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天界よいとこ一度はおいで
人は
しおりを挟む製作工場の方は新しい下級天使がいて、俺を見てやはり遅刻だと言ったが、今回は今日から配属されて分からなかったと言うと、割合いすんなりと工場の中の持ち場に配属された。
実際に作るっていうのは、面談だけに来た俺には無理な話だし、それが終われば抜ける事になるから、とにかく不器用だからを貫き通して片付けとかの雑用に回してもらった。
面談予定の人物の手元として。
「おぅ、お前初めての奉仕だってな
俺はここで椅子やらを作ってる工藤和郎だ。
よろしくな。」
ニカッで漫画みたいな笑顔で、30半ばの男が笑った。
愛嬌があって、実にワイルドな風貌で俺を歓迎してくれた。
「イズです、宜しくお願いします。」
「イズは綺麗な顔してんなー
なのに、頭ザンバラじゃねーか
整えてもらえなかったのか?」
「あ、いえ、自分で切ったので。
適当に、また伸びますから。」
「ぶっ!
面白い奴だな、お前」
雑用をこなしながら、話をする。
「和郎さんは、元々、木工?とかをやってたんですか?」
おが屑を集めたあと、道具を揃えたりした。
「生きてた時は設計やってたな。
だから、作る側にも興味があったし、
ここは俺的には最高なとこなんだよ。」
凄く楽しそうに、木を削ったりして形が出来上がってくのを見てると、凄いと思った。
「イズはまだ小さいのに、頑張ってんだな
それに可愛いしな!
俺が守ってやりたくなるよ」
顔を赤くしながら、和郎さんがいう姿が可愛く見えて、俺も恥ずかしくなった。
「あの、それは
ありがとうございます」
胸元で手を結んだまま、ぺこん、と頭を下げるので精一杯だった。
ストレートに告白された訳でもないのに、何故かドキドキした。
多分、世界樹でのウリエリの事が引き金だったんだと思う。
人間だった時は生きる事に一生懸命で、誰かを好きになったり、好きだと思われる感情に心を傾ける余裕なんかなかったから。
「イズ、俺と付き合ってくれないか?
その、会ったばかりでこんなオッさんは得体が知れないだろうけど、お前が誰かのとこに行ってしまうのは、嫌だ。
今度は、後悔したくないんだ。」
「あの、和郎さん、今度はって
誰か好きな人がいたんですか?」
あちゃ、という顔をして和郎さんが頭を抱えた。
「死ぬ前に、な。
まあ、相手も同性でしかもノンケだった親友でな。
告白もせず、親友でいいと思ってたんだ。
だが、びっくりな事に奴が付き合ったのは同じ男で、部下だったよ。
ヤケ酒あおって、真冬に寝込んで死んだってオチだ。
アイツが幸せならいい。
だから今度は躊躇う事なく、告って俺も幸せを掴む事にしてんのさ」
それは辛いだろうな。
でも、付き合っていけるかわからない。
俺は、天使と言う秘密を抱えてる訳だし。
「和郎さん、僕はまだ好きとか付き合うとか分からないんです。
生きてた頃は生きるのに必死で、何も周りを見ることもなく、上司には誤解で嫌われたり、こっちに来ても嫌がらせばかりで」
そこで、涙がポロリと落ちた。
「あ、れ?
やだな。
恥ずかしいね。」
ふふっと笑うと、和郎さんがフワリと抱きしめてくれた。
「お前、頑張ってんだな。
今まで、嫌な事を嫌だって言えなかったんだな。」
「そんな事ないですよ、僕が謝れば
大抵はみんな怒りを納めて、僕のせいにしておけるから
人は誰かのせいにしたら、楽なんですよ。」
それが俺の役目だと半分は思ってた。
卑屈かもしれないけど。
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