も経つと、仕事にも慣れてきて常連客にもこんな表情筋が死んだのをどうにかしたいと思うような奇特な者たちが出始めた。
「ノエちゃん、俺とパートナーになってくれませんか?!」
仲介の申し込みをすっ飛ばして、すごく昔にあったテレビ番組の告白タイムの様な輩が増えた。
「ルール違反はだめですよ。
俺なんか不器用なだけで、楽しくも無いですし。
マスターがすごく盛って話しちゃっただけですからね。」
口角を上げて、所謂微笑みに近い形を取った。
多分、感情は無いスマイル。
「だから、俺といて楽しくして欲しいんです!
絶対笑わせてみせますから!」
磨いていたグラスを置いて、少しだけ考えるようなフリをしてから、気持ちは嬉しいけどごめんなさいって毎回答えていた。
最近はこれが恒例行事になってしまっていて、開店してすぐの作業になってしまっていた。
「そこ、ルールは守りなさい
焦ってもノエは落ちてこないからね」
「いつ俺は木の実になったんですかね?」
顎に指を当てて、う~んって言ってみると、それが可愛いだのと騒がれる。
まるで禁忌の実を食べて追放されたエヴァの様だ。
滑稽で笑える。
「これだけ人気なんだから、少しは客寄せパンダになりなさい
まぁ、できれば心も体も任せられる人を見つけられれば一番良いとは思ってるよ」
「ありがとうございます。
人の幸せはそれそれですからね」
マスターが若いくせに、と苦笑いした。
マッチングがある程度揃うと、紹介を兼ねて昼間の時間帯にそれぞれを招待する。
平日は、会社の昼休みの時間帯とかの短い時間だけど、土曜・日曜はお店を数時間早く開けてそのまま営業する感じだ。
うまくカップルになる為の場としてそのまま、バータイムに移行する。
平日の昼休みの時間帯は間違って一般人が入ってもアレなので、表立って看板は出して置かない。
土日は貸し切りの看板でどうにでもなるから、そこは臨機応変に、だ。
誰かが幸せになるのを見てるのは、凄く嬉しいしこちらも幸せな気持ちにさせてくれる。
出来れば、一生連れ添ってもらえればいいんだけど、なかなかそうもいかない。
簡単なマッチングシステムで選んだあと、個別に店で飲んでるときに話を聞いたりして人柄をそこに加えて、やっと紹介してもうまくいかなかったり、それは仕方ない事だけどね。
土曜の昼下がり、お茶をするような時間に数組の紹介をするためにお店を開けた。
マスターは夜のバーの時間よりは早いけど、スタートの時間にはいなくて俺がすべての準備をしていた。
いつも2組とかそんなもんだけど、今日は4組だった。
いつの間にかマスターが入れていた。
前日に、席と名前を作っておいて、あとはご自由にって状態。
仲介はするけど、そのあとは自己責任だから。
お金取ってるようなら別だけど、お茶代だけだしね。
でも、身分証はちゃんと提出してもらうのは、変なことに使われたら困るからだけど、紹介する以上はある程度の事を知っておかないと信用問題に関わるからだ。
「では、お名前の席にお座りください。
お席にお相手のプロフィールがあります。
こちらにいただいてる情報を簡単にまとめたものです。
それ以外は、ご自分の口で、または相手の口からきいて下さい。
ただし、他のお相手を気に入ったとしても、この場でお声がけはご遠慮ください。
店を出てからお願いします。
個人情報は了解を得てる部分だけですので、お話合いの上公開出来る・出来ないをご本人で決めてください。
もし、不快な思いや、言い出しにくいことなどがありましたら、事前にお知らせしてるツールでお声がけください。」
事前に渡してるツールは、みんなそれぞれ違う。
目の前でソレとわかるツールを使われたらお互い気分も良くないだろうから。
例えば、使ってる食器を落とすや、追加注文など、俺が側に行っても支障のない形で個別に伝えてある。
トラブルを防ぐためにも、だ。
なるべく穏便に、それがダメなら手加減はしない。
だからこその身分証明書だ。
さすがに俺一人で4組かと思うとかなり気が重くて、マスターを呼び出すべく何度もスマホで呼び出しを続けていた。
心配は他所に一応一見穏やかに始まった。
それぞれで話をし始め、自己紹介をし合って、そのころのタイミングを見計らって飲み物を提供する。
当然アルコールは抜きで、だ。
とにかく、それぞれの会話を聞き耳立てながら様子をうかがうなんて、気疲れして仕方ない。
申し訳ないけど、月一回でも多いわ、これ。
一時間ほどで、マスターが助けに来てくれた。
「ますたぁ~、さすがに無理です。
4組は多すぎます!」
「え、ノエの半泣き初めて見た…」
え!そこ!!?
