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異世界家族

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限り無く細い道筋を選ぶ。

この子の魂と俊樹の魂を剥がして消滅させる。
タロー様が下した罰も俺が書き換える。
転生なんかさせない。
死の国へも行く事なく消滅させる。
俺の全てを引き換えにしても、だ。
残りの日にちも、もう無い。
今日を含めてあと1日と半。



『アキ様、一つ提案がございます。
 この提案で、今一度コン殿に先見をして頂いては如何でしょう?』

チカちゃんが人に見られない様に、床磨きをしている影から顔を覗かせた。

『スズキ殿にあの子供の体を氷漬けにしてもらい、イーリス殿に魂に結界を張ってもらいます。
 アキ様が魂の中へ潜り、私をお招び下されば、浄化と消滅が一度に出来ます。
 コン殿が外側から告げば、覚醒と共に出られましょう。
 ただし、チャンスは一度きりです。』

「コンちゃん、どう思う?」

『アキ様、チカ殿の提案でも厳しいかと。
 ただ、ゼロでは無い。
 限り無くゼロに近いとは思います。
 まず、武器が無い。
 向こうの精神世界では、あまりにも不利になります。』

武器は元々自分の爪だけだ。
自在に伸ばす長く鋭いこの爪。

防御と、鋭い攻撃、一発で滅する威力を持つもの。
一番はあいつの魔力を減退させる事が勝機なら、麒麟のイーリスが吸収もしくは封印できないだろうか?

「ね、イーリス、
 この世界で俺の魔法が使えるなら、
 同じ精霊が存在するって事だよね?」

違うかな?

『そうですね、ほぼ一緒かと。
 むしろ、こちらは少ないですよ。
 アキ様、試しに光の精霊を喚んでみてください。』

人差し指を立てて、トンボにクルクルと回す様に、やってみたら小さい子達が集まってきた。
遊び好きなのはどこの精霊も同じだった。

クスクス

きゃっ、ふふふ

楽しそうな笑い声と共に回す指に絡まり、洗濯機の渦の様に着いてまわる。

「ね、君たちはここの貴族の子、どう思う?」

まえは、好きー
いまはきらーい

やっぱり。

「どうにか、前のあの子に戻してあげたいんだ。」

なら、精霊王つれてくるー
王様なら、教えてくれるよー

「ありがとう
 いま、行ける?」

うん、すぐだよー
ほら、そこ

すぐ横に、半透明な姿の青年が立っていた。

いや、これ幽霊レベル!
怖いのダメ!!

ビクビクしながら、あの、と話しかけると、向こうもビクついて、お互いであのあの、言ってしまった。

「失礼しました。
 私はアキと申します。」

「あ、の
 貴方の姿は、真っ白な別な姿に見えるのですが、神獣様では?」

「はい
 別世界ではありますが、神獣神を担っております。」

「神獣神様!?」

「はい
 それで、出来れば教えていただきたい事が至急ありまして」

俺の前に跪き、何なりと、と答えを貰った。



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