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しおりを挟む神族国の中にあった小さな町、その中でも神族ではない者だけが助かると言う、それこそ神の裁きが命運を分けていた。
「神族連中はまた復活するだろうけど、今のこの状況で精霊が手を貸さなかったと言う事が、一番の裁きだと思うよ」
「テ、じゃない、シャイアン様は無茶をしましたね」
「だって、おとう、えっと、トウカの為じゃない」
未来に精霊を癒せる者が現れるかもしれないが、それはトウカとテイトには関係ない事だった。
ザクロが漁船を見送り、屋敷へ戻ってからしばらくすると、テイトとトウカが戻って来た。
「お帰り、その様子じゃうまくやったようだな?」
「はは、上手いかどうかは別として、言いたい事は行って来ましたし、テイトの名前も伏せましたから。
それに、まぁ、すぐ伝わる事でしょうが、テイトが、神族国を滅亡させて来ました」
は?っという顔を、側にいた執事も執事見習いも、そしてザクロまでがした。
「だって、あんまり腹が立って」
風の子たちもそうだそうだ、と言っていたが聞こえてるのは三人だけのはずなのに、執事や見習いたちも同じようにうんうん、と頷いたりその通りです、と同じ返事をしていた。
「まぁ、戸籍とかの書類関係は、この帝国の中枢にあるかもしれませんが、これまでの経緯や証拠になるような物は一切合切無くなりました。
これで、私の戸籍を新しく作っても問題無いですね」
か弱そうな一見に反して、トウカはどちらかと言うと腹黒かった。
「お父様、強くてカッコいい」
テイトの尊敬の眼差しに照れくささを感じながら、トウカは悪い事はしてないから、と言い訳をした。
「悪い事や不正をしたことはありませんが、自分がどう動けば最大限の利益が出るか、それを考えてるだけです。
風の巫覡で、地方の神事を担っていた最中に拉致されるとは思ってもいませんでしたけど」
前向きと言うと言葉は綺麗だが、本心はいつか絶対に復讐してやる、と言うその一心で生き延びていただけだった。
「私でもトウカ殿の力を見誤っていたようだ。
新しい門出の名前はどうしますか?」
公爵家は既にトウカの死亡届を出していた。
それは、愛妾の存在を良く思わない公爵家の誰かの手によって、いち早く提出されていた。
「受理され、既に死亡で抹消されているから、気にする事はないが、誕生日は変えた方が良さそうだな」
ザクロにしては冗談を言ったつもりだったのだが、周りは真剣に受け取っていつを誕生日にするかや名前を考えるのに騒がしくなっていた。
「ザクロ、いいえ、婿殿。
テイトを悲しませないでくださいね?
私が巫覡としての力を使えないとはいえ、次代の巫覡としての位置にはいますから、風の子らは色々報告をしてくれるので、もし、何かあれば分かってますよね?
それに、テイトをちゃんと神事に則って伴侶にしたならば、誓約が生まれ不貞は出来ませんからね?」
トウカがそう言うと、風の子らもザクロの周りの風を巻き上げて一瞬にして、その頬に傷をつけた。
「風って、攻撃力もちゃんとあるんですよ」
「分かった。
それに私はテイトを手放すような事になる不貞などする気もない」
そう言うとザクロは当たり前だと、名前や誕生日で盛り上がっているテイトの腰を抱き寄せた。
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