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【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない
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「本命いるんでしょ」
組伏せた男がくっくと笑う。
「有名だよ。なのにこの辺のネコ、取っ替え引っ替えしてるって」
「知ってて付いてきた訳?」
「んんっ、アッ……ア」
しなる首に喉仏が浮いている。前歯を立てるとむずがるように首を振った。
「ボクは、きもちければ、いーもん……」
そんな分かりやすいことは、あいつなら言わない。ぼんやりとした表情でこちらを見詰めてくる男が嫉妬に狂う様を見てみたい。そんな欲が根底にあるから勃起する。どこの誰とも知らない手合いにも。
(もうすぐ十時だ)
その時間に帰宅していないと電話が掛かってくる。晩御飯はどうするの、と尋ねるだけの、ほとんど意味のない習慣だ。その日も枕元のスマートフォンが振動したので、三コール待って出た。
「アッあぁぅっ」
喘ぎ声は多分拾われている。
「晩御飯、どうするの」
それでも第一声は日頃と全く同じだった。
「要らない」
腹の底がぐらぐらと煮え立つようだった。動揺しろ。縋ってこい。その掴み所のない声はなんだ。いつも通りなら「そう」と通話は終わるはずだった。しかしその日は違った。
「しょうが焼き、美味しい作り方、調べたんだよ」
「……は」
「一回も食べてくれなかったね」
通話が切れた。耳の奥がしんと空白になる。
「……はあ?」
震えた指からスマートフォンが滑り落ち、何萎えてんの、と体の下の他人が言った。
(了)180917
組伏せた男がくっくと笑う。
「有名だよ。なのにこの辺のネコ、取っ替え引っ替えしてるって」
「知ってて付いてきた訳?」
「んんっ、アッ……ア」
しなる首に喉仏が浮いている。前歯を立てるとむずがるように首を振った。
「ボクは、きもちければ、いーもん……」
そんな分かりやすいことは、あいつなら言わない。ぼんやりとした表情でこちらを見詰めてくる男が嫉妬に狂う様を見てみたい。そんな欲が根底にあるから勃起する。どこの誰とも知らない手合いにも。
(もうすぐ十時だ)
その時間に帰宅していないと電話が掛かってくる。晩御飯はどうするの、と尋ねるだけの、ほとんど意味のない習慣だ。その日も枕元のスマートフォンが振動したので、三コール待って出た。
「アッあぁぅっ」
喘ぎ声は多分拾われている。
「晩御飯、どうするの」
それでも第一声は日頃と全く同じだった。
「要らない」
腹の底がぐらぐらと煮え立つようだった。動揺しろ。縋ってこい。その掴み所のない声はなんだ。いつも通りなら「そう」と通話は終わるはずだった。しかしその日は違った。
「しょうが焼き、美味しい作り方、調べたんだよ」
「……は」
「一回も食べてくれなかったね」
通話が切れた。耳の奥がしんと空白になる。
「……はあ?」
震えた指からスマートフォンが滑り落ち、何萎えてんの、と体の下の他人が言った。
(了)180917
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