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266.際限なくほしい小話(雑誌の日)

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「こないだバスケ部の練習試合があって、助っ人に呼ばれたときあったじゃん」
「うん」
「月刊バスケットボール? もしかして晴海……」
「ふふん。取材申し込まれた。……とかいって、チームまとめてだけど」
「雑誌に載るってこと?」
「や、オレは辞退。ほんとの選手じゃねーから。同じガッコのやつが取材とか受けてたのがなんかすごかったっつー話」
「そっか。もったいないような、ほっとしたような……」
「湊はオレが目立ってたらよろこぶ?」
「晴海の可愛さとカッコよさを世界に自慢したい気持ちと独り占めしたい気持ちがあるけど、実際に晴海が雑誌に載ったりしたらせめぎあいながら何冊も買っちゃうと思う」
「生身のオレがここにいるのに」
「生身の晴海も写真の晴海もほしいんだよ。人間の欲って際限がないよねえ」
「湊からオレへの欲は際限なしでいい」
 オレも際限とかねえし、晴海は満足げに笑っている。



(了)220304
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