マスターが言った瞬間、一瞬でシーンとなった。
そして、見るのも怖いけど一斉に視線が向けられてた。
こう、ギギギーって音がするような感じで振り向くと、たった4組されど4組の8人から色々な声が上がった。
どう聞いても罵声なものから、悲鳴のような奇声までが小さい店の中で上がった。
「綺麗なお人形さんが、人間になった感じ
いつもそんな風にしてればいいのに」
「え、や、」
真っ赤になっていたと思う。
ウリエルと別れてから、感情は捨ててきたのにこんなカップルの熱に中てられて神経の回路が間違ってしまったんだ。
1
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中
きよひ
BL
ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。
カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。
家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。
そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。
この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。
※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳)
※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。
※同性婚が認められている世界観です。
Restartー僕は異世界で人生をやり直すー
エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。
生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。
それでも唯々諾々と家のために従った。
そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。
父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。
ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。
僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。
不定期更新です。
以前少し投稿したものを設定変更しました。
ジャンルを恋愛からBLに変更しました。
また後で変更とかあるかも。
不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【魔法学園編 突入☆】
はぴねこ
BL
魔法学園編突入! 学園モノは読みたいけど、そこに辿り着くまでの長い話を読むのは大変という方は、魔法学園編の000話をお読みください。これまでのあらすじをまとめてあります。
美幼児&美幼児(ブロマンス期)からの美青年×美青年(BL期)への成長を辿る長編BLです。
金髪碧眼美幼児のリヒトの前世は、隠れゲイでBL好きのおじさんだった。
享年52歳までプレイしていた乙女ゲーム『星鏡のレイラ』の攻略対象であるリヒトに転生したため、彼は推しだった不憫な攻略対象:カルロを不運な運命から救い、幸せにすることに全振りする。
見た目は美しい王子のリヒトだが、中身は52歳で、両親も乳母も護衛騎士もみんな年下。
気軽に話せるのは年上の帝国の皇帝や魔塔主だけ。
幼い推しへの高まる父性でカルロを溺愛しつつ、頑張る若者たち(両親etc)を温かく見守りながら、リヒトはヒロインとカルロが結ばれるように奮闘する!
リヒト… エトワール王国の第一王子。カルロへの父性が暴走気味。
カルロ… リヒトの従者。リヒトは神様で唯一の居場所。リヒトへの想いが暴走気味。
魔塔主… 一人で国を滅ぼせるほどの魔法が使える自由人。ある意味厄災。リヒトを研究対象としている。
オーロ皇帝… 大帝国の皇帝。エトワールの悍ましい慣習を嫌っていたが、リヒトの利発さに興味を持つ。
ナタリア… 乙女ゲーム『星鏡のレイラ』のヒロイン。オーロ皇帝の孫娘。カルロとは恋のライバル。
【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される
ゆう
BL
アーデン伯爵家に双子として生まれてきたカインとテイト。
瓜二つの2人だが、テイトはアーデン伯爵家の欠陥品と呼ばれていた。その訳は、テイトには生まれつき右腕がなかったから。
国教で体の障害は前世の行いが悪かった罰だと信じられているため、テイトに対する人々の風当たりは強く、次第にやさぐれていき・・・
もう全てがどうでもいい、そう思って生きていた頃、年下の公爵が現れなぜか溺愛されて・・・?
※設定はふわふわです
※差別的なシーンがあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる