俺と俺の天使と俺の上司

天界革命

赤と白

データが翼を通して勝手に送られてるなんて、知らなかった。

赤い翼は俺の気持ちを汲んで、居場所は隠して送ってたってことだろうか。

「さて、イズくん
　データは思いがけず届いていたけどね
　家出はなんでしたのかな？
　赤い翼は神の御加護だと、ラファエルからも聞いたよね？」

メタトロンが、本題に入った。

「赤い翼が生えた途端、みんなが気持ち悪いものを見てるような
　そんな風に感じてしまったので、いない方がいいと思ったんです」

ラファエルが、居心地の悪そうな表情をしたのを、メタトロンが見逃さなかった。

「って言ってるけど、ラファエル？
　なんかおかしいね」

目が笑っていないメタトロンに、ラファエルは息をのんで答えるしかなかった。

「私が、イズラエルが出て行くように仕向けたようなものだ。
　赤い翼が神の神力の強さを示したとき、このままでは天界のヒエラルキーが壊れてしまうと思いました。
　メタトロン様と同じ、6枚羽の上さらに強い加護を受けての翼が特に、赤い翼は気味が悪かった。
　だから、態度に出した。
　気持ち悪いと思っている、と。
　言葉には出さずとも、目は語り、態度は雄弁に状況を知らしめました。
　決して、ウリエルや、ミカエルがそれに加担したわけではありません」

みんなを癒し保護する立場のラファエルだからこそ、俺の存在が争いになると思ったんだ。

「そうか、天界を思ってのことだとは理解した。
　それは正しかったといえるのか？
　ラファエル、癒す立場の者が追い打ちをかけるのは、辛いこともあろうかと思うが
　このやり方はまずかったな。
　イズラエルが生真面目だった故、仕事も滞らず常に判定できる状態であった。
　それは、存外優秀な赤い翼のおかげだ。」

「はい、今のイズラエルを見て
　私のしたことは間違いであったと、深くお詫びいたします。」

ラファエルがメタトロンに謝罪し、俺にも謝罪しようとしたから止めた。

「ラファエル様、謝らないでください。
　人間の世界で暮らしたおかげで、無意識にも仕事ができてたんです。
　それに、最初にこの世界でできた初めての友達です。
　ね、吉田さん、俺、絶対に嫌ったりできないから、
　俺のこと嫌いでもいいです。
　俺は好きでいますから」

笑ってラファエルに言えた。

「っ！」

「イズ、その笑顔は、他に向けてはだめだ」

ウリエルが、いきなり横から抱き上げて俺の顔を隠した。

「ラファエル、単刀直入に聞く。
　イズラエルが嫌いか？
　気持ち悪いか？」

ラファエルの表情は見えなかったけど、そんな訳ないって力強く言われた。

「イズくんが好きだったから、ここにいたら
　絶対辛い思いをするって！
　サキュバスの悪魔が入り込んだのも
　イズラエルの赤い翼のせいだって、そんな口さがないことが出てたのも事実だった」

そんなこと言われてたんだ。
大体想像はつくな。

「だが、私はイズラエルと伴侶の誓いを神に立てた。
　その時に、前線へ出ることでイズラエルの処分も待ってもらっていた。
　今ここにイズラエルを連れてきて、実際の話を聞いて確信した。
　神は、これまでの世界を壊し新たな天界のシステムを作り上げようとしているんだろう。
　だから、イズラエルに神の翼を与え、人からの転生を促したんだ。
　全ては、神の手の中だったのだ」


ウリエルが凄く危ない話をしてるのに、俺の耳は伴侶の誓いって所に引っかかっていた。