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弁護士が入って分かった事実が、想像していたことより斜め上過ぎた。
「情報量多すぎ!!」
紹介したのは若狭でその場にもいたが、依頼主は桂なので当然蚊帳の外だった若狭が、桂に進捗を聞いてみた。
「俺もそう言っちゃいましたよ」
笑いながら桂が内装の一部を製作しながら言った。
「大体さ、精子提供から子供四人まではまだいいよ。
単に浮気してたって話でもスゲーな、おいって突っ込みどころ満載だけど、DNA検査したらあの偽弁護士の子供って!
それに離婚理由! 普通に浮気じゃん! あとなんだっけ、遺言もそんな話一言も出てなくてむしろご両親には絶対引き取るなって言ってたって、真逆じゃん!」
若狭が桂以上に興奮して、代わりに怒ってるような状態だった。
手を動かしながら、そんな若狭の表情や感情に桂は思わず笑みが零れた。
「そう、まさかの、と言うより高坂先生は何となく想像してたらしいですよ。
香子との関係性を考えるとって。
でも下の子二人があの偽弁護士の子で、上二人はまた別の人の子らしいですよ」
同じような感情を共有できることが、こんなに嬉しいものなのか、と思いながら製作されたステンドグラス風の飾り窓を吹き抜けの一部に合わせてみたりしていた。
「ねぇ、桂君!!
なんで笑ってるの! 怒っていいんだよ!」
子供がするように、桂の作業してる後ろをついて回る若狭に、俺以上に怒ってくれてるから、と返した。
「でもまだまだこれからなんですよ。
あっちは未だに変なこと言ってるらしいし、さすがに高坂先生も苦笑いしてましたよ」
最初は怒りもあったが、若狭との関係が少しずつ深くなっていた事で、桂は持て余す感情を捨てることができた。
心が若狭に向いていたからだった。
内装作業で現場に入ることが多くなると、若狭もそれに合わせて顔を出していく、そんな時間が増えて帰りには食事をして進捗を話して、今の様に若狭が代わりに怒る、そんなことが桂には嬉しいと思えた。
結果は亮一の子でも、亮介の子でもなかった。
「今更ですけど、亮介も被害者だって言ってるらしいです」
「え、それってさ、また桂君ところへ来るんじゃないの?」
「だとしても、無理ですよ。
俺、もう違う人が好きですから」
若狭に振り向きながら笑って言った瞬間、その笑顔から零れた言葉に桂自身も驚いて固まった。
自然と出た言葉だった。
「え、や、やったー? でいいの?」
若狭が間抜けな表情で聞き返した。
「そ、え、っと、若狭さんの」
「私が好きだよね?」
にやにやと笑われるかと思ったら、ものすごくまじめな顔で確認をしてきた若狭に、小刻みに震えながらそうだと言うしかなかった。
その答えを言い切らないうちに、強く抱きしめられてキスをされた。
「ん、」
深く舌を吸われ、歯列を舐められ、ない胸をまさぐるように撫でられて、お互いがぎゅっと音がしそうなほど抱きしめあった。
「ここ、職場だ、やっべ」
ふいに自覚した場所が、通りから丸見えまではいかないが、よく見れば見えてしまうような場所だった。
「もう逃がさないし、逃げられないからね。
覚悟して、フランス行って結婚式して、パートナーシップを認めてるとこに行って暮らそう、ね?」
若狭の計画に笑うしかなかった。
「だいぶいろんなこと端折ってませんか?」
「ノン、ノン、私だからね、安心しなさい」
子供みたいな部分と冷静な大人の部分を持ってるんだ、と思うと桂は若狭がかわいく思えた。
「そんないたずらっ子みたいな顔して」
「さ、桂、私の名前を呼んで」
「え、っと若狭さん?」
「こいつわざとだな?」
若狭が桂をくすぐりながら、自分の名前を呼ばせようとすると、余計に名前を呼ばないように頑張っていた。
「やっやめって、あはは、ひっひ、うはぁ、やだ、ひっひ、」
「これでもか! ほら言って」
「くすぐったい~、わかった!、ひっひ、わかったから」
くすぐる手を少しだけ緩められると、桂が呼んだのは、「たいちゃん」だった。
「あ、笑いすぎて口が回らなくて」
「斬新だな。
泰さん、は想像してたけど」
「想像って」
くすぐる手を桂の腰に回して、夜な夜な桂から名前を呼ばれる想像をしたと告白した。
「桂がたいちゃんって呼ぶの、すごく嬉しい。
ここがきゅっと熱くなるよ」
そう言って手は自分の胸を押さえ、下半身は桂に押し付けていた。
::::::::
「桂、こっちの荷物片付いたけど、そっちは?」
新居は桂と若狭で内装をデザインして、自分たちの思い通りの家にした。
「俺の荷物なんてほとんど無いですよ」
あの騒動の時、荷物をコンテにまとめていたので、大した量もなかった。
「え、じゃぁなにして」
桂の書斎をのぞくと、家が出来上がっていく過程の写真が並べられていた。
「次に内装を変えるときとか図面よりこっち見て、強度とか配線とかわかりやすいかなぁって」
仕事人間だな、と苦笑いして若狭が寝室を片付けようと誘った。
もちろん片付けは最後になるだろうけどね、と。
終わり。
これからの二人は次のお話で。
「情報量多すぎ!!」
紹介したのは若狭でその場にもいたが、依頼主は桂なので当然蚊帳の外だった若狭が、桂に進捗を聞いてみた。
「俺もそう言っちゃいましたよ」
笑いながら桂が内装の一部を製作しながら言った。
「大体さ、精子提供から子供四人まではまだいいよ。
単に浮気してたって話でもスゲーな、おいって突っ込みどころ満載だけど、DNA検査したらあの偽弁護士の子供って!
