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天界よいとこ一度はおいで

千里の道も一歩か二歩

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俺は天使の雑用係として、この天界のお掃除お兄さんになった。

一応待遇は悪くない気がする。
衣食住があてがわれて、一日10時間くらいの奉仕活動をする。
お金というのが無いから、奉仕ね。

天界って、向こうが霞んで見えないくらい広い。
造りはギリシャ神話に出てくるような柱とか屋根。
広いから、何人か似たようなお仕事をしてるけど、まぁ、顔を合わすことは殆どなかった。


カミツキガメは忙しいと言いながら、一日3回は巡回して俺を監視してるようだ。
別に、誤魔化したりしないのに。

でも、どんなに嫌な上司でも、挨拶は大事。

「おはようございます。
 大天使様。
 今日も一日良いお仕事ができるよう、心を尽くします」

この最後の心を尽くしますって言うのがここのお疲れ様みたいな挨拶で、最後に付ける。
ここでの上司の名前も知らないから、一応役職で呼んでる。

向こうは、君、で終わらせてるけど、俺にも一応生きてた時には泉って名前があるんだけど。
笑っちゃうことに、DVのバカ親は、俺に、和泉 泉ってつけやがった。
どっちもイズミ。
上も下もイズミ。
大体が、悪口なあだ名しか付けられなかったけど。

お漏らしとか、噴水とか。
無駄に水に関係してる割に、カナヅチとか、いろんな意味で辛い幼少時代だったなぁ。

結構、ぼうっと考え事しながらでも掃除はできる。
だって、色々頭使ってやることより、体を動かせば片付く仕事は、今の俺には合ってる気がした。

上司も適材適所って分かってんじゃん!!

「君はこんな事もうまくできないんですか?」

後ろを見たら、汚れがついていた。
え?だって掃除したよ?

「大天使さまぁ、この人さぼってばかりで、僕にだけ仕事を押し付けるんですよ!
 そして、掃除したところをわざと汚すんです」

しくしく泣きながら、凄く可愛い少年?青年?が大天使様に訴えてた。

いやいや、ちゃんと掃除したし!

「ちゃんと!」
「言い訳するんですか???」

「いえ、すみません。
 やり直します。」

言い訳じゃない、事実を言いたかったのに。
もう一度、今朝始めたところからやり直すのに、戻った。

その後ろでは、可愛い子が笑って、大天使様の腕に守られてた。

そっか。

そっか。

そうなんだ。

天使も恋愛するんだな。

ちょっと、泣いても良いかな。
理不尽だ。
会社でも、理不尽メールが来てたけど。


さすがに元気も出なくて、トボトボとスタート地点に戻ってきたら、神話に出てきそうな金色の豊かな髪に、逞しく綺麗な体の超美形な天使がいた。

こんなだだっ広い場所で、どうして会うかな?
独りで泣きたかったのに。

「あれ、君、最近来た子?」

「はい、ちょっと前に」

「あの頭の固い奴から連れてこられた子かぁ。
 なんか遊んで、仕事もしない子だって言ってたけど。
 どうしたの?」

そこそこ酷い評価なのね、俺。

「掃除、ちゃんとしたはずなんですけど、
 また汚れちゃってて、叱られちゃったんです」

へへって笑ってなんとか独りにしてもらおうって思った。

「可愛い子に酷いことするね~
 これ、明らかに誰かが付けてるじゃない。
 しかも、足跡付きで。
 この足跡しかないんだから、掃除した後に汚したのは明白じゃない」

「う~ん、でも、俺、言い訳できる頭もないし、事実汚れてるなら掃除はしなきゃいけないでしょ?
 それが誰でもいいし、俺ができるなら、俺がやればいいし。
 大した話じゃないですよ。」

こんな風に話しかけられるなら、ちゃんと話せるのに。
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