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この世界での価値
しおりを挟む謁見の間って所から廊下へ出ると、ジョージとクインが待っていた。
「ライカ、どうだった?」
「本当の救世主様が来たので、街で暮らす許可もすんなり頂きました。」
まずは住む所と仕事を探さないとな。
「なら、私たちと暮らせるな」
二人の騎士が嬉しそうにしてるし、この世界で一人で暮らして行けるまでは色々教えて貰いたいけど、やっぱり娶るって言葉を聞いてるし、距離を置きたいかなぁ。
「まずは街へ出て、商売をするにしてもどんなのが良いか、見てみたいから街へ行くよ。」
それに本当の救世主様が王宮にいる俺を見たら、嫌な気持ちになるだろうしね。
「私たちも街に住めば良いだけだ」
怯まないねぇ。
「じゃ、じゃぁ、街を案内してもらっても良いかな?
この世界のお金の仕組みとか分からないし。」
そうお願いすると、二人はニコニコと笑いながら、すぐに支度をすると言って走って行った。
王宮の中、走っても良いのかな。
さて、待ち合わせの場所は、城下へ出る門の前でって言われたので先に荷物を持って立っていた。
あー、このスーツもヨレヨレだし、クリーニングは無いだろうけど洗濯ぐらいしたいなぁ。
着る物を調達しないと着替えが無いことに気づいた。
お金も。
こちらの貨幣は全く持ってないし、何処かで何か売ることを考えないといけない。
まるで高校生の時にどうやって暮らそうって考えて、持っていた物を数百円で売ったのを思い出して、ちょっと苦い気持ちになった。
ビジネスバッグの中のメモ帳とか沢山あれば、売っても良かったのにな。
こっちの紙はこんな薄いのは無いし、きっと高値で売れるんじゃないかなぁなんて、取らぬ狸を想像してた。
「ライカ!!
お待たせ!」
ジョージとクインが物凄い笑顔で手を振りながら来た。
しかも甲冑とか脱いで、マッチョな筋肉を好きなだけ晒して、体にぴったりな服装で現われた。
「あ、えっと、露出高くない?」
「ライカのその服が凄くかっちりしてるだけで、これが普通だよ」
クインが普段着はこんなもんだと言ったけど、男の俺の目から見てもエロかった。
「でも、その服ライカの匂いがして、凄く良い」
お風呂にも入ってないし、着替えもないからね。
おパンツとか野性的な匂いになってると思う。
汗とか、排泄物とか、もう、考えないようにしてたのに、獣人だから嗅覚も鋭いんだと思った。
「あの、ちょっと離れて。
恥ずかしいし、その着替えとか買ったら、これも洗うから」
「え~勿体ないよ~
こんな甘い匂い、初めて嗅いだよ」
両サイドから挟まれて匂いを嗅がれた。
甘いはずなんか無いんだ。
それこそ、言いたくないけどちんちん洗ってもないし、お尻だって洗ってないんだ。
排泄臭がするはずなんだ。
「もう!
とにかく、俺は住む所とか色々やらなきゃいけないんだから、手伝ってくれるんじゃなかったの?!」
渋々といった体で、二人は離れて行ったけど、早急に着替えと風呂事情をどうにかしたかった。
門番は、二人と見るとカード公爵様と恭しく頭を下げて送り出した。
俺は昨日発行された身分証明書を提示して、ありがとうございました、と告げて出て行った。
もう、この王宮に戻る予定は無いからね。
二人を追いかけるように、後に続いた。
街ではまず商業ギルドと冒険者ギルドを紹介してもらって登録すると、早速、持ち物の中で売れそうな物を探した。
バッグの中を見ると、メモ帳の数が増えていた。
え?さっきもっと沢山あったらって思ったから?メモ帳の数は十冊になっていた。
一冊取り出して見ると、俺の走り書きのメモもそのまま複製されていた。
その一枚を破り取って、商業ギルドで買い取れるか聞いてみた。
「これは!!
こんなに薄い紙が存在するとは!
しかもこれは、冊子の様で冊子じゃないのですね」
商業ギルドの受付の中年男性は長いうさ耳をピョコっと折りながら、興奮気味に鑑定して俺に全て買い取りたいと言ってきた。
一冊だけ残して、全てを売った。
当然、一枚目のメモは売る物全て破り取った。
「大金貨90枚です。」
中年うさぎは、金貨で支払ってくれた。
一冊大金貨10枚で売れた計算だった。
「ライカ、凄いよ。
大金貨1枚で、一年は暮らせるんだから。」
大公爵の二人に言われたくないなぁ、と思いながら大金貨では暮らしにくいので、なるべく小さい額のお金で支払って貰うことにした。
「そうですね、街で大金貨を出しても釣銭に困りましょう。
それに大金貨を持ってると知られれば、強盗に狙われる危険もありますからな。」
半分を小金貨450枚で貰い、残りは大金貨45枚で貰った。
バッグは無限に収納出来るから、金貨の重さは感じなかった。
「住む所を探しているんですが、何処かいい家屋はありませんか?
一人なので、そんなに広くなくていいです。
それに、慣れたら旅にも出たいので…」
それを聞いた二人が、突然目をむいて、口を挟んできた。
「ライカ!、一緒に住まないのはまだしも、旅に出るってどういう事?」
「慣れたら、だよ。
この世界の事何にも知らないし、せっかく冒険者ギルドに登録したんだから、冒険者ランクも上げたいしね」
それよりも早く住むとこ見つけてお風呂入ってゆっくりしたい!
この世界に来て、しっかり寝てないから、段々、辛くなってきた。
「それなら、丁度良い所がありますよ。
元々は小さな薬局だったのですが、裏は庭になっていて好きにできます。
カウンターがあるので店舗としても良いでしょう。
二階が住まいに出来ますので、商売も可能です」
中年うさぎに教えられて、内覧のあと即契約した。
大金貨5枚程で買えてしまった。
この世界の物価が余計分からなくなってしまったけど、急いで掃除して日用雑貨や着替えを買ってお風呂に入って寝る!それが今日の最終目標だった。
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