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鬼畜の考える事

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 厳選された子息、令息連中は、中身が鬼畜なので失神したりほぼ口もきけない状態の令嬢たちを放置するかと思いきや、優しく微笑み褒め称え、そして手の甲にキスをした。

 こいつらの考えてる事が分かるだけに、ビランコ一家は思わずため息を吐いた。

「なんて素晴らしい方たちなのかしら」

 どの令嬢も目がハートになっていた。

 ん、だよね。

 だって似たり寄ったりの美青年だもんよ。
 でもさ、ここまで似てるって言うかまるでAIで作った顔になってるのに、違和感が無いのだろうか? と不思議に思った。
 既にゲームからは逸脱してるし、強制力とか補正力は無いみたいだから、ちょっと考えればおかしいって思いそうなんだけど。

「統一記念のパーティ―はそれぞれのパートナーと出席されるといい」

 ビランコ公爵が告げると、子息令息、令嬢がそれぞれパートナーの手を取ってエスコートして出て行った。

「さて、貴殿らがドラニスタ―国とピスカルソーダ国の最初の架け橋となる事を喜ばしく思うと共に、これからの若い世代の活躍を期待させて貰うよ」

 ベルギアンの国王としての言葉で締めくくられ、統一国家記念の開催を待つだけになった。

 この言葉に気を良くした醜悪な貴族連中は、ビランコ公爵を一瞥して部屋を出て行った。

「なにあれ! ムカつく」

 僕がイラっとした事を告げると、アスが

「来て早々嫌な思いしたよね、ごめんね。
 大体さ、謁見申請もしてなければ、横柄な挨拶をするとか、本当に礼儀がなってないし」

「えっとイル義兄上って、ザンダースのとこの末っ子だよね?
 結婚式ではバタバタして全く話せなかったけど」

「イリエラ! お前に愛称で呼ぶことを許してないから!
 それに、私の嫁になるんだからちゃんと礼儀を持って話してもらえるかな?」

「ぎゃはっはっは! おもしれー! サイアス兄さんが本気って聞いてたけど、マジか!
 俺が居ない間にこんな楽しい事になってたのか!」

 国王になってるベルギアンがバカ笑いして、さっきの対応とはまるで別人だった。

「ザンダースは没落させたし、かろうじて剥奪されて無いってだけだろ?
 それに子爵って言っても元から平民寄りだったんだし、あの扱いをするような家族って必要ないしスッキリしてよかったですね」

 一応、アスに言われて口調だけは改めて、ザンダースの近況を教えてくれた。

「あの時の女性がイリエラちゃんだったのか。
 酷い事するよね、アイツら。
 確か救貧院で世話になってるはずだから、もうこっちには手を出せないし、安心してね」

「おい、礼儀は!?」

「家族だし、もういいじゃん!
 ねー? イリエラちゃん!」

 ベルギアンもまた、ビランコ産の子だと思ったのは、救貧院へ入れておかないと目についたらプチッてしちゃいそうだから、だった。

「卑怯な奴らって大嫌いなんだよね。
 その点、うちの家族は策略は練るけどやられたからやり返してるだけで、別に卑怯な事はしてないんだよね。
 勝手に奴らが堕ちていってくれるだけでさ」

 要は大義名分のもとにやってるって事だった。

「まぁ、兄上の本気はちょっとアレだけど、悪い事は無いから大目に見てあげてな」

「あ、ははは」

 乾いた笑いを返すしかなかった。

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