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収監

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 連れて行かれた所は、まぁ想像通りの牢屋でした。
 石造りで、冷たい床、寝具や暖を取るものは何も無かった。

 こっちとしては、色々試したいし一人になれるならこんなに良いことはないから、おとなしく収容された。
 
 食事は出されなかった。
 この扱いはどうかと思うよ?
 食事は出して欲しかった。
 まだ罪人として裁かれたわけじゃないのに、この扱いはどうなんだろうって憤りを感じたが、割と慣れっこになっていたってのもあって、七日くらいなら食べなくてもどうにかなる生活をしていた。
 俺のいた施設は、そんなに悪いところじゃなかった。
 でも、飛び出しちゃったんだよね。
 他のちび達が入ってくれば、部屋も足りなくなる。
 それまでだって二段ベッドを四台入れて、結構ぎゅうぎゅうな生活だったけど、それ以上に俺の食い扶持を減らした方が良いと思ったから、高校を夜間にして昼間は働いた。
 それと同時に一人暮らしをして、昼間バイトするくらいじゃ家賃払って光熱費払ったら、殆ど食費なんて残らなかった。
 その頃から食費を減らすためにも、七日くらいはまともに食べない生活をしていた。
 高卒で介護用品の会社に入って、車の免許が無いと仕事にならないから、合宿で取ってってしてたらローンが中々完済できずにやっぱり、食費を減らしてた。
 だから、別に大したことは無かった。

 
 

 さて、と。
 ビジネスバッグの中から、スマホの充電器を出して充電した。
 充電はしてるから、ちょっと放っておこう。
 次は、カバンの中を掻き回すようにして手に触った物を出していくと、ボールペンとメモ帳が出て来た。
 大字2丁目の高橋さん、腰の調子が悪いので、歩行器を試す、なんてのが書かれてた。
 おばあちゃんに、試させてあげたかったなぁ、ごめんね。って心の中で謝った。
 これからこの世界でどのくらい生きられるか分からないけど、メモを取ろうと思う。
 きっと何か新しい事を経験できるから、ルールを覚えて行かないといけなかった。

 スマホがちょっとだけ充電出来て、起動できた。
 懐かしいリンゴマークに、ほっとした。

 そんな事をしていたら、人の気配がしたので急いでカバンに入れた。

「お前、今日入れられた奴だろ?」

 囚人扱いで、牢屋に入れられてるけど、まだ罪状決まってないのになぁ。
 鍵を開けて、看守が入って来た。
 
「あの、まだ、何も決まっていないですよね?」

「ああ、だからその前に身体検査をするんだよ」

 下卑た表情で察した。
 エロゲー的な展開か、ただの暴力か。
 俺は華奢だけど一応男で、ちんちん付いてるんだけどなぁ。
 割と冷静に対処していたと思う。
 
「可愛いなぁ。
 明日裁かれたら、良いところ追放だろうから今のうちに味わっておこうと思ってな」

 明日、裁かれたら、もう、この世界とはおさらばかもしれないな。
 なら、ここで暴れても一緒じゃね?

「可愛くて綺麗だ。
 小さいところもいいなぁ」

 グヘグヘと笑う看守が気持ち悪かった。

「やめろ!!」

「抵抗するところも可愛いなぁ」

 普段から食べてないから、華奢で成長もしていない体は女子の平均身長くらいしかなかった。
 介護で力を使うけど、コツがあって筋肉とかじゃないから、こんな力業には抵抗しようがなかった。

「嫌だ!!
 明日、裁きを受けるなら、今殺してくれて構わない!
 でも、こんなのは嫌だ!!」
 
 押し倒されて、体を弄るのが気持ち悪くて、吐く物も無いはずなのに吐いた。

「汚ねぇな」

「うぐっ、げぇぇ」

 騒ぎを聞きつけて他の看守が来て、俺は救われたはずだった。
 その駆けつけて来た看守の中には、ここへ連れて来た騎士も含まれていた。
 確か部下のジョージとクインだ。

「おい、何をしてる!!」

「申し訳ありません、こいつが具合が悪いって言って俺を誘ったんでさぁ」

「本当に具合が悪そうじゃないか!!」

「げへへ、いや、これは演技ですよ、演技」

 クインが俺を抱き起して、牢屋から出してくれた。
 ジョージが荷物を抱えてくれて、ちゃんとしたベッドのある部屋へ運んでくれたんだ。

「クラン隊長より、裁きも決まっていないのに、囚人として牢屋へ入れるのはおかしいと言われて、迎えに来たんだが、看守らはあのような事を日常的に繰り返していたんだろう。
 済まなかった。」

「あぁ、この国ではそれが当たり前なのかと思っていました。」

 吐き気が落ち着くと漸く、騎士の二人の言葉を聞くことが出来た。

「それは申し訳なかった!
 監督不行き届きであった。」

「もう、良いですよ。
 助けて下さったんですし。」

「その、サノヤマ・ライカ殿は、そんなに小さいのに、私どもより年上というのが信じられませんでしたけど、この対応で納得しました。
 それに、その、凄くお綺麗で可愛らしいので、その、もし、何かあったら絶対力になりますから!」

 どうしたんだ一体。

「あの、俺男ですし、可愛いとか綺麗はちょっと」
 
 苦笑いをしながら言うと、二人は直立不動になってそんな事ないと否定した。



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