26 / 61
企み
しおりを挟む早い馬に乗せられて、夜の間中走り通した。
優しい女将さんがいた隣町で馬を乗り換えると、また、走り続けた。
「ルイ、もう少し我慢してくれ!」
もう、限界とかお尻が痛いとか、言おうと思えばいくらでも言えるけど、それどころじゃない事は良くわかっていた。
「平気です」
そう告げるだけで精一杯だった。
団長とヌガー、それにかなりの団員が一斉に移動する様は、かなり異様だったと思う。
移動を始めた時に聞かされたのは、陛下の安否が分からないこと、そして、誰がモンブラン公爵家に入り込んでいるのか、公爵自身はどうなっているのか、実際は何も情報がなく僕を囮にするしか無いと言うことだった。
でも確実に王室が、いや、王弟と王妃が絡んでいるという事だった。
「危険な目に合わす、断ってくれても構わない」
「断ったら、どうするつもりなんですか?」
二人は押し黙り、多分、このままカヌレ団全員で王弟と王妃を討に行くつもりなんだ、と簡単に想像が出来た。
「決めた事なので、行きます。
その代わり、僕が誰の子なのか、ちゃんと分かる様にしてください」
二人を少しでも安心させる様に微笑んだ。
「っ! もちろんだ、ありがとう……!」
陛下とルドヴィカの友達だと言う二人はにとって、今起きている事は心配で堪らないのだろう。
震えている指先が、それを表していた。
「ローレンツォは無事なのか?
ギモーブが」
「しっ!!」
思わず声に力が入ってしまった。
「我らが保護しています。
こちらへ移動していますが、公爵には今まで通りの態度でお願いします。
王弟と王妃の企みを詳にするためにも」
やはり、そうだったのか。
「ギモーブは、王弟殿下から紹介されて来た者で、私の行動は全て筒抜けだと思う」
「存じております。
我々も、団長より動ける者全て、こちらの公爵家に潜入させていただいてますから」
頼もしい味方が出来たと安堵した。
コンコンコン
「なんだ?」
「入っても宜しいですか?」
「あ、ああ、構わない」
話していた恐らく、カヌレの団員は私の答えを促がし、また音もなく消えた。
一体どんな魔法なんだ!
「旦那様、ローレンツォ様の状態ですが、こちらに来るまでに事故に遭われた様で、半死半生との事でございます」
「何!! どう言う事だ!!」
「詳しくは着いてからになりましょうが、神殿の神官を待機させますか?」
信用できる神官とは限らない。
考えていると、先程の者の小さな声が聞こえた。
<神官長、パパリーヌを指名して下さい。
以前フロランタンから紹介された、と>
「うむ、それなら神官長のパパリーヌ様にお願いしてくれ。
以前、社交場で知り合ったフロランタンから紹介を受けている」
パパリーヌの名前が出た時、一瞬だけ眉が寄せられ直ぐにいつもの仮面の様な笑顔に戻った。
「ではパパリーヌ神官長のご予定が合うか確認してもらい、お願いしてみます」
「ああ、急いで頼む。
フロランタン殿の名前を出せば必ず来て下さるよ」
「、畏まりました」
やはり治療と偽って殺すくらいの計画だったのかも知れない。
ギモーブが部屋を出てしばらく様子を伺った。
扉の外にいるのではないだろうか、と。
「行った様です」
「うぁ、どこにいたんだ?」
彼は無言で指を上に突き出した。
「天井? 空?」
「上に張り付いていました」
もはや、どうやってとか聞く気力もなかった。
48
お気に入りに追加
1,413
あなたにおすすめの小説
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
初恋の公爵様は僕を愛していない
上総啓
BL
伯爵令息であるセドリックはある日、帝国の英雄と呼ばれるヘルツ公爵が自身の初恋の相手であることに気が付いた。
しかし公爵は皇女との恋仲が噂されており、セドリックは初恋相手が発覚して早々失恋したと思い込んでしまう。
幼い頃に辺境の地で公爵と共に過ごした思い出を胸に、叶わぬ恋をひっそりと終わらせようとするが…そんなセドリックの元にヘルツ公爵から求婚状が届く。
もしや辺境でのことを覚えているのかと高揚するセドリックだったが、公爵は酷く冷たい態度でセドリックを覚えている様子は微塵も無い。
単なる政略結婚であることを自覚したセドリックは、恋心を伝えることなく封じることを決意した。
一方ヘルツ公爵は、初恋のセドリックをようやく手に入れたことに並々ならぬ喜びを抱いていて――?
愛の重い口下手攻め×病弱美人受け
※二人がただただすれ違っているだけの話
前中後編+攻め視点の四話完結です
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと
糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。
前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!?
「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」
激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。
注※微エロ、エロエロ
・初めはそんなエロくないです。
・初心者注意
・ちょいちょい細かな訂正入ります。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
離縁しようぜ旦那様
たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』
羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した
どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと?
これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
カクヨム、小説家になろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる