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619.迷わせる階段の小話(エッシャーの誕生日)

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「みーなーと、何見てんの? ……アートポスター?」
「そう。大きい本屋さんは意外なものが置いてあるから楽しいね」
「階段が……上ってると思ったらいつの間にか下ってんの、ずっと見てっとぐるぐるしてくんなー」
「エッシャーの『上昇と下降』だねえ。階段の形そのものはペンローズの階段っていう、三次元では実現できない不可能図形」
「確かにこれは作れねーな」
「こんな家に迷い込んじゃったらすごーく困るだろうな。会いたいときに晴海に会えない」
「そんなん命の危機だし。想像すんのもヤダ」
「げんなりした顔もカッコいいね」
「だろ。なー、なんか食おうぜ。怖いこと考えたらスゲーエネルギー消費した」
「いいよ。充電しに行こ」
 晴海と湊は歩調を合わせ、普通の階段を下りてゆく。



(了)230617
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