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389.落ち着いた火の小話(お題:線香花火)#文披31題

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「晴海は線香花火も上手だねえ」
「ふふん。ギリッギリのギリまで落とさねえから」
「この朱色っぽいとろとろを見ると夏って感じがするなあ」
「和火ってやつか」
「和火?」
「花火は江戸時代くらいまでの、日本国内にある材料だけで作った花火。カラーバリエーションはあんまなくて、ちょっと色自体も暗め」
「ふんふん」
「対して洋火は、明治時代より後で、輸入された薬剤なんかを使った花火のこと。カラフルで明るい、まァ今もよく見る花火っつーか」
「なるほどね。この落ち着いた朱色、僕はけっこう好みかも」
「湊がスキならオレもスキ」
 晴海が手にした線香花火がゆっくりと輝きを減じてゆく。今日の花火はこれで最後だ。またやろうね、と約束をする。



(了)220705
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