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カヌレ団

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「こぉら!! ヌガー何やってんだ!!」

 空気までがビリビリとする怒号を響かせたのは、その音量に似合わないやたら綺麗な男だった。
 美形、美男、び、美中年、あと何があるかな? まあ、ラノベにいなかったキャラだと言う事は確かだった。

「団長! 待ってたぜい!」

 僕を肩に担いだまま、後ろから来た美形、美男に振り向きざま、団長と呼んだ。

「お前、潜入とか隠密行動とか意味わかってんのか?!」

 団長と呼ばれた男性の周りに、わらわらと荒くれ者といった風体の男達が集まって来た。

「しかたねーだろ、この坊やが捕まりそうだったんだ。
 それに、漸く裏が取れたぜ」

「そうか、なら場所を変えよう」

 そう言うが早いかまるで忍者の様に、みんなの姿が消え失せて、僕らもまた知らない場所へと瞬間移動したみたいだった。



「ルイ君、どっか、痛いとこはないか?」

 ヌガーが優しい声で聞いて来た。

「ない、けど、ここどこ?」

 情けない迷子の子供みたいに不安になった。

 明るかった先ほどまでの屋外から、一転して薄暗い地下と思わしき空気の部屋へと変わっていた。

「もっと食って太れ、じゃないと骨が当たって痛かったわ」

「な! 骨だなんて!」

 ニヤッと笑った事で、わざと言った言葉だと理解した。

 床に足が付くように、そっと下ろされると、さっき団長と呼ばれた人が椅子をすすめてくれた。

「あ、りがとうございます」
 
「で、ヌガー、裏とは」

「ああ、王弟が裏にいたわ」

「そうか、やはりな」

「向こうさんのお使いを殺しちまったから、陛下に危険が及ぶかもしれん、急いでフクロウを送ってくれ」

「分かった」

 驚くようなリアクションも無ければ、それをどう思って聞いていたのか、感情を全く出さずに手紙を書いて、フクロウの足に括り付けた。

「直行させるから、直ぐ着く」

 直行、って普段は寄り道でもさせてるんだろうか。

 あの怒号を放った人と同一人物とは思えないくらい、冷静で静かな所作だった。












 食事をトレーに乗せて、ワゴンを押して部屋の中へ入ると、国王陛下は大きなフクロウを部屋に招き入れている所だった。

「そなた、昼間の痴れ者ではないか」
「陛下、お助けください! この食事を運べば逃してやると言われ、運んできましたが毒が入っております!」

 足元に跪いて懇願すると、困惑気味な表情をした。

「そなた、そのニヤニヤ笑いをやめた方が良いぞ」

「え、は?」

 そう言われるが早いか、衛兵が入って来た。

「私じゃないです!
 私はやってません!」

 やばいやばいヤバいから!
 物的証拠あんのに、逃げられないじゃない!
 何度となく逃げおおせたのは、魅了魔具を拝借するついでに貰った移動魔具が使えてたからだけど、既に使用回数は限界でゴミと変わらなかった。

「こんなのゲームじゃないじゃない!!」

「そうだって最初に言ったぞ。
 勝手に魅了の魔具を持って行きおって。
 魅了が効くのは下位の魔物だけだ、馬鹿者が
 ひろいんが何か知らぬがの」

 私が魅了の魔具を拝借したのは恐ろしい姿の魔物で、こんな美形じゃなかったわ。

 もしかして、隠れ攻略キャラかしら。

「ヒロインは窮地に助けられるものよ!」

「その助けがあるのか?」

「もちろん! ア、ナ、タ!」

「さて、移動魔具も回収したし、あとは魅了魔具だな。
 出せ」

 周りはポカンとして、私は魔物が助けに来たと信じていたけど、スルーされて魔具を回収する美形の魔物に、落としたと言うとそのまま拘束されて衛兵に引き渡されてしまった。

「あ、え? えー?!」

 ゲームオーバーだった。
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