それに離婚理由! 普通に浮気じゃん! あとなんだっけ、遺言もそんな話一言も出てなくてむしろご両親には絶対引き取るなって言ってたって、真逆じゃん!」
若狭が桂以上に興奮して、代わりに怒ってるような状態だった。
手を動かしながら、そんな若狭の表情や感情に桂は思わず笑みが零れた。
「そう、まさかの、と言うより高坂先生は何となく想像してたらしいですよ。
香子との関係性を考えるとって。
でも下の子二人があの偽弁護士の子で、上二人はまた別の人の子らしいですよ」
同じような感情を共有できることが、こんなに嬉しいものなのか、と思いながら製作されたステンドグラス風の飾り窓を吹き抜けの一部に合わせてみたりしていた。
「ねぇ、桂君!!
なんで笑ってるの! 怒っていいんだよ!」
子供がするように、桂の作業してる後ろをついて回る若狭に、俺以上に怒ってくれてるから、と返した。
「でもまだまだこれからなんですよ。
あっちは未だに変なこと言ってるらしいし、さすがに高坂先生も苦笑いしてましたよ」
最初は怒りもあったが、若狭との関係が少しずつ深くなっていた事で、桂は持て余す感情を捨てることができた。
心が若狭に向いていたからだった。
内装作業で現場に入ることが多くなると、若狭もそれに合わせて顔を出していく、そんな時間が増えて帰りには食事をして進捗を話して、今の様に若狭が代わりに怒る、そんなことが桂には嬉しいと思えた。
結果は亮一の子でも、亮介の子でもなかった。
「今更ですけど、亮介も被害者だって言ってるらしいです」
「え、それってさ、また桂君ところへ来るんじゃないの?」
「だとしても、無理ですよ。
俺、もう違う人が好きですから」
若狭に振り向きながら笑って言った瞬間、その笑顔から零れた言葉に桂自身も驚いて固まった。
自然と出た言葉だった。
「え、や、やったー? でいいの?」
若狭が間抜けな表情で聞き返した。
「そ、え、っと、若狭さんの」
「私が好きだよね?」
にやにやと笑われるかと思ったら、ものすごくまじめな顔で確認をしてきた若狭に、小刻みに震えながらそうだと言うしかなかった。
その答えを言い切らないうちに、強く抱きしめられてキスをされた。
「ん、」
深く舌を吸われ、歯列を舐められ、ない胸をまさぐるように撫でられて、お互いがぎゅっと音がしそうなほど抱きしめあった。
「ここ、職場だ、やっべ」
ふいに自覚した場所が、通りから丸見えまではいかないが、よく見れば見えてしまうような場所だった。
「もう逃がさないし、逃げられないからね。
覚悟して、フランス行って結婚式して、パートナーシップを認めてるとこに行って暮らそう、ね?」
若狭の計画に笑うしかなかった。
「だいぶいろんなこと端折ってませんか?」
「ノン、ノン、私だからね、安心しなさい」
子供みたいな部分と冷静な大人の部分を持ってるんだ、と思うと桂は若狭がかわいく思えた。
「そんないたずらっ子みたいな顔して」
「さ、桂、私の名前を呼んで」
「え、っと若狭さん?」
「こいつわざとだな?」
若狭が桂をくすぐりながら、自分の名前を呼ばせようとすると、余計に名前を呼ばないように頑張っていた。
「やっやめって、あはは、ひっひ、うはぁ、やだ、ひっひ、」
「これでもか! ほら言って」
「くすぐったい~、わかった!、ひっひ、わかったから」
くすぐる手を少しだけ緩められると、桂が呼んだのは、「たいちゃん」だった。
「あ、笑いすぎて口が回らなくて」
「斬新だな。
泰さん、は想像してたけど」
「想像って」
くすぐる手を桂の腰に回して、夜な夜な桂から名前を呼ばれる想像をしたと告白した。
「桂がたいちゃんって呼ぶの、すごく嬉しい。
ここがきゅっと熱くなるよ」
そう言って手は自分の胸を押さえ、下半身は桂に押し付けていた。
::::::::
「桂、こっちの荷物片付いたけど、そっちは?」
新居は桂と若狭で内装をデザインして、自分たちの思い通りの家にした。
「俺の荷物なんてほとんど無いですよ」
あの騒動の時、荷物をコンテにまとめていたので、大した量もなかった。
「え、じゃぁなにして」
桂の書斎をのぞくと、家が出来上がっていく過程の写真が並べられていた。
「次に内装を変えるときとか図面よりこっち見て、強度とか配線とかわかりやすいかなぁって」
仕事人間だな、と苦笑いして若狭が寝室を片付けようと誘った。
もちろん片付けは最後になるだろうけどね、と。
終わり。
これからの二人は次のお話で。
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