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反逆

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 確かにこの人、いやこの方が神官長様なのだろう。
 だが、強盗団と行動を共にしているのは解せなかった。

「ボンクラ公爵さんは本当に血の巡りが悪いなぁ」

 大剣を自称副神官長の肩口にサクッと突き刺して、身動きできなくさせた上で馬上から降りてギモーブと対峙していた。

「まあ、ボンクラでしたから私も動きやすかったんですがね。
 強盗団のくせに王弟殿下の命を受けた私に歯向かうという事は、王族に剣を向けたとみなしますよ?」

「ああ、構わねーよ。
 だがな、俺たちが剣を向けたのは王弟殿下と、その後ろにいるもちっと、位の高い誰かさんなんだがな」

 ムッとしたギモーブが、失敬なと吐き捨てた。

「フィナンシェ様と王妃様にと言うのですね?」

 王妃も、か。

「ギモーブ! この件には王妃も与してるのか!?」

「与するなんて、愚かな。
 王弟殿下フィナンシェ様は国王になるお方、そして王妃様は真の王妃になられるのです。
 そして、憂いとなる王太子殿下も真の王太子殿下としてね。
 お世継ぎも正統な血筋が既にあるのですから」

「つまりは、国王陛下の子ではなく、王弟殿下の子だった、という事だな?」

「今更ですがね。
 いま、城ではフィナンシェ様が兄君の国王、いや、元国王を討っているところでしょう」

 大義を成してると言わんばかりに語るギモーブが、心から傾倒して王弟に従っているのが分かった。

「反逆者になり下がった、という宣言をしてくれてありがとうよ」

「はぁ? 反逆者ではありません!
 国王を討てば、反逆者ではなく国王になるのですから!」

 なんともおかしな理論だが、王室では幾度となく繰り返されて来た歴史の一つだった。
 今回の様に兄弟で親子で争う場合もあれば、全くの他人が立ち上がって討たれる場合もある。
 王族の血筋だなんだと言っても、数代血縁関係というだけで実際はどいつもこいつも、私も含めてどこの馬の骨とも分からない血筋って事だ。

「ギモーブとやら、正当な血筋などすでに存在しないのは明白であろう?
 歴史書にも記載されておる。
 それなのに正当な血筋とは……嗤えるな」

「ふ、言いたいことはそれだけか、たかだか神殿の大神官長だからと神に匹敵するわけではあるまい?
 フィナンシェ様が王座に就いた瞬間から、この国は変わるのだ。
 建国された初代の王としてな」

「お、なんだ? 国名を変えて初代の王を名乗っちゃうって事か?」

 バカにしたように眼帯の大剣男が言うものだから、ギモーブはイライラとして来ていた。

「おしゃべりはこのくらいにしましょう。
 そこのルイを渡しなさい」

 馬の上で他の強盗団の一人に抱きかかえられるように、ぐったりと目を瞑っているローレンツォの目が開くことを願った。

「私は王弟殿下に逆らわない、だからローレンツォも助けて欲しい」

「貴方が逆らわなくても、逆らったとしても、そこのルイは殺しますよ。
 だってねぇ、元国王のご落胤なんて国が乱れる素じゃないですか」

 ギモーブがおかしなことを言った。
 ローレンツォが、ご落胤って。
 ご落胤ってなんだ?
 私が知ってる言葉の意味と同じだろうか?

「国王陛下の派閥って厄介な奴らが多いんですよ。
 担ぎあげられて、王権を奪還とかいう動きになったら困るじゃないですか」

「それは王弟の人気が無いって自分で言ったようなもんじゃね?
 厄介な派閥ってのは上位貴族連中の殆どで、力関係は兵力財力共に高い連中だろ?
 その点で言うなら、王弟には新興貴族しかいないって事だよな?
 古参の歴史ある家門は誰一人、王弟の事なんざ認めていねぇ」

 眼帯の大剣男は、はっきりと王弟は器じゃないと言った。
 私は二人の、いや、大神官長との話も含めて、今初めて知る事ばかりだった。







 何よ、この展開!
 ローレンツォが王様の子供って!
 これラノベでもゲームでもないじゃない!
 ただの平行世界? それとも偶々名前が似ていて境遇も似通った世界って事?
 
 でもモンブラン公爵を助けてあげたいって気持ちに変わりは無くて、どうにかこの均衡を破る手段は無いかと考えてる自分が好きだった。

 ただ、途中から見ているだけの私では、どうしたものだろうか、とそれしかなかったけど。
 アイテム、何かあったかしら?
 そうだ、私のスキル『息吹』!
 あのギモーブって奴の足元の草を急成長させられないかしら?
 そしたら隙も出来るんじゃないかって考えた。

「息吹」

 お願い! あいつの足元の草たち、あいつの邪魔をして!!!

 すると、初めてスキルが発動した。
 庭で争ってくれていたことも良かった。

「な、なんだ! これは」

 あいつの周りだけ、色んな草や本来なら雑草として抜かれちゃうような蔓があるような草が、どんどん伸びて絡みつくとうまく拘束してくれた。

「やった!!!」

 思わず立ち上がってしまって、大注目を浴びることになってしまった。




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