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天界革命

カップリング

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勤めだして半年も経つと、仕事にも慣れてきて常連客にもこんな表情筋が死んだのをどうにかしたいと思うような奇特な者たちが出始めた。



「ノエちゃん、俺とパートナーになってくれませんか?!」

仲介の申し込みをすっ飛ばして、すごく昔にあったテレビ番組の告白タイムの様な輩が増えた。

「ルール違反はだめですよ。
 俺なんか不器用なだけで、楽しくも無いですし。
 マスターがすごく盛って話しちゃっただけですからね。」

口角を上げて、所謂微笑みに近い形を取った。
多分、感情は無いスマイル。

「だから、俺といて楽しくして欲しいんです!
 絶対笑わせてみせますから!」

磨いていたグラスを置いて、少しだけ考えるようなフリをしてから、気持ちは嬉しいけどごめんなさいって毎回答えていた。

最近はこれが恒例行事になってしまっていて、開店してすぐの作業になってしまっていた。

「そこ、ルールは守りなさい
 焦ってもノエは落ちてこないからね」

「いつ俺は木の実になったんですかね?」

顎に指を当てて、う~んって言ってみると、それが可愛いだのと騒がれる。
まるで禁忌の実を食べて追放されたエヴァの様だ。
滑稽で笑える。

「これだけ人気なんだから、少しは客寄せパンダになりなさい 
 まぁ、できれば心も体も任せられる人を見つけられれば一番良いとは思ってるよ」

「ありがとうございます。
 人の幸せはそれそれですからね」

マスターが若いくせに、と苦笑いした。





マッチングがある程度揃うと、紹介を兼ねて昼間の時間帯にそれぞれを招待する。
平日は、会社の昼休みの時間帯とかの短い時間だけど、土曜・日曜はお店を数時間早く開けてそのまま営業する感じだ。

うまくカップルになる為の場としてそのまま、バータイムに移行する。

平日の昼休みの時間帯は間違って一般人が入ってもアレなので、表立って看板は出して置かない。
土日は貸し切りの看板でどうにでもなるから、そこは臨機応変に、だ。
誰かが幸せになるのを見てるのは、凄く嬉しいしこちらも幸せな気持ちにさせてくれる。
出来れば、一生連れ添ってもらえればいいんだけど、なかなかそうもいかない。
簡単なマッチングシステムで選んだあと、個別に店で飲んでるときに話を聞いたりして人柄をそこに加えて、やっと紹介してもうまくいかなかったり、それは仕方ない事だけどね。



土曜の昼下がり、お茶をするような時間に数組の紹介をするためにお店を開けた。
マスターは夜のバーの時間よりは早いけど、スタートの時間にはいなくて俺がすべての準備をしていた。
いつも2組とかそんなもんだけど、今日は4組だった。
いつの間にかマスターが入れていた。

前日に、席と名前を作っておいて、あとはご自由にって状態。

仲介はするけど、そのあとは自己責任だから。
お金取ってるようなら別だけど、お茶代だけだしね。
でも、身分証はちゃんと提出してもらうのは、変なことに使われたら困るからだけど、紹介する以上はある程度の事を知っておかないと信用問題に関わるからだ。



「では、お名前の席にお座りください。
 お席にお相手のプロフィールがあります。
 こちらにいただいてる情報を簡単にまとめたものです。
 それ以外は、ご自分の口で、または相手の口からきいて下さい。
 ただし、他のお相手を気に入ったとしても、この場でお声がけはご遠慮ください。
 店を出てからお願いします。
 個人情報は了解を得てる部分だけですので、お話合いの上公開出来る・出来ないをご本人で決めてください。
 もし、不快な思いや、言い出しにくいことなどがありましたら、事前にお知らせしてるツールでお声がけください。」

事前に渡してるツールは、みんなそれぞれ違う。
目の前でソレとわかるツールを使われたらお互い気分も良くないだろうから。

例えば、使ってる食器を落とすや、追加注文など、俺が側に行っても支障のない形で個別に伝えてある。
トラブルを防ぐためにも、だ。

なるべく穏便に、それがダメなら手加減はしない。
だからこその身分証明書だ。


さすがに俺一人で4組かと思うとかなり気が重くて、マスターを呼び出すべく何度もスマホで呼び出しを続けていた。


心配は他所に一応一見穏やかに始まった。

それぞれで話をし始め、自己紹介をし合って、そのころのタイミングを見計らって飲み物を提供する。
当然アルコールは抜きで、だ。

とにかく、それぞれの会話を聞き耳立てながら様子をうかがうなんて、気疲れして仕方ない。
申し訳ないけど、月一回でも多いわ、これ。


一時間ほどで、マスターが助けに来てくれた。


「ますたぁ~、さすがに無理です。
 4組は多すぎます!」

「え、ノエの半泣き初めて見た…」

え!そこ!!?
マスターが言った瞬間、一瞬でシーンとなった。
そして、見るのも怖いけど一斉に視線が向けられてた。
こう、ギギギーって音がするような感じで振り向くと、たった4組されど4組の8人から色々な声が上がった。

どう聞いても罵声なものから、悲鳴のような奇声までが小さい店の中で上がった。

「綺麗なお人形さんが、人間になった感じ
 いつもそんな風にしてればいいのに」

「え、や、」

真っ赤になっていたと思う。
ウリエルと別れてから、感情は捨ててきたのにこんなカップルの熱に中てられて神経の回路が間違ってしまったんだ。

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