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異世界家族

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説得すると言うラエヴに、タロー様はやってみるがいい、とだけ突き放した。

2人は連れ立って人の国へと向かって行った。


「タロー様、神様が人になるなんて
 俺は嫌です!」

涙が出てきた。

だって、神様って俺にとってはもう、お父さんとかお兄さんみたいな一にいる人だから、ずっと一緒にいたい家族なんだもん。

「アキは意外と親(?)離れが出来てないな
 シムラクルムもバカじゃない
 まぁ、多少、抜けてるところはあるがな」

ラエヴが神様を本当に守ってくれるのかは疑問だし、幸せになれないなら俺はあの兄弟を滅しても構わないと、凶暴な気持ちが湧きあがるのを感じた。

「アキ、怖い顔してるぞ
 案ずるな。
 アウィスがどう足掻こうと、あの二人は離れんよ」

「なら、なんで試すようなことを?」

「人になるなどと言うからさ
 それなら何故ラエヴを神籍くらいまで引っ張り上げないんだ
 楽な方向へ逃げおって」

「えーっと。どうやって?」

神籍に連ねるって、なかなか難しいというかに手段が無いんじゃないの?

「ふふ、いま我が家には双子もおる。
 では、向こうの世界は?
 精霊神では心もとないと皆感じていたであろう?
 なら、シムラクルムを向こうの神にしてしまえばいい
 こちらの理にとらわれることなく、ラエヴを向こうの世界に転生させてしまえばいいのさ」

おぉ~!なるほど!

「そんな事にも気づかない程、
 あれらは互いしか見えておらんのさ」

「転生って言っても、人から神にですか?
 それは無茶では」

「段階は必要だな
 人から精霊王かそのあたりが無難だろうな」

「取り上げた魔力をとりあえず返せば、条件的には
 ですね。」

「ただ、アウィスとは決着を付けておかねば、この先も苦労するからな
 それの為に決死の覚悟だろうよ」

どこか面白そうにだけど寂しそうに笑うタロー様が、きっと半身の兄弟神を取られて嫌がらせをしてるんだと思った。
俺に親離れが出来てないとか言いながら、タロー様の抱える感情は兄弟離れとはちょっと違うんだろうな。

「タロー様、俺、ちょっと妬いちゃいますよ
 そんなに悲しい顔で笑わないでください。
 強がる必要なんかないですから」

「アキ、私はシムラクルムが離れていくとは思ってもいなかった
 しかも、人になど」

「そうですね、俺も同じです。
 トリスタンの時とは違いますから
 ちゃんと祝福してあげましょう
 ね?」

タロー様は俺の腰に抱きついて、大きなため息をついた。
長い時を過ごしてきたタロー様にとって、神様がいなくなるのは想像するよりもはるかにキツイだろう。
俺は最初から誰もいなかった。

だから、寂しいとかの感情はあるけどこんなにつらいと思える感情を持っていないんだと思う。
一人の夜が長く、一人の世界が狭く、一人の時間だけしか知らなかったから。

側にいることはできても、分かってあげることもできない。
なんて欠陥品なんだ。



 
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