【共依存DK】幼なじみのハルミナト

23.隙あらば手が繋ぎたい小話（創作BLワンライ・ワンドロ様お題「ささくれ」）

「あ、ささくれ」
　湊は幼なじみの手を両手で掴まえ、人差し指の先をまじまじと眺めた。ささくれは乾燥や栄養不足でできるものと聞いたような覚えがあるが、もしや不摂生をしているのだろうか。
「痛い？」
「別に」
　本当に気にしていないようだったので、湊は晴海の指に自分の指を絡めて持ち上げた。大きな手だ。晴海は昔から手も足も湊より大きかった。確かに少し乾燥しているかもしれない。
「そんなおもしれー？　ささくれ」
「ささくれっていうか、晴海はいつも面白いよ」
　白く剥けた皮を親指でつつく。そのまま爪も撫でてやる。きちんと切り揃えられた、丸くて可愛い爪だ。
「つまり、僕はどんなときも晴海と手を繋ぐチャンスを見逃さないってこと」
「あっ。天才のやつだ」
　幼いころはどこへゆくにも手を繋いでいたけれど、高校生にもなるとなかなか無邪気に手を繋いではいられない。晴海は今でも湊の背中におんぶお化けのようにひっついてくることがあるが、戯れのように背に覆い被さるより、「手を繋ぐ」ことはいっそう訝しい目を向けられる行為である気がする。理由が欲しくなる。それが詭弁であっても構わない。
「ご飯はちゃんと食べてるもんね。乾燥してるのかな？　ハンドクリーム塗ってあげようか」
「天才その二だ！」
「ふふふ。隙あらば狙っていくよ」
「オレもラッキーチャンス探そ」
　晴海は湊に手を預けたまま瞳を輝かせている。ラッキーチャンス、大いに望むところである。



（了）210704