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147.秋の灯りの小話(day5「秋灯」) #ノベルバー

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「よう」
 校門を出、バス停に向かって歩こうとした湊は目を丸くした。学校の違う幼なじみが校門の脇の壁に寄りかかり、湊を出迎えたからだ。
「来てたの、晴海」
「お迎えデス」
 驚いたのはいるはずのない相手だからというよりも、暗がりから突然声を掛けられたせいだ。晴海は湊の帰りが遅いと、ときどきこうして学校までやってくる。部室まで入ってきたことも一度ではない。校内に入らず待っていたということは、晴海も今来たところなのかもしれない。
「嬉しいけど、どうしたの?」
「きょーは暗いから」
 連れだって歩き出しながら、晴海は空に視線を向ける。曇り空でもないのにそこには月が見えなかった。
「新月かあ」
「月がでっけーのと出てないのとじゃ、夜の明るさ全然ちげーじゃん」
 晴海はスマートフォンで月齢が一覧になっているページを見せてくる。十一月五日の月齢は〇・二、新月と記されていた。
「ふふふ。僕はラッキーだなあ」
「なんで?」
 首を傾げる晴海の顔が液晶の光で浮かび上がる。
「どんなに暗い夜だって、こうやって晴海が迎えに来てくれるもんね」
 夜空に月が浮かんでいなくても、煌々と明かりが灯っているかのような安心感だった。



(了)211105
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