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母、ルドヴィカ

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 ギモーブはきっちり着込んだ執事服の下に、調教で縛られた荒縄をそのまま装着していた。

 スカした顔をしているが、体に赤く跡がつく位縛り上げられ尚且つ下半身は所謂貞操帯で管理をされていた。
 それを外で公然とやってのけた二人に、あっぱれというかドン引きしたと言うか、どうにも落ち着かない状況だが当事者のギモーブだけはさっぱりとした満足感で、初対面の時とは違った丁寧な態度で接してくれていた。

 もやもや感はあるけど。

「フィナンシェにはローレンツォ様を確保してあると連絡し、モンブラン公爵がローレンツォ様を再び手に入れたがっていることで計画が頓挫していると付け加えた所、急ぎ、こちらへ来るそうです」

 それだけの事で?

「余程、ルイを殺したいんだな」

 パパリーヌはうっすらと笑っていた。

「何故そこまでするんだ?
 ギモーブはその理由を知っているんだろ?」

 モンブラン公爵が問いただしても、ギモーブは答えなかった。

「ムギチョコちゃん、答えなさい」

「はい! 喜んで」

 ミルフィーユの命令であれば即座に答えを言ってきた。

「フィナンシェは王族の血を引いてはおりません。
 先代国王陛下の子ではなく、前王妃が宮廷騎士と不貞をして出来た子です。
 産んだ時に自害された前王妃を不憫に思った先代陛下が実の子として王族の一員にしましたけど、宮廷騎士が野望を持ったらしく、フィナンシェに出自を暴露したようです。
 ですから、現王妃の子である王太子も全く王族の血を引いてはおりません。
 現在の継承権第一位は、ローレンツォ様にございます」

「なんの証拠も無いです」

「御座います。
 フィナンシェが人を雇ってルドヴィカ様より赤子だったローレンツォ様をさらって、孤児院へ捨てるように指示を出しました。 
 そして、その指示を受けたのが私でございます。
 ですから間違えようがございません」

「それが証拠になんて」
「なりますよ、そのハニーブロンドはガレットデロワ家の遺伝でしか生まれない色なんですよ」

 遺伝でしか生まれない色、そんなのがあるんだ。

「それに、ルドヴィカ様のお顔に年々似て来ていらっしゃいます」

「じゃぁ、ルドヴィカ様は、お母様はどうなったの?」

 生きてるの? 死んでるの?

「……」

「答えなさい、虫けら!!」

「生まれて数カ月のローレンツォ様を誘拐したあと、ルドヴィカ様は心が壊れてしまい毎日赤子のローレンツォ様を探して、行方知れずになってしまいました」

 そして付け加えられた言葉は、恐らく死んでるだろうと。

「そ、うか、そうだよね」

「人知れず産んで育てようとしていたルドヴィカ様から、ローレンツォ様を誘拐して捨てたのは私でございます」

 命令されただけの人だから、と考えてみたり、赤ん坊を母親から取り上げる鬼畜だと怒りも湧いてきたりしたけど、結局は孤児院で育った時間が長すぎて他人事の部分が強かった。

「うん、僕が、本当にガレットデロワ家のルドヴィカ様の子供だって分かっただけでも、嬉しいよ?」

 気にしないで、大丈夫だから、って周りに言うと、なぜかミルフィーユが泣いていた。

「ローレンツォ、私が抱きしめてあげるから、この先何があっても君を泣かせない。
 でも今は亡き母君の為に泣いてくれていいんだ」

「え? あの、僕、公爵様とやり直す気も一緒にいるつもりも無いですよ?
 自分の幸せは、自由に生きてこの先愛せる人が出来た時考えます」

 ミルフィーユはうんうんと頷き、ヌガーもパパリーヌも僕の肩を抱いてくれたり、頭を撫でてくれた。
 そして着替えやら色々世話をしてくれた団員の女性はその胸に頭を抱き込んで、良い子ねって言ってくれた。

「なんで、何でだ?」

「え、普通あんなに冷たくあしらった上、使用人達から蔑まれ、宝石泥棒扱いされて、誰が一緒にいるとか好きとか嫌いとか幸せだとか考えます?
 逃げたいとしか思いませんよ。
 ほんと今更過ぎて、ただの演技だとしか思ってませんでした。
 でも、ずっと演技する意味が無いので、まさか本気なのか?って考えたら、非常に気持ち悪いので変なこと言わないでくださいね」

 大袈裟に崩れ落ち、ここは舞台の上だったかと思うほど、大きいリアクションで何やらセリフを言っていた。
 
 
 



 


 


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