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異世界は続くよどこまでも
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しおりを挟む神様が、今の向こうの事を話し始めた。
「例のフィルからアキが眠り続けている間に連絡があった。
アキがいなくなった事で、養い親とも言えないあやつらが、母君の関係者を虱潰しに当たっている様だ。
アキのボンクラ兄貴もこっちに来ちゃってるしなー」
ボンクラ兄貴!
そういや、来てるとか言ってたよなー。
「シムラクルム、ボンクラ兄貴は今どうしてるのだ?」
「神様
強制送還って出来ないんですか?
フィルの時みたいに。
あ、あれは自分の意志だったか
その辺りがネック?」
「う~ん、強制送還はできなくもないだけど、
どの日に戻すって言えないんだよね。
もしかしたら過去とか、未来とかに行っちゃうし。
そして最悪なのは、過去に行って、未来を変えたら
アキがここにいない可能性も出てくる。」
「それは絶対ダメだろ!
アキはここに私といないとダメなんだから!
とにかくそのボンクラをどうにかしないといけないな。」
神様でも制御できないことがあるんだ。
「姿も変えちゃってるからね
本人の意思があれば別だけど。」
「なら、意志を固めてもらえば良い
居場所も把握しておるのだろ?」
「まぁ、分かってるっちゃ、分かってるんだけどさ~
ちょっとね~」
でもフィルが調べたのって、俺の行方を捜してる飛島家だよね?
「俺が居ても、むしろ酷い扱いだったのに、
なんで、居なくなったからって探すの?
おかしいよ。
まるで厄介者だったのに。
兄貴っぽいのを探してってなら、
お母さんの方に行く必要ないよね?」
ちょっと、ちゃんとフィルの話も、お母さんの話も聞きたいんだけど。
「亜希、貴方を連れ去られたのは
生まれてひと月くらいだったかしら。」
どういうこと?
「貴方のお父さんは、解の旦那様たちの親戚筋で
不動産会社をやっていて、
解のビルなんかの管理をしたり、いくつかのビルも持っていた。
貴方がお腹に宿った時、私は隠してしまったんだけど
彼には分かってたらしく、生むときには来てくれたわ。
解の怪我の事もあったし、どうしても一緒にはなれなくて、
貴方を認知してもらうことで入籍はしなかったの。
解を殺しかけた笙野※1の人間だったから。
そして、すぐ、あなたのお父さんは事故で亡くなったの。
ただ、今でも私は事故だなんて思ってない!
貴方だけが心の支えだったのに、目を離した隙に連れ去られてしまった。
証拠もない、でも、解の方には頼れなくて……
バカだった。
どうやったか分からないけど、貴方を養子に出したことにされていた。
どんなに、違うと言っても弁護士を抱き込まれてどうにもならなかった。
警察にも言ったけど、民事だと言われてどうにもならなかったわ」
俺は、お母さんから聞いた笙野の家というのが分からないけど、叔父さんを殺しかけたという単語にこの選択肢は仕方なかったんだと納得した。
そして、お父さんは殺されたかもしれないって、最悪な気持ちになった。
「貴方が成人すると貴方にお父さんの遺産が行くの。
成人するまでに貴方が亡くなった場合は、慈善団体に寄付される。
まるで安っぽいドラマでしょ?
でもね、笙野は解を殺しかけて、解を護る彼らが本気で潰しにかかったから路頭に迷うのが明らかだった。
でも、保護者としてなら、貴方が受け取るべき遺産を、少しずつ引き出せるから。
だから、貴方が必要だったのよ。」
お母さんはその時の感情を思い出したのか、怒りを涙に変えるように握りこぶしが震えていた。
「せめて、せめて、貴方が
笑っていてくれたら!!
許せない、許すことなんかできない!」
お母さんが泣くのは、辛い。
「お母さん、俺、大丈夫だよ」
「そんなとこまで、解に似て。
我慢なんかしなくていいの。
今度は、お母さんが戦うから!」
任せなさいって胸を張っていた。
※1モテないゲイは、魔法使いを目指す!参照
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