160 / 166
異世界家族
40
しおりを挟む説得すると言うラエヴに、タロー様はやってみるがいい、とだけ突き放した。
2人は連れ立って人の国へと向かって行った。
「タロー様、神様が人になるなんて
俺は嫌です!」
涙が出てきた。
だって、神様って俺にとってはもう、お父さんとかお兄さんみたいな一にいる人だから、ずっと一緒にいたい家族なんだもん。
「アキは意外と親(?)離れが出来てないな
シムラクルムもバカじゃない
まぁ、多少、抜けてるところはあるがな」
ラエヴが神様を本当に守ってくれるのかは疑問だし、幸せになれないなら俺はあの兄弟を滅しても構わないと、凶暴な気持ちが湧きあがるのを感じた。
「アキ、怖い顔してるぞ
案ずるな。
アウィスがどう足掻こうと、あの二人は離れんよ」
「なら、なんで試すようなことを?」
「人になるなどと言うからさ
それなら何故ラエヴを神籍くらいまで引っ張り上げないんだ
楽な方向へ逃げおって」
「えーっと。どうやって?」
神籍に連ねるって、なかなか難しいというかに手段が無いんじゃないの?
「ふふ、いま我が家には双子もおる。
では、向こうの世界は?
精霊神では心もとないと皆感じていたであろう?
なら、シムラクルムを向こうの神にしてしまえばいい
こちらの理にとらわれることなく、ラエヴを向こうの世界に転生させてしまえばいいのさ」
おぉ~!なるほど!
「そんな事にも気づかない程、
あれらは互いしか見えておらんのさ」
「転生って言っても、人から神にですか?
それは無茶では」
「段階は必要だな
人から精霊王かそのあたりが無難だろうな」
「取り上げた魔力をとりあえず返せば、条件的には
ですね。」
「ただ、アウィスとは決着を付けておかねば、この先も苦労するからな
それの為に決死の覚悟だろうよ」
どこか面白そうにだけど寂しそうに笑うタロー様が、きっと半身の兄弟神を取られて嫌がらせをしてるんだと思った。
俺に親離れが出来てないとか言いながら、タロー様の抱える感情は兄弟離れとはちょっと違うんだろうな。
「タロー様、俺、ちょっと妬いちゃいますよ
そんなに悲しい顔で笑わないでください。
強がる必要なんかないですから」
「アキ、私はシムラクルムが離れていくとは思ってもいなかった
しかも、人になど」
「そうですね、俺も同じです。
トリスタンの時とは違いますから
ちゃんと祝福してあげましょう
ね?」
タロー様は俺の腰に抱きついて、大きなため息をついた。
長い時を過ごしてきたタロー様にとって、神様がいなくなるのは想像するよりもはるかにキツイだろう。
俺は最初から誰もいなかった。
だから、寂しいとかの感情はあるけどこんなにつらいと思える感情を持っていないんだと思う。
一人の夜が長く、一人の世界が狭く、一人の時間だけしか知らなかったから。
側にいることはできても、分かってあげることもできない。
なんて欠陥品なんだ。
11
お気に入りに追加
789
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる