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242.墨色の小話(艶の日)

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「墨、磨ってんの?」
「磨ってるよ。夢中で」
「自分で言う」
「楽しいからね」
「磨るとやっぱ液体のとちげーの?」
「そうだね、量もだけど濃淡とかも好きに調整できるし……艶も出るんだよ」
「ふうん」
「液体の墨もね、それはそれで力強くていいんだけど」
「メリットとデメリットがあるわけだ」
「うん。ちなみに墨を磨る大きなメリットのひとつはねえ」
「なに?」
「晴海の目を思い出すこと」
「俺?」
 晴海はつやつやとした瞳を瞬かせる。き晴海の双眸をいとおしく思い出しながら墨を磨ることは、湊をひときわ幸せにする。



(了)220208
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