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15.大事なものにはお名前を書いておく幼なじみ小話

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「湊、また代筆やってんの」
「そー。母さんの御祝儀袋。書道部の宿命だよね」
「湊の字ィ見てんの好き」
「僕が部活にいくの嫌がるのに」
「オレがいねーとこでやるのがイヤ! なの!」
「知ってる。晴海、こっちおいで」
「なに」
「えい」
「あ! 腕! あー!」
「箱崎湊……と」
「くすぐった……っつーか墨!」
「よし。きれいに書けた」
「あー……どーすんだよこれ」
「洗ったらすぐ落ちるよ。僕のお名前入りハルミクン、今だけ」
「だから困んだろ! 残んねーじゃん……でも残してたらキャー素敵な字、ハコザキミナトくんてだあれ紹介して、ってスゲー頼まれんだろそんでオレはキレる……」
「んー。じゃあ、晴海も僕に名前書いとく?」
 そういうことになった。半袖の腕に書き込まれた「ツキシマハルミ」、歪だけれど味がある。



(了)210626
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