モテないゲイは、魔法使いを目指す！

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「さとる、逃げようって思ったら、俺のとこおいで。
　俺はいつでも、さとるがいいよ。
　今まで、どれだけ我慢してたか知ってる。
　我慢する度に、俺はお前にブスだって言い続けた。
　ガキみたいに思っても、笑って欲しかったからね。」

うん、今ならわかる。
侑士は一番気遣いの人だって。

「う、ん」

涙が出そうだったけど、笑わなきゃ。

「無理して笑う事ない。
　あの時のお前の笑った顔は、最高にかっこよかったよ。
　ずっと震えてるのが分かってたけど、抱きしめてやれなかった。
　ごめんな。」

首を振った。
侑士が謝ることなんかないよ。
だって、すごく助けてもらったもん。

一志さん、今まで甘えて呼んでごめんね。

俺の肩を掴んで抱き寄せた。
何日ぶりだろう、この胸の中にいるの。

「さとる、逃げる気持ちになったのはなんで？」

「そんなこと、ないよー
　侑士が先走っただけだよー
　でも、連絡先は受け取らないで欲しかったなw」

声、震えてない？
指が冷たく血の気が引いてる。

ほら、あの綺麗な人が嫌な顔してるよ。
やめないと、ここ、外だしね。

ふふって笑いが漏れた。
どちらかと言うと自嘲気味なやつ。

「兄貴は、アレと仲良くしてれば？
　ちょっと離れてる間に、仲良くなったみたいだし。
　ああいうのが、前のみたいなクズになるんだよ？
　学習しなよ。」

「あ、」

やっと気づいたんだ。

めんどくさいって放置した結果だよね、アレもコレも。

もう、嫌われてもいいや、今言わないともう、爆発しすぎて多分逃げる。


「一志さん、俺は心が狭いんです。
　だから、見たくないものを見るのは辛いから、これは、いつも、心の底にあったんです。
　なんで、もう、抱いてすらくれないの？
　初めてだけの、やっぱり、賭けだった？」

泣かない。
何があっても、泣かない。

「クソ兄貴！
　お前！
　そんな事になってたのか？！」

侑士には聞かせたくなかった。
でも、知っていて欲しかった。

「あのクソと仲良くやれ！
　さとるは兄貴には勿体ないわ！」

「ダメだ！
　さとるは俺のものだ！
　あんな思いはもう、無理だ。
　さとる、また、俺は失敗したのか？」

店舗契約できたはずなのに、こんな事になってしまった。

「話し合いしようか
　兄貴は浮気した？」
「してない！
　しない！絶対ない！」

「わかった。
　なら、あのくその連絡先、まずはつっ返してこい！
　そっからだ。」

浮気してなかった。
良かった。

そう思ったら、ホッとして笑いが漏れた。
嬉しいって。



2人してあの人のとこに行って、一志さんは彼の目を見て何かを言って返そうとした。

よくは聞こえなかったけど、押し問答みたいになって、最後は侑士が破り捨てた。
管理会社を変えるって侑士が言ってたのが聞こえた。

あー、彼のせいで大口の顧客がなくなったんだ。
でも自業自得だよね、職務中だし。
俺のものだし。

そしたら、入り口辺りにいた俺のとこまで来て、傷がある方の側頭部をまた、殴られた。

また、なんで。

あー、日本人て右利きが多かったから、左側ばっか殴られるんだ。

いや、一志さんの尻拭い的な？
なんか、俺、我慢する必要なくね？
俺がいつまでも、我慢ばっかすると思うなよ！


「さとる！」
「さとる！」

「俺、もう、我慢しない」

そこで意識は限界だった。