4 / 105
2
しおりを挟む鉄のハート
派遣契約終わる前から、週末の夜はバイトに入ってた。
派手じゃない、シックなつくりで、本当に普通のバー。
でも、女性客はお断りのところだから、俺的には安心。
飲んじゃうと風呂敷拡げ気味の、残念な奴だから女性客とは話したくない。
それに、ゲイを興味本位でキャーキャーされるのも嫌だし。
安心して、話せる唯一の場所だった。
コンプレックスばっかで、俺様で、わりかし最低で、弱弱な自分をさらけ出しても。誰にも幻滅されない場所だった。
その店は地下にあって、いわゆるゲイタウンではない普通の場所にあるけど、女性客が間違ってくると困るから、席にはreserveのカードが立っている。
「おはようございます~」
「カイ君、おはよ~」
お店のマスターに挨拶をすると、奥でバーテンのベストとパンツに履き替える。
ここでの名前はさとるの解から、名前をカイって名乗ってた。
マスターの趣味で、体の線がモロバレな細身のタイプで、ちょっと恥ずかしい。
身長かわいい系だし、ちょっとね~w
お客さんからも、「カイ君は魅力的っていうより小動物な感じだよね~」だし
これでも、可愛いって言ってもらえたりもするんだけど・・・・。
「ふふ~んだ、もう、魔法使い目指してるからきにしな~いwww」
お酒を作りながら、軽口で応酬するとお店の人たちが悪乗りをし始めた。
「カイ君の処女は誰の手に~」
「いくらくれる~?」
「ダメですよ~、魔法使いは処女童貞じゃないとww」
マスターが、こらこら、と悪乗りを止めてくれたけど、そこは酔っ払いだしね。
そんなに傷つかないし、お金払わないと貫通もできないって、笑いながら流してた。
カラン♪
お店のドアベルが鳴った。
そっちを見ると、多分迷い込んだ感じのリーマンが中をみて
「二人なんですけど、入れますか?」
『お~このメンツ見て入ってくるって、結構心臓強いね』
女性連れじゃないから、断ることもしない。
ノンケで、他のトーク聞いて嫌なら出ていけばいいしね。
「うち、チャージがかかるけどいい?」
マスターが奥のボックス席に通した。
若いリーマンに意味ありげな視線を送る客もいるけど、基本は迷惑をかけないゲイが集まる男性のための秘密の場所的なコンセプトらしいから、やらかしたら出禁なんで、そういうやつは連れが制止する。
おひとり様なら、俺みたいな店の人間が話し相手をしつつ、『メっ』ってする。
だから、ここは平和。
好きだの、愛だの、恋だのは店の外でここに持ち込むなって、暗黙のルール。
MIXナッツをシャンパングラスに入れて、テーブルへ持っていく。
一応、顔に力を入れて、お澄ましさんな感じで。
「ご注文はお決まりですか?」
にっこり笑ってどこでも言われるセリフを出した。
「伴、さん?」
「え?違いますよ、私はカイって言います」
あぶねー、こいつ知ってるやつか?
『ばんって名字じゃないんだよ、残念!じゃがじゃん』
名刺かなんかで、名字を伴BANって呼んでる人結構いるんだよ。
俺もめんどくさくいし、それで返しちゃってたから。
多分、派遣先か、なんか。
「お決まりの頃、お伺いします」
無難に下がって、マスターにちょこっと話した。
耳打ちするのに、身体をくっつけて長身イケメンマッチョの耳をはむはむする感じで内緒話をすると、常連のお客さんからは、
「カイ君のくせに生意気~、」ってさ。
ドラ〇もんかよw
「カイ君が魔法使いになれたら、お祝いしてあげるからさ~」
どっかの偉い部長さんがそう言ってくれた。
「だから、お金くれたらもらってあげるよ」
まだ悪乗りしてるお客さんがしつこく言ってきた。
「だめですよ~w 魔法使いになったらかっこいい彼氏をランプで出すんだから」
それを最後に、今日は上がらせてもらった。
だって、やばいじゃん、派遣契約まだ残ってるし、今の派遣先の誰かとかさ。
ださださ伊達メガネはかけずに、「お先に~、お疲れ様でした~」って店を出た。
こわいこわい
あ~週末にひとりか~思いがけず早退になっちゃったし、たまには新規開拓で飲みに行くか、と気を取り直してスマホ検索しながら店を探した。
繁華街の少し離れたところに、ゲイバーがあるらしい。
ちょっと覗いてみて、変だったら帰ろうっと。
いろんな雑居ビルの2階にあった。
かなりしっかりしたバーだった。雰囲気は・・・高級過ぎない感じのお店。
でもカウンターが一枚板で作られてたりとか・・・・実は高級店か?
手持ちで足りるかな?なけりゃ、クレカ切るか・・・・。
1
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説
幽閉された魔王は王子と王様に七代かけて愛される
くろなが
BL
『不器用クールデレ王様×魔族最後の生き残り魔王』と『息子×魔王』や『父+息子×魔王』などがあります。親子3人イチャラブセックス!
12歳の誕生日に王子は王様から魔王討伐時の話を聞く。討伐時、王様は魔王の呪いによって人間と結婚できなくなり、呪いを解くためにも魔王を生かして地下に幽閉しているそうだ。王子は、魔王が自分を産んだ存在であると知る。王家存続のために、息子も魔王と子作りセックス!?
※含まれる要素※ ・男性妊娠(当たり前ではなく禁呪によって可能) ・血縁近親相姦 ・3P ・ショタ攻めの自慰 ・親のセックスを見てしまう息子 ・子×親 ・精通
完全に趣味に走った作品です。明るいハッピーエンドです。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
魔王と使い魔の勇者調教計画
桜羽根ねね
BL
伝説の杖に選ばれたナルシスト勇者アレクは、魔王を倒すために旅をしていた──ら、捕まった挙げ句に魔王の嫁にすると言われ……。
魔王バーレットと使い魔プラチアによって、えっちいことされちゃう勇者様のハッピーエロコメです。
過去に書いた話を改変しました。
ひとまずここで完結です。気が向いたら続きを書くかもしれません。予定は未定!
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
リプレイ!
こすもす
BL
芸能人×大学生
修介は、恋愛のトラウマから今後絶対にイケメンを好きにならないと誓って、心機一転新しい土地で新生活をスタートさせる。
そんな中、バイト先で知り合った翔平に紹介されたのは、人気絶頂若手イケメン俳優の景(けい)だった。
自由気ままな景に翻弄されつつも、修介の気持ちに変化が訪れる...?
景は修介のトラウマを克服する事が出来るのか?!
☆
完結済のものをこちらにも少しずつ公開していきます。
人生初の作品なので、拙いです(´×ω×`)
芸能界の事やその他もろもろ、フィクションです。
主人公が関西弁を使っていますが、作者は関西人では無いので知識があまりなく、妄想の中で書いております。その為間違った使い方をしている可能性が大です。
それでも大丈夫、という方だけお読みくださいませ。苦情は受付けられません〜(*^^*)💦
コメディ要素強めです。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
表紙:葉月めいこ様
挿絵:氷月詩乃様
夜かかる魔法について
狗嵜ネムリ
BL
【縦書き読み推奨】都内のゲイ向け男性用風俗(売り専)で働く響希と翔宇。二人は中学時代からの親友だったが、当時からずっと、響希は翔宇に対して親友以上の気持ちを抱いていた。
想いを伝えられないのは、二人とも攻め気質──いわゆる「タチ」だったからだ。
ある日他店のボーイである零と翔宇との三人で遊びのセックスをした帰りに、響希は翔宇から「零のことが好きだ」と告げられてしまう。
響希はショックを受けながらも、「今まで通り翔宇が傍にいてくれればいい」と思い込もうとするが……
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる