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誓い
しおりを挟む他の精霊王を同じように求められるかと聞かれたら、ライデン程には求められない。
全員に娶られると最初に聞かされていたから、それを受け入れただけで、欲しいのは居場所と愛されたいと言う気持ちの引き換えだけだったから。
それこそ家族って気持ちが正解だと今なら気づく。
必要とされて、居場所があって、笑い合える友達より近い存在が、他の精霊王達だと思った。
「ライカ、ターセル達精霊王立ち合いの元、伴侶の誓いをしてくれないか?」
「誓い?」
「そうだ、謝罪がてら立会人として、悔しがらせてやろうぞ」
まるで子供がいたずらを仕掛けるように、ワクワクした笑顔でライデンが提案した。
そこへ王太子が割り込んで来た。
「あの、ライデン、様?伴侶とは」
王太子が俺が呼んでる名を気にして確認してきたところで、不機嫌をもろに出し険しい表情で睨みつけた。
「あ、あの、ライデン様、私を伴侶にしていただけないでしょうか?
私はいずれ国の王になりますし、身分としてもライカ殿では勤まりますまい。
力が必要と言うのであれば、ライカ殿はそのまま側室としてお迎えなされば良いですし、私がお気に召さないのでしたら王族にはライデン様に見合う者が必ずおります!」
「殿下!!
お止め下さい」
「ライデン様!
私を、私の国の者をどうかお娶り下さい!!」
ライデンは険しかった表情を消した。
「黙れ、その名を呼ぶ野はライカ以外にいない
次に呼べば、その体を腐らせるぞ」
氷よりも冷たい声で王太子に警告をした。
「ライデン、もう、行こうよ」
警告通りにライデンは王太子の体を腐らせるだろうと分かっていたから、この場を去ろうと袖口を引っ張った。
「ライカ殿!無礼であろう!
私とライデン様が話を」
「殿下!!ダメです!!」
宰相が王太子を必死で止めたけど、既に王太子はライデンの名前を呼んでしまった後だった。
「精霊王様!
どうか、どうかお許し下さい。
こんな愚かな者ですが、国を思っての事です!」
宰相は地面に額を擦り付けて、懇願していたけどその間にも王太子の体は腐り始めていた。
「許すわけ」
「許さないですよ。
このライデンの名は、俺が名付けて俺だけが呼べる名です。
無礼と言いましたが、この中で一番高位なのはライデンです。
その伴侶の俺がその次です。
そこから人の世界での王太子ではありませんか?
その王太子の死に免じて、最低限の水は供給出来るように精霊たちを説得します。
でも、それだけです。
これからは精霊の力を使えるとは思わないでくださいね」
ライデンの言葉を遮って俺が、許さないと言った。
これ以上、カシュクールにとって不利になることをして欲しくなかった。
王太子の失言はもう取り返しがつかない事で、それに許しを請うのは間違いだった。
既にユアの魅了魔法は解呪されているのに、アレはおかしいだろ?
国として、魅了魔法に掛かっていなくても、おかしい国民性だったと言う事だ。
「ライカ殿、殿下は愚かですが国民は懸命に生きているのです!
どうか!」
う~ん、確かにカシュクールでカフェを開いた時、庇ってくれたりした人たちには恩があるし…。
「分かりました。
王侯貴族には精霊の力を貸さないようにします。
国民には僅かばかりですが、貸し与えましょう。」
「っ!
…はい、ありがとうございます。」
宰相は何か言いかけそうな口元をしたが、言葉を飲み込んだのが分かった。
これ以上、カシュクールの要望を聞く必要は無いと思うんだけど、俺の常識がおかしいのか?
「俺は、ユアの事も、王太子の事も、もちろんあなたの事も、そして魅了魔法に掛かってるからと言って、俺を追い出したり酷いことをした方々を許すことなんか出来ない。
ただ、起こり続ける気力も続かないから、いつかは許すかもしれない。」
時間が経つことで癒やされるものもあるって、今までの自分が知っているから無理に許す方向へ持っていくつもりは無かった。
「納得したな?
ライカ以外の伴侶はいない。
次、このような発言を聞いた時は、国を滅ぼされると肝に銘じて子々孫々同じ間違いを犯さぬように」
ライデンがドヤ顔で言ってるけど、その原因の一つになってるだろって突っ込みたいのを我慢した。
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