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28 奥の手ぶつけんぞ!

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「≪プリンセス・ボックス≫!!」

 戦闘開始と同時に箱を出す。
 俺達の常とう手段だ。
 箱は狙い通り、弟のズクの方を閉じ込めた。

 モズが大剣、ズクが片手剣装備。
 ズクを狙ったのは、そっちの方が動きが早そうだからだ。

「ふん。オレを閉じ込めたところで、関係ないぜ。なぁ兄者!」

「その通りだ弟者!」

 ≪空間爆縮≫の詠唱時間は約十秒。
 決まれば一撃で倒せるだろうけど、詠唱が完了するまでに一でもダメージを受ければ中断されてしまう。

 それを狙ってだろう。詠唱を始めたレンに向かってモズがまっすぐ突っ込んでくる。
 あんな武器で殴られたら、詠唱中断どころか一撃でダウンだ。

 かといって俺も正面に立つことは出来ない。
 耐久力に関してはレンと同じくらいだから、一撃で死んでしまう。

 つまり、攻撃は最大の防御!
 ピースサインを目の横に持っていく。

「≪チャーミングショット≫!」

 ピンク色の光弾が目から放たれた。
 よく見るとハート型であることが分かるそれは、光の筋を残してモズへと向かっていく。
 今イベント初めての使用だ。

「≪パリィ≫!」

「あっ」

「きかねぇな!」

 当たる寸前、素早く振られた剣に弾かれてしまった。
 今の今まで伏せていたのに、あっさりと対応してくるとか。
 流石は有名プレイヤー。反射神経が素晴らしすぎる。

 しかも、相手は足を止めていない。
 振った大剣を走りながら担ぎ直して、もうレンの目の前だ。

 詠唱は途中で止めることは出来ない。
 つまり、詠唱途中のレンは逃げることも、他のスキルを使用することも出来ない。
 と、思う訳だ。

「≪キャストキャンセル≫」

「ちっ」

 レンがスキルを使用して、詠唱が中断される。
 魔法の扱いに長けたエルフの持つ種族スキルの効果だ。

 更に、俺達との狩りにおいて近距離で魔法を使い続けたレンは、新しい称号とスキルを獲得していた。
 それは、近距離でこそ威力を発揮する、魔弾の嵐。

 杖が剣を振りかぶろうとしているモズへと向けられた。

「≪ショットガンブラスト≫!」

 短い詠唱のすぐ後に、スキル名が響く。
 杖の先端からいくつもの細かい破壊球が拡散するように放たれた。
 その様子はまさにショットガン。
 射程は短い上に一発一発の威力は低いが、まとめてぶち当てることによってかなりの破壊力を有する。

 これで片付くかと一瞬思ったが、やはり相手は手ごわかった。

「っとと、あっぶねぇ。何か企んでるとは思ったが、ここでキャストキャンセルはびっくりだぜ。そんなスキル知らねぇし、本サービスで追加されたか?」

 ダメージは入っているが、一割程だ。
 レンの攻撃に感づいたモズは、咄嗟に後ろに飛んで大剣を盾にしたらしい。
 くるりと担ぎ上げた大剣の刃の部分に着弾した跡がある。
 
「はっはぁ、ここまで隠してたのはびっくりしたぜ。確かに直撃すりゃあやばかった。けど、それは近距離用の――って、聞いてんのか!?」

 レンが再び詠唱を始めたのを見たモズからツッコミが入った。
 対象はズクの方。
 長々と話を聞く義理なんてないしな。
 それに、もう終わった。いい判断だ。

「≪プリンセス・ボックス≫!」

「……は? はぁ!?」

 こっちに向かって駆け出そうとしていたモズが箱に囚われた。
 どういうことかとモズが振り返るが、ズクの方も箱の中。
 
 これが真の奥の手だ。
 狩りをしている時に、≪収納上手≫の称号を手に入れた。
 習得したスキルは≪ワンモアボックス≫。
 効果は≪プリンセス・ボックス≫を同時に二つまで発生させることが出来るというもの。
 ペア戦である以上、二人ともを箱にしまってしまえば勝ちはほぼ確定する。

 今までは一つしか出せなかったから気にならなかった、≪プリンセス・ボックス≫自体のクールタイム
だけがネックだった。
 だからさっきの攻防は、その時間を稼ぐのが目的だったわけだ。

 勿論、レンの奇襲で仕留められたら良かったんだけどな。
 流石は有名プレイヤーといったところか。

「やべー、これはやべーって兄者!」

「やべーな弟者! こうなったら箱を破壊するしかない!」

「分かったよ兄者! ≪バッシュ≫≪バッシュ≫≪バッシュ≫バッ――」

「≪空間爆縮インプロージョン≫!」

「弟者あぁぁぁぁあぁああぁぁあ!!」

「さぁ、次は貴方ですよ。――」

 ズクが倒れ、レンはかっこよく煽ってから詠唱を開始する。
 これが決まれば俺達の勝ちだ。

 モズは焦ったように、しかしまだ力のこもった顔で大剣を振り上げた。

「まだだ、全力で壁を壊せばまだ!」

「≪プリンセス・ボックス≫!」

「あ……」

 すでに設置してあった箱のすぐ外側に、新たな箱を発生させた。
 二重構造だ。
 これなら詠唱が終わるまでに破るなんて不可能だろう。
 鍛え上げた俺の≪魅力≫が、箱をかなり頑丈にしているからな!

「ちっくしょー! カオルちゃん可愛いー!」

「≪空間爆縮≫!」

 こうして、モズも圧殺された。
 俺達の勝ちだ!





名前:カオル
種族:妖狐
クラス:プリンセス
レベル:28

ステータス
筋力:1 体力:1 魔力:1 敏捷:1 器用:1 幸運:1 魅力:361(+594)

種族スキル
≪魅惑≫ ≪美しい毛並≫

クラススキル
≪魅力上昇≫ ≪魅了≫ ≪治癒の願い≫ ≪プリンセス・ボックス≫
≪フェイクモーション≫ ≪障壁強化≫ ≪チャーミングショット≫
≪プリンセスフォースⅢ≫ ≪ワンモアボックス≫
≪チャーミングミスト≫

称号
≪箱入り娘≫ ≪詐欺師≫ ≪守り手≫ ≪お転婆≫ 
≪真のプリンセスへ挑む者3≫ ≪収納上手≫
≪可愛さを振りまく者≫
 
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