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596.喜車と哀車の小話(忍者の日)

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「みーなーと。ドーナツ買ってきたから分けっこしよーぜ」 
「やったあ」 
「あったかーいカフェオレもある。缶だけど」 
「すごい! さすが晴海、一気に幸せになっちゃったな」 
「だろ。その笑顔のために頑張った」 
「ふふふ……晴海ったら、カッコいいけど油断してるね?」 
「油断? つか湊には基本ゆるっゆるだけど」 
「僕が忍者だったら喜車の術に掛けられてるのかもしれないよ」 
「相手を褒めて隙を作る忍法だ」 
「それ」 
「あっ……したら、さっきの褒めって隙を作るための罠……?」 
「晴海のそれは哀車の術だね」 
 哀れを催す言動で隙を作る忍法である。晴海の動揺ぶりは背景に落雷が見えそうなほどだった。湊はその俯いた頭を軽く撫で、術なんか使ってないよ、と教えてやる。 



(了)230222
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