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622.このあとたぶんつられて寝る小話(#文披31題 day7:こもれび)

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 スケートボードを夢中で走らせていた晴海は、大技を決めた瞬間に違和感に気がついた。 
 声がしない。視線を感じない。拍手もない。晴海が「褒めろ」と言う前に、間髪入れず褒めてくれるのが湊だというのに。 
「みーなーと」 
 晴海は片足をボードに乗せ、反対の足で地面を蹴る。湊は公園のベンチに掛け、晴海を見守っていたはずだった。 
(……うあ) 
 近付いてみて理解する。なるほど反応がないわけだ。湊は小作りな頭を斜めに傾がせ、うとうとと舟を漕いでいた。 
「気持ちよさそー……」 
 木立の合間から黄金の木漏れ日が降り注ぎ、色素の薄い湊の髪を蜂蜜色に変えている。梅雨の合間の穏やかな晴れの日だった。本格的な夏の暑さにはまだ遠く、そよぐ風も頬に心地よい。眠気を誘われるのも頷ける。 
(なんか、フクザツかもしんね) 
 目を開けて自分を見てほしいような、このまま蕩けるようなうたた寝を守りたいような。晴海は自身の望みを測りかね、とりあえず静かに湊の隣に腰を降ろした。目だけはずっと湊を追っているので、妙にぎくしゃくした動きになってしまった。 
「んん……」 
 湊の身体が揺れ、晴海の肩に寄りかかって止まる。 
(アッ無理) 
 もう動けない。動けるわけがない。こんな絵画みたいな絵面を前にしてしまっては。今できることといえばスマートフォンでこの瞬間をひたすら記録することと、安眠を妨げる輩を速やかに排除することくらいしか思いつかなかった。 



(了)230708
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