15 / 29
全ての光
しおりを挟む光の精霊王はターセルと名乗った。
「ライカです。」
「ターセルだ。
皆が言う様に、清浄な力と綺麗な魂だ。
ライカ、抱きしめて良いか?」
改まって言われると気恥ずかしい物で、多分顔を赤くしていたと思うけど、頷くしか無かった。
「ふっ、可愛いな。」
文字通り、包み込む様な優しさで抱きしめられた。
光だからなのか、凄く暖かい気持ちにもなった。
「あの、俺、その
どうして俺なのか分からないんですけど、家族になる以上は、絶対離れないし皆んなで幸せになりたいんで!」
「はっはっはっ!
これか、この心に皆が惹かれるのだな。
私も例外なく、ライカ、お前を愛するよ。」
光のターセルを見上げれば、キラキラ光る金髪と蒼碧の瞳が笑っていた。
「ターセル、ライカは可愛くて綺麗だろ?」
「ああ、シイラ、間違いなく私たちの愛しい子で、家族になる子だな。」
家族って実はよく分かってない。
だけど、助けたい守りたい、愛したい愛されたい、そう言った物全てを与えたいのが、多分家族なんだ。
「あまり、長居は出来ないが、精霊界で何れは暮らす事になるだろうから、それまではこのキスで我慢しよう。
シイラ、呉々も先に手を出すでないぞ?
昨夜の様なのは、これっきりだ。」
「ふふ、分かっているよ。」
そう言うと、俺に昨日シイラがした様な舌を絡めるキスをした。
ん、ちょっと、下半身が緊急事態になりそうです!
軽く朝食を摂ったら、テントとかの荷物をバッグに入れて、その場を後にした。
山を下りたら道がまた繋がった。
「ライカ、これから先の枝分かれした道で、私は一旦離れるが、何かあれば私たち精霊王の誰かの名を呼べ。」
「一旦、離れるだけだよね?
そのまま、お別れなんて事ないよね?」
「大丈夫だ。
既に、ライカとは約束が締結されている」
シイラは俺のオデコにキツくキスをした。
「分かった、俺はどこかの国に行く。
そこで、シイラ達が迎えに来てくれるのを待つよ。」
ここで駄々を捏ねても、良い事なんか無いのも十分理解してたし、今までの経験上、こういう時は何も変わる事は無いんだ。
運が無いのは俺の宿命かもしれない。
だから、笑って困らせない様に、涙なんか流しちゃいけない、枝分かれした道でシイラと分かれた。
「ありがとう、シイラ」
姿を消したシイラを見届けて、五叉路になってる道を右に曲がった。
右側は森が見えて、沢山の小さな精霊がいたから、きっと良い森なんだと思ってそちらへと足を向けた。
この異世界に来て、初めていた場所は石畳で出来た道だったけど、本来ならこんな風に踏みしだかれて出来る様な道が殆どなんだ。
カシュクールは、随分と技術が進んでいた事に気付かされた。
だから、魔力が少なくなったんじゃ無いかな。
科学が進めば、そんな力を必要としないし、魔力量に不公平感を覚えた誰かの、努力した結果の様な気がした。
森の中に入ると小さな精霊たちが楽しげに、俺に挨拶をして来た。
ー愛し子、笑ってるね。
この世界に来てくれてありがとう。
王たちが笑ってるのは愛し子が居るから。
僕たちも、あったかくて、楽しいー
そんな声が聞こえてくれば、俺だって嬉しいしこんな小さな子たちの為に、何ができるだろう?って考えたよ。
木漏れ日は気持ち良いし、この森に住みたいくらいだ。
そうしたら国や人の争いから逃げられないかな?なんて本気で考えた。
パキッ!
俺のとは違う、枝を踏んだ音がした。
警戒しながら振り返ると、ジョージとクイン、そして騎士隊長のクランが立っていた。
「ライカ、貴様を救世主ユア様の魔力供給を邪魔した罪で、拘束する!
やはり、貴様は害を成す者だったな!」
それ、どんな罪だよ。
「はあ?
ユアから俺が出て行けば魔力供給するって約束したんだ!
それに邪魔をしたって言うなら、俺を捕まえずにその辺で野垂れ死でもさせろよ!
魔力も無いんだから!」
一瞬、騎士隊長クランが怯んだ気がした。
ジョージとクインは、真っ青な顔で歯を食いしばっているし、何か態度もおかしかった。
「ジョージ?クイン?
どうしちゃったの?」
「くっ!
あ、ラ、イカ、逃げて」
まるで自分の体が言うことを聞かないかの様に、腰の剣を必死で押し留めているようだった。
「ジョージ!!
クイン!!
あんな、救世主の魅力魔法なんかに負けるなよ!!」
悔しくて思いっきり怒鳴っていた。
12
お気に入りに追加
318
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる