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534.季節外れの向日葵の小話

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「みーなーと。これやる」
「わっ、ひまわりだ。リボンもついてる……どうしたの?」
「配ってた」
「配ってたんだ。あっ、ほんとだ、CMがついてる。キャンペーンなんだね」
「寒ィのに元気でいーなと思って。湊に見せたくなった」
「ふふふ、ありがとう。この季節にも咲くなんてすごいねえ」
「改良した品種を温室で育てるらしーぜ」
 晴海の指が山吹色の花をつついて揺らす。湊は目にも鮮やかな一輪のひまわりとともに電車に乗り込む晴海を想像する。間違いなく可愛いその様子は、コートよりマフラーより湊を暖かくしてくれる。



(了)221128
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